小旅行ー20201024

名古屋で恒例の金沢カレー(揚げなすトッピング)を夕食とし、会社の先輩と別れて滋賀県は守山へ向かう。19時ちょうど発の東海道線新快速米原行きは定刻の5分遅れで名古屋駅を出発した。あたりはもう暗く、岐阜駅を越えたあたりからは乗っている人もまばら。にも関わらず、ボックス席の窓側には名古屋駅から共に乗り込んだ見知らぬ人。通路側の自分も席を移動するのが億劫であり、周りからはガラガラの車内に並んで座る二人組に見えただろうか。

いつの間にやら、電車は激しい雨の中を走っていた。屋根のない駅のホームを学生たちが駆けていく。ぽつぽつと光が点在する闇の中を見知らぬ電車でかけていくと、このまま自分はどこへ行くのか全くわからなくなる錯覚に陥る。人がいないわけではないのに孤独という感じがする。現地にホテルを予約しているという事実が唯一の拠り所であり、そうでなければ全く途方に暮れてしまいそうだ。

終点の米原に着いたら、次は琵琶湖線に乗って守山へ。ホームに屋根があることを切に願っていたが、いつの間にかあの激しい雨は抜けていた。

琵琶湖線はホームの反対側で口を開け、遅延した東海道線の乗客を待っていた。駅員は乗り換えを促している。乗り込んでボックス席に腰を下ろすと、電車は予想した方向とは逆に動き出した。かつて激しく乗り物酔いする幼少期を過ごした自分には進行方向に背を向けて座る行為が信じられなかったが、意図せずやってみるとなるほどこれは旅気分が出てとてもよい。こっちに向かって加速してくる物体よりも段々遠ざかっていく景色の方が眺める余裕がある気がする。依然として真っ暗闇ではあるが。

ようやく周りを観察する余裕が出てくると、車内の窓に深見東州と、片岡鶴太郎の広告があった。知っている顔を見てほっとする自分に笑ってしまう。どうやらここはまだわたしが知っている所と地続きの場所のようだ。

無事に守山駅に着き、ホテルのチェックインを済ませて部屋のベッドに寝転がると、ようやくここにいる権利を得たかのように安堵する。旅は好きだと思っていたが、性格的には向いていないのかもしれない。

余談であるが、この日の朝は名古屋駅ホームのきしめん屋さんが早朝すぎて開いておらず、昼に行った金沢カレー屋さんはなぜだか開いておらず(夜には開いていて無事にありつけたが)、夜にはつい1時間前まで滞在していた名古屋港で花火大会があったらしい。片っ端から空振りな旅だった。明日の友人の結婚式では大人しくしていようと思う。