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コンピュータ好きにオススメする『Mr. Robot』。
正月から見始めた「Mr. Robot」を全シーズン観終えた。
リアルなクラッキングの様子を描いた映像で注目を集め、ゴールデン・グローブ賞(作品賞)を受賞した作品だ。
魅力的な配役や、演出の仕方が秀逸で、本作の魅力をまとめてみた。
簡単なあらすじ
主人公のエリオットはニューヨークに住む若者で、サイバーセキュリティ会社でセキュリティ・エンジニアとして働いていた。
彼は社会不安障害を患っており、頭の中で想像上の友達に話しかけるなど、同僚で幼馴染のアンジェラ以外とはうまく人との関わりが持てない。
その反面、非常に高度なクラッキング技術を持つエリオットは、夜は身近な人間の情報をのぞき見たり、ネット上で発見した犯罪を通報するなどして過ごしていた。
ある日の深夜、最大のクライアントであるEコープのサーバーが激しい攻撃を受け、エリオットは会社に呼び出される。
ギリギリのところで被害を食い止めることに成功するも、感染したサーバーから「fsociety」という謎の言葉を発見する。
その後、地下鉄に乗っている時に突然攻撃の犯人らしき謎の男「Mr.Robot」から接触を受けたエリオットは、腕を買われて「fsociety」へ入るようスカウトされる。
彼らの目的は、Eコープの保有する金融データを破壊することによって「ありとあらゆる借金を帳消しにし、富の再分配を引き起こすこと」だった。
強烈な配役
主人公エリオットを演じるのは、 ラミ・マレックで、映画『ボヘミアン・ラプソディ』で主人公フレディを演じ、アカデミー賞主演男優賞を受賞し、新作の007では敵役を演じている。
大きな目を見開いてまばたきをせず、無表情でじっと画面の向こうからこちらを見るエリオットの表情はアイコニックでもあり、狂気すら感じる。
「俺はやばいのか?」と常に自問自答する社会不安障害のキャラクターを演じきり、狂った社会で正しいことをなそうともがく姿に引き込まれる。
脇を固める配役を一癖も二癖もある人物たちだ。
タイレルという、スウェーデン人のEコープの技術担当上級副社長は、ストレス解消にお金を払ってホームレスを痛めつけたり、社内の情報を手に入れるために会長の秘書と一夜を共にすることによって会長のメールをクラッキングしたりと、目的達成のためなら不正や犯罪にも手を染める一面も持ち合わせている。
彼の妻もヨハンナも曲者で、主人に縛られて喜ぶマゾかと思いきや、権力を得るために主人のケツを叩いていたり、愛人との2重生活を送っていたりする。
エリオットと刑務所で一緒に服役していたレオンは、ふだんは陽気で、ドラマや映画の感想ばかり話していが、実はナイフの名人で銃の扱いにも慣れた危険人物だ。
演出の巧みさ
孤独なエリオットは、終始モノローグで頭の中で想像上の友達に話しかけている。
その心の声は視聴者に直接語りかけているような錯覚をうけ、不思議だが心地よさすら感じる。
人の心の中をのぞいているような気分だ。
カウンセラーと話すエリオットが「世の中がどれほどクソか」をブチまけているのかと思いきや、想像上の友達に話していただけだと気づかされる演出の妙もある。
格差が拡大する現代、多くの人がエリオットみたいなことを社会に対して感じていたりもするのではないだろうか。
孤独や不安、権力に対しての絶望感や怒りなど。
おわりに
ぼく自身がネットワークセキュリティに詳しいわけではないので、本作がどこまで真実に迫っているかは分からないが、本国ではリアルなクラッキングの様子を描かれていることが評価されているようだ。
腕のいいクラッカーの手にかかれば、自分のパソコンやケータイがすぐにクラッキングされてしまうだろうなと恐ろしい気持ちになった。
少し意外だったのが、作品中に「クラッカー」ではなく「ハッカー」という言葉が使用されていることだ。
「ハッカー」という言葉は「ネットワーク犯罪者」という意味ではなく、ネットワークやコンピュータに精通している人のことを指すと理解し、「ネットワーク犯罪者」で技術を悪用する人を「クラッカー」と呼ぶと思っていたが、アメリカでも大衆向けには「ハッカー」という言葉のほうが、「ネットワーク犯罪者」には一般的のようだ。
いずれにせよ「クソみたいな世界」を反映し、その社会を変えようとする主人公から目が離せない。
もう一回は見返す作品だ。
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