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最新の成立法律や法改正の情報をお届け!『法律の動向』Vol.9

『法律の動向』では、法律実務家向けの隔月刊誌「法律のひろば」や、自治体職員向けの月刊誌「地方財務」の掲載記事から、最新の成立法律や法改正に関する情報を厳選してお届けします!
※本記事は、「法律のひろば2023年10月号」の「法律速報」に掲載のものです。


脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律

令和5年6月7日公布・①~④は令和6年4月1日施行、
⑤~⑦は公布日から2年以内施行、⑧は原則令和6年4月1日施行

(令和5年法律第44号)

・再生可能エネルギー発電事業に係る事業規律の強化
・太陽光発電設備に係る追加投資部分と既設部分とを区別した新たな買取価格を適用する制度の新設
・発電用原子炉について運転開始から30年を超えて運転しようとする場合の規制の厳格化
・発電用原子炉の運転期間の延長に係る規律の変更   等

① 再生可能エネルギー発電事業の認定事業者は、認定計画に従って、再生可能エネルギー発電事業を実施しなければならないものとするとともに、その業務を委託する場合には、受託者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならないものとする。

② 経済産業大臣は、再生可能エネルギー発電事業の認定事業者が①に違反していると認めるときは、当該認定事業者に対し、交付金相当額積立金として一定額の積立てを命ずることができるものとする(※その後、交付金相当額積立金の積立てが必要がないことについて経済産業大臣から確認を受けた場合には、その全部又は一部を取り戻すことができる。)。

③ 経済産業大臣は、再生可能エネルギー発電事業の認定事業者の認定を取り消すときは、当該認定事業者に対して、それまでに当該認定発電設備を用いて発電した再生可能エネルギー電気の供給に係る供給促進交付金等の全部又は一部の納付を命ずることができるものとする。

④ 再生可能エネルギー発電設備の一定の増設等に係る再生可能エネルギー発電事業計画の変更の認定を受けようとする場合には、当該増設等に係る部分とそれ以外の部分とを区分して当該計画に記載することができるものとし、当該変更の認定を受けた計画に係る再生可能エネルギー発電設備に適用される基準価格又は調達価格については、当該増設等に係る部分以外の部分について従前の交付対象区分等又は特定調達区分等に該当するものとみなして、当該増設等に係る部分及びそれ以外の部分に係る基準価格又は調達価格を基礎として、再生可能エネルギー源を電気に変換する能力を勘案した新たな方法により算定した価格とするものとする。

⑤ 発電用原子炉設置者は、30年を超えて発電用原子炉の運転をしようとするときは、10年以内ごとに、当該発電用原子炉施設の劣化を管理するための計画(長期施設管理計画)を定め、原子力規制委員会の認可を受けなければならないものとする。

⑥ 発電用原子炉の運転期間の延長(40年を超える運転)について、従前の原子力規制委員会の認可に代えて経済産業大臣の認可を受けなければならないものとする(※当該認可においては、原子力規制委員会による運転停止命令等を受けていないこと等の基準への適合を要件とする。)。

⑦ 発電用原子炉の運転期間の上限(60年)は原則維持するものとし、その上で、法令の制定・改正等に対応するために運転を停止した期間等に相当する分の期間、当該上限を超えての運転を可能とするものとする。

⑧ その他「周辺地域に対しての事業内容の事前周知」の再生可能エネルギー発電事業の認定要件への追加、電気の安定供給の確保の観点から特に重要な送電線の整備計画の認定制度、使用済燃料再処理機構の名称の「使用済燃料再処理・廃炉推進機構」への変更、同機構の業務への廃炉推進業務の追加等を定める。

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律

令和5年6月9日公布・①~④は公布日から1年3月以内施行、
⑤は公布日から1年6月以内施行、⑥は原則公布日から1年3月以内施行

(令和5年法律第48号)

・マイナンバーの利用範囲の拡大
・公金受取口座の登録促進
・健康保険証の廃止   等

① 社会保障制度、税制及び災害対策以外の行政事務(※具体的な事務については、法別表等に定められる。)においても、マイナンバーを利用することができるものとする。

② 事務の性質が法別表に定められた事務に準ずる事務(個別の法律の規定に基づく事務を除く。)として主務省令で定められた事務(準法定事務)においても、マイナンバーを利用することができるものとする。

③ 法別表に定める行政機関等(準法定事務を処理する者を含む。)の間において、主務省令で定めるところにより、特定個人情報(マイナンバー等をその内容に含む個人情報)の提供を行うことができるものとする。

④ 行政機関の長等(事務を適切に行い得る一定の者に限る。)は、利用口座情報(公的給付の支給等に係る金銭の授受に利用する預貯金口座に関する一定の情報)を保有している場合において、当該預貯金者に対し利用口座情報の内閣総理大臣への提供について同意するか回答するよう求める旨等を記載した書面を送付し、当該預貯金者から同意を得たとき、又は当該書面が到達日後一定期間を経過するまでの間に回答がないときは、当該利用口座情報を内閣総理大臣に提供することができるものとし、内閣総理大臣は、その提供を受けた利用口座情報の預貯金者の情報を公金給付支給等口座登録簿に登録するものとする。

