仏像とのファーストコンタクトについて

誰でも一度は悩んだことがあるはず。

お寺や博物館で仏像を見る時、お目当ての仏像とのファーストコンタクトをどうするかって問題。

たとえば東寺の講堂。ここには国宝や重要文化財の仏像が三密ヨロシクな状態でおわすわけで。

写真:帝釈天(東京国立博物館 東寺展にて)

東寺は遮るもののない広い境内で、晴れの日なら僕らを一瞬で松崎しげるにできるくらいのピーカンな陽光の中を歩くことになる。その明るい屋外から、照明の落とされた講堂に入ると、緞帳が下りたみたいに目の前が一旦真っ暗になる。
特に鳥目の僕は、そこから徐々に目が慣れてくるイントロがベラボーに長い。そりゃB'zの「LOVE PHANTOM」かってくらい長い。

写真:B'z/LOVE PHANTOM

そうして徐々に、仏像の姿が顕になってくるんだけど、東寺の講堂は入口が正面でなく、側面から入っていくスタイルなので「あ!見たいポジション、この角度じゃねぇ!」と気がつき、僕は見返り阿弥陀さながら、パッと横を向いて目を逸らす。

写真:永観堂/見返り阿弥陀(絵はがき)

そう。僕は感動のファーストコンタクトを後に取っておきたい派、取っておきたい組、取っておきたい一族、取っておきたい党、取っておきたい党の党首なわけ。

だから、立体曼荼羅の仏像たちの息吹を周辺視野で感じながら、そちらを直視しないように正面にまわりこむ。

そうして正面で一気に顔をあげ、最高のポジションでのファーストコンタクト。
「うぉーーー!!!すげーーー!!!かっけーーー!!!本で見たやつーーー!!!」となる。

博物館なんかでも、主役の仏像は後半の展示室にいらっしゃることがしばしば。
主役のいる一つ前の展示室などで、僕のようなクソガキにはまだその魅力を理解しきれない、誰かが書いたありがたいお経みたいなやつを見ていると、目の端を次の展示室で待っている仏像がかすめたりする。

途端に、その文字だらけの部屋から(めちゃくちゃ失礼)飛び出して、そちらへ駆け出したい気になるし、そちらを見て興奮したくなる。
でもそこは、辛抱する。これが結構辛くて、顔をあげれば「あの方」がそこにいらっしゃることはわかっているのに、あまり興味のない文字たちを(重ねて失礼)眺め続けつつ「早く見たい欲求に耐えることが仏門の修行か。なかなか辛いものだ」などと、的外れなことを考える。

そしていよいよ、お目当てのいらっしゃる展示室へ進むのだが、こちらでも正面に来るまでは、歩を進める自分のつま先を見ている。
そこからの、ファーストコンタクトでドーン!!!となる。

僕はこんな見方をするわけだが、そうでない人もいる。
たとえば東寺の講堂に知人と行ったりなんかすると、入ってすぐ、僕がまだ目を逸らしているところから、知人は「うおーー!でけーー!かっこよ!!」と言っていたりする。
イントロなしでいきなりサビから楽しむ党の党首だ。ウルフルズのバンザイみたいなやつだ。

写真:ウルフルズ/バンザイ〜好きでよかった〜

それだけならいいが「見て見て!」と言ってきたら始末が悪い。
僕はまだLOVE PHANTOMのイントロにいるのに、トータス松本のソウルフルな歌声を浴びせてくる。

いや、これは人それぞれ。
バンザイ派も居ればLOVE PHANTOM派もいるだけの話。
どちらも同じ仏像好きとして、仲良くしようじゃないか。

多分だけど、僕と同じスタイルで仏像を見る人は、ご飯の時に好きなおかずを後半に残しとくタイプで、いきなり見る人は最初に好きなものを食べるタイプだと思う。

あなたは、どっち派ですか??

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