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君はラスカルを本当に知っているか

君は「あらいぐまラスカル」を本当に知っているか。
(本当に知っている方はお帰りください。)

世間に溢れるラスカルのイラストに触れすぎて、知った気になっているのではないだろうか。世界名作劇場つながりの「フランダースの犬」は本で読んだし、「母をたずねて三千里」はタイトルに目的が書かれている。その系譜だからと分かったような気になっていないだろうか。僕は分かったような気になっていた。しかし、観始めてみると自分が何も知らないことに気がついた。

君はラスカルの飼い主の名前を知っているか。
ラスカルの飼い主スターリングが、ラスカルのほかに犬、カラス、スカンク4匹を飼っていることは知っているか。犬の名前は「ハウザー」、カラスは「ポー」、スカンクたちには名前がない。犬は賢くて強く、カラスは賢い扱いされているわりに全く聞き分けがない。スカンクたちは強烈なオナラで結婚式を台無しにして、町に居られなくなり森に返された。

ラスカルはいろいろあって赤ちゃんのときに保護されたので、初期はこんなにちっちゃい。ここからだんだん大きくなっていく、その成長をスターリングと一緒に見守っていると愛着がわいてくる。ただし(ただし?)、野沢雅子が声をやっている。(野沢雅子の代表作:孫悟空、星野鉄郎、ラスカル)

君は「あらいぐまラスカル」のストーリーを知っているか。
「フランダースの犬」はルーベンスの絵画を見るのが目的だし、「母をたずねて三千里」は母をたずねて三千里もの距離を移動するのが目的だが、ラスカルたちは目的なく生きている。こち亀同様、本筋となるストーリーはない。主人公スターリングとラスカル、なんでも否定する父親に萎縮しっぱなしの親友、キレやすく何かとすぐ銃を持ち出す中年男性、ラスカルを何度も奪おうとしたり人の飼ってるカエルを踏みにじって殺したりする異常者、などが関わり合いながら日常を送っている。ご都合主義ではなく、ときに無情な展開もあったりして、「ラスカル可愛い~」だけではない見応えがある。

何話か観ていると、思っていたよりもラスカルが"動物"だということに気づく。あるときラスカルはご褒美として初めてトウモロコシを食べるのだが、

トウモロコシの味を知ったラスカルは、このあと連日にわたって畑を荒らす。同じ野生出身のピカチュウがここまで本能に準じたことがあっただろうか。例のキレやすい中年男性に撃たれそうになるが、こればかりはキレられても仕方ないと思う。

ラスカルはアニメ史上最もふつうの動物かもしれない。喋るわけでも特殊な芸ができるわけでもない。忠犬ハチ公のように突出した健気さを発揮することもなければ、ピカチュウのように体を張って頑張ることもない。主人公スターリングに懐いてはいるが、異常者に飴で誘われたら付いていく。畑も荒らす。
それでもキャラクター人気において「フランダースの犬」のパトラッシェや「母をたずねて三千里」の子猿など眼中にない。動物のかわいさ一本で今の地位にいる。でもそれで十分なのかもしれない。実際、我々の飼っている犬、猫、ハムスター、ハリネズミがそうだ。それで足りている。

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