1年間の研修医生活② ~ある患者さんとの出会い~

こんにちは、堀田です。

今回は、初勤務日の深夜にあったある患者さんとの印象的な出会いについて書いていきたいと思います。


初めての勤務の夜、当直室で休んでいると、深夜3時頃に
「患者さんが来たのでお願いします。」
という電話がありました。


どんな病状の人だろうとドキドキしながら診察室に向かいました。


診察室に入ると、患者さんとその日の救急外来担当の婦長さんがいました。

婦長さんの顔が穏やかだったので、
「そんなに重症な患者さんではないのかな。」
と想像してカルテを見たところ、カルテは分厚く、長年通院している内科の患者さんでした。


カルテを見ると、ほぼ毎回便秘で来院し、浣腸するとすっきりして帰る、ということを繰り返しているようです。


基本的に大きな異常がなければ、前回と同じパターンでいいはずなので、
婦長さんが穏やかな顔をしていた理由が理解できました。


型通り、患者さんに「どうしましたか?」と尋ねると、深夜の2時に便意をもよおし、トイレに座って1時間経っても便が出ないので、浣腸してもらおうと思って病院に来た、とのことでした。

「いつも浣腸をすると便が出てすっきりするので、いつも通りお願いします。」とおっしゃいます。


この程度では絶対に内科当番の先生を呼んではいけない、と考えながら診察に入りました。


その途端、自分の実力不足せいか、急に不安が襲ってきました。


絶対に見落としがないように頭の天辺から足の爪先までしっかりチェックし、念のためにもう一度頭の天辺から足の爪先までチェックしました。


これで浣腸の指示を出そうと思いましたが、ここでまた不安になり、再度頭の天辺から足の爪先までチェックし、患者さんに不安がっていることを悟られないよう声を作って、
「看護婦さん、これは間違いなく便秘だと思いますから、浣腸をお願いします。」
と指示を出しました。


その時の婦長さんは呆れた顔をしていましたが、浣腸の処置をしてくれ、その後患者さんはトイレへ行きました。



そしてトイレから戻ったその患者さんが、僕の人生を変える言葉をくれました。


「この病院に長く通っているけど、こんなに丁寧に診察してもらったのは生まれて初めてです!」


そして患者さんは僕の手を取り、何度も何度も握りながら
「ありがとうございました。ありがとうございました。」
と言ってくれました。


こんなに素晴らしい仕事があるんだと、魂が震える思いがしました。


そして、最高の医者を目指したい!と思い、ほとんど病院に泊まり込んで実習に励み始めました。



最終的に僕は、当時「患者さんを助ける最後の砦」と言われていた外科を専攻することになるのですが、そのきっかけを与えてくれたこと、そして、丁寧に診ることの大切さを教えてくれたこの患者さんには、今でも感謝の気持ちでいっぱいです😌



次回も、研修医時代の出来事について書いていきたいと思います。

本日もお読みいただき、ありがとうございました😊


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