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ガトーショコラの思い出
私は幼い頃からずっと極度の偏食で、食べられる野菜はレタスとキャベツときゅうりだけ。
ほぼ、魚とごはんだけを食べて生きていました。
夫である信博さんに出会ったのは18歳の時。私の食べ物の好き嫌いが多すぎて覚えるのが面倒だったらしく、「好きなものだけ食べれば良いよ、残したら僕が食べるから」と言ってくれたのが私には本当に救いで、むしろこの言葉で「残してはいけない」というプレッシャーから解放されたのです。
ビストロでの出来事
信博さんは、私をいろいろなお店に連れて行ってくれました。
大学生だからそんなにお金はないけど、私が今まで経験したことがなかったお店に行って、口にしたことがない料理を食べる機会を作ってくれました。
ある夏の暑い日、大学の近くのビストロに連れて行ってくれました。私の誕生日のお祝いに。
コースの最初にアミューズがいくつか出てきて、そのあと運ばれて来たのがカボチャのスープでした。
和食で出てくる甘く煮たカボチャのイメージしかなかった私。でも冷たく冷やされたお皿に注がれた色鮮やかなカボチャのスープを目の前に置かれて、スープスプーンですくって口に入れると、衝撃的なおいしさ。
汗がすーっと引くような涼やかな舌触り、絶妙な塩加減によって引き立つカボチャの甘味。
食べ終えてしまうのがもったいないと思うほどに、私は夢中になりました。
私はカボチャが嫌いだったわけではなく、調理法が合わなかっただけなのだと、この時にわかりました。
そのあとは、瞬く間に好き嫌いは克服。特に自分で調理するようになってからは食べられないものはほぼなくなっていました。
素敵なギャルソン
このビストロのギャルソンは洒落た人でした。まだ大学生の私達が緊張しないようにと配慮してくださっていたのかもしれません。
時々冗談を交えてお料理を説明してくださるのがとても楽しく、特にお料理が終わったあと、デザートを説明してくださる時間が大好きでした。
当時、パンナコッタやティラミスが大流行していた時期でしたが、パンナコッタにラズベリーソースを添えたものを「お豆腐に梅干し、みないなものです笑」と冗談を言ったりして、一瞬キョトンとする私を見て楽しんでくださっていました。
私はこのお店のガトーショコラが大好きで、何度行っても他のデザートを選べなかった記憶があります。
甘すぎず、粉っぽくなくて、生クリームと一緒に食べた時にバランスが完璧になるように計算されていました。
私にとってこのガトーショコラは永遠の味。
このお店はもう閉店してしまったので、二度と味わえない思い出となってしまいました。
私のガトーショコラ
思い入れが強すぎて作る気にもなれなかったのですが、最近ようやく自分で作る気になり、焼くようになりました。
あの味を再現出来ているかと言われれば別物なのですが、カカオの濃厚さは優るとも劣らないと思います。
焼いた次の日まで待たなくてはいけないのが辛いですが、明日を楽しみにします。
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