⑤ いわゆる健康保険証を廃止するとともに、健康保険等の被保険者等が電子資格確認を受けることができない状況にあるときは、当該状況にある被保険者等の資格に係る一定の情報を記載した書面の交付等を求めることができるものとする(※経過措置として、当分の間、保険者は、職権により、被保険者等に対し当該書面の交付等を行うことができるものとしている。)。

⑥ その他一定年齢に満たない者のマイナンバーカードの本人写真の非表示、住民票・戸籍の附票・マイナンバーカードの記載事項への「氏名の振り仮名」の追加等を定める。

空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律

令和5年6月14日公布・公布日から6月以内施行

(令和5年法律第50号)

・空家等活用促進区域の設定による用途変更や建替え等の促進
・特定空家等(周囲に著しい悪影響を及ぼす空家等)となるおそれのある空家等に対する措置
・市町村長への財産管理人の選任請求権等の付与
・特定空家等の除却の緊急時の代執行制度の創設   等

① 市町村は、空家等対策計画に、空家等活用促進区域(中心市街地等の区域内の区域であって空家等の数・分布・活用状況等からみて空家等及びその跡地の活用が必要となると認められる区域)及び空家等活用促進指針(当該区域における空家等及びその跡地の活用の促進を図るための指針)を定めることができるものとする。

② 空家等活用促進指針には、空家等活用促進区域内の空家等に該当する建築物又は空家等の跡地に新築する建築物(特例適用建築物)について建築基準法上の“接道に係る前面道路の幅員規制”・“用途地域による建築物の用途規制”の特例の適用要件(敷地特例適用要件・用途特例適用要件)を、許可権限を有する特定行政庁と協議して(※用途特例適用要件については、特定行政庁からの同意も要する。)定めることができるものとする。

③ 市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれがある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(管理不全空家等)の所有者等に対し、必要な措置について指導・勧告をすることができるものとする。
④ 市町村長は、空家等につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所に対し、不在者の財産の管理の命令の請求(民法25条1項)又は相続財産の清算人の選任の請求(同法952条1項)をすることができるものとする。

⑤ 市町村長は、空家等(敷地を除く。)につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、地方裁判所に対し、所有者不明建物管理命令の請求(民法264条の8第1項)をすることができるものとする。

⑥ 市町村長は、管理不全空家等又は特定空家等につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、地方裁判所に対し、管理不全土地管理命令の請求(民法264条の9第1項)又は管理不全建物管理命令の請求(同法264条の14第1項)をすることができるものとする。

⑦ 市町村長は、特定空家等の所有者等に対して必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくて命令対象者を確知することができないときは、あらかじめ公告した上で、当該命令対象者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者にその措置を行わせることができるものとする。

⑧ 市町村長は、災害等の非常の場合において、特定空家等が保安上著しく危険な状態にある等当該特定空家等に関し緊急に除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとる必要があると認めるときで、当該措置を命ずるいとまがないときは、当該特定空家等に関する命令対象者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者にその措置を行わせることができるものとする。

⑨ その他市町村長による空家等の所有者等からの報告徴収の規定、国の行政機関の長・都道府県知事による空家等の活用の促進についての配慮規定、空家等管理活用支援法人制度等を定める。

民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律

令和5年6月14日公布・原則公布日から5年以内施行

(令和5年法律第53号)

・民事訴訟以外の民事裁判手続のデジタル化
・公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化   等

① 民事訴訟以外の民事裁判手続について、次の内容その他情報通信技術の活用等をするための事項を定める。

・インターネットを利用した申立て、送達等を可能とすること(弁護士等の代理人については、インターネットの利用を義務化)。
・民事訴訟にある期日(口頭弁論の期日・審尋の期日)について民事訴訟と同様にウェブ会議等を利用して参加することを可能とするとともに、民事訴訟にはない期日(債権調査期日・債権者集会の期日・財産開示期日)についてもウェブ会議等を利用して参加することを可能とすること。
・遠隔地要件を削除する等、電話会議等を利用して実施することが可能な期日の要件を緩和すること。
・当事者等から提出された書面、裁判所において作成する裁判書等を含めた事件記録を原則電子化するとともに、その閲覧等について情報通信機器を利用して行うことを可能とすること。
・債務名義が裁判所において電磁的記録により作成されたものである場合には、債権者が、記録事項証明書の提出に代えて、債務名義に係る事件を特定するために必要な情報を提供したときは、記録事項証明書の提出を省略することを可能とすること。

② 公正証書の作成に係る一連の手続について、次の内容その他情報通信技術の活用等をするための事項を定める。

・公正証書の作成の嘱託を、インターネットを利用して、電子署名を付して行うことを可能とすること。
・公証人の面前での手続について、嘱託人が希望し、かつ、公証人が相当と認めるときは、ウェブ会議を利用することを選択可能とすること。
・公正証書の原本は、原則電子化するものとすること。
・嘱託人が公正証書に関する証明書(正本・謄抄本)の電磁的記録での作成・提供を選択可能とすること。

③ その他不動産担保権の実行開始に当たっての担保権の登記に関する登記事項証明書の提出要件の削除、民事執行手続等の手数料の納付方法の見直し等を定める。


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