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現代美術家トム・サックスのNFTプロジェクトが面白い

トム・サックスは1966年生まれのアメリカ人で、ニューヨークで活動する現代美術家だ。

彼はDIY的な彫刻で作品をつくり、木材を使って荒削りに創った「NASAの月着陸船」が代表作として知られている。

彼はNFTアートにも参加しており、このプロジェクトがやたら遊び心に溢れていて、面白い。

プロジェクト名は「ロケット・ファクトリー」で、NFTコレクターは、NFTだけでなく、実物のロケット彫刻も手に入れることができる。

「ロケット・ファクトリー」の全貌

簡単にプロジェクトの流れを説明すると、まずコレクターは、ロケットの「先端」、「胴体」、「尾部」の3つのNFTを、上記サイトのマーケットプレイスで、仮想通貨を使って買い求める。

3つのパーツが揃ったら、サイト内にてロケットを組み立てることができ、1つのロケットが完成する。

この時、3つの部品のNFTは焼却される。

NFTはブロックチェーンの構造上、物理的に削除ができないので、削除の代わりに、だれもアクセスできないようにする処置があり、その処置は「burn(燃やす、焼却する)」といわれている。

3つの部品が焼却される代わりに、完成したロケットのNFTを手に入れることができる。

1000体限定で実物のロケットを作成し、実際に打ち上げが行われ、オーナーは、ロケットの打ち上げイベントに参加することも可能だ。

打ち上げられたロケットは、着地などでダメージがあった場合にできる限り修復され、飾りケースに入れた状態で、オーナーの家に送られる。

ロケットの打ち上げ風景を撮影した動画もロケットのNFTに紐づけられるようだ。

つまり、ロケットを完成させると、オーナーは以下の4つを得ることができる。

①完成したロケットのNFT
②実物のロケット(ケース入り)
③ロケット打ち上げイベントへの参加(参加は必須ではない)
④打ち上げの動画(①に紐づく)

パーツを選べることによる「カスタマイズ性」や、打ち上げイベントへの「参加」など、「コレクター参加型」という点がユニーク。

さらに実物のロケットが手に入り、完成したロケットのNFTは転売も可能など、リアルとNFTをつなぐ、非常に面白いプロジェクトだ。

興味深いプロジェクトだったので、アーティストのトム・サックスという人物に興味がわいた。

調べてみると、彼がいかにアーティストとして成功したか、そのレシピを15分という短い動画で語っていた。

トム・サックスのTEDトークで、成功の秘訣を探る

彼はTEDトークでプレゼンをしており、題名は「How to succeed as artist in spite of your own creativity」だ。

題名を翻訳すると「個人のクリエイティビティーに頼らずに、アーティストとして成功する方法」となるだろうか。

彼は芸術家として食べていけるまで20年かかったと言い、芸術家は勇気づけられるのではないだろうか。

芸術家として食べていけなかった20年間を支えたものが「成功する感じ」で、常に胸の中で感じていたからだという。

旅のはじまり

子供時代、トムは勉強も運動の苦手で、女の子にはまったくモテず、とても成功とはほど遠いところにいたようだ。

10歳のときに、彼は父親のために高額で買うことができなかったカメラを、粘土で作ってプレゼントすることにしたという。

そこで、文化人類学の言葉、類感呪術(sympathetic magic)という概念が紹介される。

類似したもの同士は互いに影響しあうというもので、例えば「てるてる坊主」がいい例だ。

太陽を模した「てるてる坊主」を飾ることで、太陽を呼び出そうとしている。

カメラを粘土で作るという行為は、この類感呪術の方法で「世界を自分が求める方法や形で創り出す」という旅の始まりだったという。

3つの価値観

彼が大切にしている価値観が以下の3つだ。

① 本質的であること(authenticity)
② 直感を信じること(Intuition)
③ 透明性を保つこと(transparency)

それぞれに内容はぜひとも動画を見て確認していただきたい。

自分の紋章を作り、世界を作り上げろ!

動画の中で何よりも印象的だったのが、彼が創った「Sacks Family Crest」だ。

家の紋章という意味で、彼が大切にしている価値観や、影響を受けた人々、企業、国などが描かれている。

アーティストはこういった紋章を作り、自分の世界を創りだそうとメッセージを送る。

価値観や影響を受けたものを1枚にまとめるのはいいアイディアだし、なによりも楽しそうだ。

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