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【ニュース読み用】保釈を含む刑事手続の流れをざっくり見る記事

河井議員とか、香港の周庭さんとか、保釈のことはたびたびニュースで目にします。定期的に話題になるというか。

そして、今日、BLOGOSで見かけたのが、刑事弁護の超重鎮・高野隆先生のブログ記事。

▽香港の保釈制度|高野隆|BLOGOS


周庭さんが逮捕された件を取り上げつつ、香港の保釈制度というか刑事手続を解説した記事なのですが、“ていうか逮捕後すぐに保釈されるということ自体にびっくりだよ”という趣旨のことが書かれていて、言われてみれば確かに…と思いました。

日本では保釈制度は「起訴後」にしか存在しない、というのは、あんまり肌馴染みのない話だと思います。ちなみに、被疑者との接見でも、「保釈ってあるでしょ?」「いえ…保釈って起訴後でないと出来ないんですよ」というやり取りもしばしば。

そこで、認め事件を前提に、保釈を含めた、典型的な刑事手続の流れについてざっくりと書いてみたいと思います。

(memo)
ちなみに、「認め事件」というのは、要するに犯罪事実を争っていない事件のことです。
「自白事件」ともいいます。「自白」というと、“聞かれてもないのにベラベラ喋っている”という語感に感じるかもしれませんが、そうではなく、法的には「認めている」といった意味合いです(なので、「認め事件」です)。


身体拘束の流れ(箇条書き)

身体拘束の流れをざっと箇条書きすると、以下のとおりです。なお、細かいところの説明は割愛しています。

<逮捕から起訴まで>

☑︎ 逮捕から48時間以内に送検(検察官送致)

☑︎ 検察官は身柄を受け取ってから24時間以内に釈放するか勾留請求する

☑︎ 勾留決定されたら10日間身体拘束

☑︎ 勾留延長されたらさらに10日間身体拘束

 (これで最大23日間)

☑︎ 勾留期間満了日に起訴(※土日になる場合は前倒しされることが多い)


<起訴から判決まで>

☑︎ 起訴から1か月弱後ぐらいに公判期日(認め事件の場合は、併合事件とかがない限り基本1回で終わる)

☑︎ 2・3週間後〜1か月弱後ぐらいに判決期日


ただ羅列すると頭がパンクしてしまいますが、上記のように、起訴を境目にして2つに割ると、多少整理しやすいです(つまり、「起訴前」「起訴後」の2つに分ける)。


身体拘束の流れ(図)

文字で見ても何のことかわかりにくいので、図にしてみます。

<起訴前>

画像1

※勾留と勾留延長のところ、10日「以内」と書いてますが、実際に7日とか9日とかの端数になることは基本的にありません(少なくとも自分は見たことなし)。


<起訴後>

画像2


という感じです。


ちなみに、起訴後の保釈も、「保釈金を積めれば、だいたい認められるんでしょ?」と思われていますが、率直にいってそうでもありません。

ざっくりいうと、①身元引受人と②保釈金の準備ができるのは前提、という感じ(=言い換えると、言い方はよくないですが”足切り”という感じ)です。

①②を前提に、裁判所を納得させられる状態でないと、認められないという感じです。たとえば、被害者がいる犯罪だと、示談が成立していない限り、かなり多くの場合は、証拠隠滅や、被害者や関係者への威迫のおそれあり、といって却下されてしまいます。

なお、勾留も勾留延長も、検事が請求し、裁判所が決定するものなので、最終的には裁判所が決めるのですが、裁判所が自主的に却下することはほぼ無いといっていいと思います。


結び

これで、戻って冒頭の高野先生のブログ記事を読むと、おおなるほど…、となるかも?しれません。

なお、本記事はすべて筆者の個人的な見解であることをお断りしておきます。


▽本記事のフルver.はこちら(筆者のブログ)

保釈は起訴後にしかないことはわかったけど、じゃあ起訴前はどうやって身体拘束を争うの?といったことも書いています。


[注記]
本記事は筆者の私見であり、筆者の所属するいかなる団体の意見でもありません。また、正確な内容になるよう努めておりますが、誤った情報や最新でない情報になることがあります。具体的な問題については、適宜お近くの弁護士等にご相談等をご検討ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害等についても一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。


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