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最新の成立法律や法改正の情報をお届け!『法律の動向』Vol.19

『法律の動向』では、法律実務家向けの隔月刊誌「法律のひろば」や、自治体職員向けの月刊誌「地方財務」の掲載記事から、最新の成立法律や法改正に関する情報を厳選してお届けします!
※本記事は、「地方財務2024年7月号」の「最新法律ウォッチング」に掲載のものです。

最新法律ウオッチング ― 公益信託に関する法律(2024年5月22日から2年以内に施行)

2024年の通常国会において、公益信託法が成立した。

 公益信託は、公益法人のように機関を設けることなく、信託財産や受託者の組織・能力を活用して、委託者の意思を反映した公益活動を行う制度である。従来は、1922年に制定された「公益信託ニ関スル法律」で制度が定められていたが、主務官庁による公益信託の許可や監督の基準が不統一であることや、税制優遇を得るための制約が多いことを背景に、公益法人と比べ利用されてこなかった。

 社会的課題の解決に向けた民間の取組がますます重要となる中、企業や国民が公益活動を展開していく手段として公益信託を広く活用することができるよう、公益信託の許可や監督を主務官庁の裁量により行う従来の制度を抜本的に見直し、公益信託の認可や監督を公益法人制度と共通の枠組みで行う制度を創設するため、政府は、従来の法律の全部を改正する法案を国会に提出し、成立した。

公益信託法

●公益信託の認可
 公益信託について、受益者の定めのない信託であって、公益事務(学術の振興、福祉の向上その他の不特定かつ多数の者の利益の増進を目的とする一定の事務)を行うことのみを目的とするものと定義した上で、公益信託は、行政庁の認可を受けなければ、その効力を生じないこととした。

 この行政庁は、公益事務を2以上の都道府県の区域内で行う場合や、国の事務・事業と密接な関連を有する公益事務を行う場合には、内閣総理大臣、これ以外の場合には、都道府県知事とし、認可を申請された公益信託が法定の基準に適合すると認めるときは、認可をするものとした。

 また、認可の申請に対する処分をしようとする場合には、原則として、内閣総理大臣は内閣府に置かれる公益認定等委員会に、都道府県知事は都道府県に置かれる合議制の機関に、諮問しなければならないこととした。

●公益信託事務の処理
 公益信託の受託者は、その公益信託事務を処理するに当たっては、公益信託事務に係る収入をその実施に要する適正な費用(公益信託事務を充実させるため将来に必要となる資金として積み立てる資金を含む)に充てることにより、一定の期間において、その収支の均衡が図られるようにしなければならないこととした。

 また、公益信託の毎年度末における公益信託事務のために使用されない信託財産の額は、受託者が公益信託事務を翌年度においても処理するために必要な額を超えてはならないこととした。

 このほか、財産目録等の作成や閲覧、行政庁への提出についても定めた。

●公益信託の監督
 行政庁は、公益信託事務の適正な処理を確保するために必要な限度で、受託者に対する報告徴収や立入検査ができることとした。

 また、公益信託が認可の基準に適合しなくなったとき等は、行政庁は、受託者に対し、必要な措置をとるべき旨の勧告や命令、公益信託認可の取消しができることとした。

●施行期日
 この法律は、一部を除き、公布の日(2024年5月22日)から2年以内に施行される。

●公益法人法の改正
 公益信託法の改正と同時に、公益法人制度について定める「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」についても、民間による公益活動の主たる担い手である公益法人が、社会の変化に柔軟、迅速に対応し、より効果的な公益活動を展開していくことができるよう、①公益目的事業の収入・費用について中期的期間で収支の均衡を図る趣旨を明確化するなど、財務規律の柔軟化、合理化を図る、②収益事業等の内容の変更については行政庁の認定を要せず届出で足りることとする、③外部理事、外部監事の導入など公益法人のガバナンスの充実を図るとともに、行政庁において公益法人の財産目録等を公表するなど透明性の向上を図るための措置を定める、という改正が行われた。

 この改正については、一部を除き、公布の日から1年以内に施行される。

国会論議

 国会では、公益信託について、信託件数400件、信託財産額500億円と利用数が非常に少なく、どのように使いやすくするのかについて質問があり、政府からは、公益信託の活用が広がっていないのは、従来の制度が各省大臣の裁量で公益信託を許可、監督するという主務官庁制のままで、利用者から見れば不透明で使いにくい仕組みになっていることに原因があると考えており、このため、この主務官庁制を廃止し、一元的な行政庁による認可、監督制度を創設するとともに、認可の基準やガバナンスの規律を明確に法律に定めることで、公益信託制度を透明性が高く、より使いやすい制度に改めるとの説明がされた。


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