お茶のパッケージを作るときのデザイナーの頭の中
こんにちは。デザイナーの市角です。
普段はデザインや映像を作りながら、
大学で准教授としてデザイン思考について教えてみたり、デザインの考え方とやり方を学生さんや企業、自治体さんに伝えたり一緒になって考えています。
今回はお茶のパッケージを作るときに考えたことを、備忘録的に書いていきます。
題材はこれ。
静岡の川根緑茶、白瀧製茶さんの商品です。
まず考えたのは、このお茶はどんな人に飲んでほしい?
まずはこれを考えました。
ありきたりですけどね。
今回クライアントさんと一緒に取り組んだ課題は、お茶の消費年齢がどんどん上がっていき、若い人がお茶を飲まなくなって来ているということでした。
静岡でさえ、そうなんですね。
お得意さんはどんなパッケージでもあまり見ないで買ってくれるそうでして、新しい顧客になってほしい30代、40代に共感してもらえるデザインを考えて欲しいということからスタートしました。
そこで、今回はモダンな文化のフィルターを通した伝統的なお茶のデザインが求められているなと考えました。
顧客になる層は普段はカフェを開拓して洒落た空間に触れ、百貨店に行けばおしゃれなパッケージの商品を手にとって見ている。そんな人達に悪い意味での違和感を感じさせないのが大切。
かといってまんまコーヒーや化粧品のパッケージにみえるモダン100%に全振りした商品ではなく、最高級品ラインのため、トラッドな魅力を今回は強調。
大正時代に国外に輸出されていた蘭字というスタイルを意識しています。
蘭字で老舗感があるけどモダンなフィルターをかけて洗練された感じにしたいと思いました。
モダン100%に全振りしたラインナップが求められる市場もありますが、それはまた次の機会に行えばいいと思っています。
お店のどんなところに置かれるの?
次はこれですよね。置かれているシーンを考えること。
店舗はもちろん、老舗のお土産やさんや道の駅に並んで違和感がなく
それでいてほんのちょっとだけ目立ちたい。笑
なんならカフェのカウンターにコーヒーに並んでおいてもらっても大丈夫なくらいのバランスが良いだろうと考えました。
家のどんなところに置かれて使われるの?
そしてこういった商品パッケージを考えるときに一番大切なのが
実はこれ。
店頭では目立つことが求められますが、30代40代は断捨離世代でミニマリスト世代。家では目立つパッケージは忌み嫌われます。
最近では店頭で買ったパッケージを簡単にはがせるようになっていたり、
サントリー天然水のようにそもそもラベルがない商品もでてきましたが
そういうニーズに応えるものです。
これは家に置きたいというよりも、手に持って歩く事が多くペットボトル飲料がファッションアイテムの領域に入っていることを意識したデザインですよね。
今回のパッケージも無印良品とかIKEAの家具が置かれたキッチンの棚に
そのまま置かれていて景観を邪魔しないところを目指してみました。
人に買って贈りたくなるものはどんなデザイン?
最後にこれ。
お茶って自分で買うのももちろんですが、贈答品としての需要がとても多い!なので実は貰う人がうれしい!も大事ですけど、
もっと大事なのは買う側が「イイもの買ってあげたゾ!」って満足するデザインは必須でして、ちょっとした特別感を贈答品デザインに求めます。
今回はバジェットや納期の関係で通常の素材で、軽量なパッケージを使うことが決まっていましたから、桐箱とか缶は使えない。
それでいて特別感を、ということで老舗で昔からあるような雰囲気をどこか匂わせつつ、余白や色の数、銀箔の置き方などで関西の人が言うところの
「シュッとしてる」感を演出することにしました。
非デザイナーとデザイナーが仲良くなるために
そんな感じで、今回は基本的な考え方にとどめましたが、こういうふうにデザイナーは頭の中で考えてアウトプットしていきます。
実際はこの何倍もあり、書体の選び方や色、光の反射とか、イラストのデフォルメ具合とか位置関係とかとか言葉にするとキリがありません。
非デザイナーさんが、デザイナーに対して誤解している事が多いけど、
何となく自分の好みでいい感じにパッパッパってしちゃってるわけではないので、その辺をご理解いただけると、デザイナーと仕事をするときにもっと楽しくなると思いますよ!
こんな感じで毎週木曜日にデザイナーの頭の中シリーズ、書いていきます。
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