見出し画像

『氷の城壁』第9巻購入・紹介・感想(その1)


ネタバレそれなりにありますのでご注意を!!


まだ第8巻の(その2)以降も書けていませんが、第9巻(75話から82話で構成)についての感想が先にまとまったので今回アップします。
第1巻から第8巻まで、これまで書いた感想等は、マガジン化していますのでこちらをご覧ください。

トップ画像ですが、第9巻の表紙は安曇優希と熱川秋音なので、伊豆の熱川や信州の安曇野について撮影したものがあれば使いたかったところですが適当なものがありません。ということで、82話にあったこゆんの独白

ーーいつの間にか 私は
隙間だらけだった 自分の心を
周りから 与えられている たくさんのもので 埋めていて
その 埋めているものたちの
奇跡的な バランスが
当たり前では
ないことに
私は 気付いて いなかった

『氷の城壁第9巻』82話 pp.192-193

にヒントを得て、八王子城址内でたまたま目にとまった「奇跡的な バランス」で根を生やして立っている大木の根元を写したものを採用しました。
根の周りにあるいくつかの大きな石は、おそらく四百数十年前に築城されたときの石垣の一部のようであり、豊臣秀吉が北条氏を滅亡させた戦いで負け廃墟となり、土に戻り数百年後に植林された木が、現在は近年の城跡整備などを経て下の方の土が結果として流れてしまった結果、石垣をよけて根をはっている状態になっているのが目に見える状態になったのではないかと推測しています。ちなみにトップ画像の全景は以下のとおりです。

下のほうは土が流れて空洞化しています
木の根元付近の全景です。それなりに安定しているように見えますが空洞の大きさたるや。
整備された通路の端に立っていることがわかります

いくら根元も根も太くても、大きな台風や地震が襲ってきた場合、もしかしたらこの木が倒れてしまい、この光景を見ることができなくなるかもしれません。2019年10月に、ここからそんなに遠くない高尾駅付近などに、川の氾濫で一体が床上浸水の被害がでるほどの台風もありましたしね。

第9巻全体の内容に戻しますと、こゆんが第8巻最後の74話で美姫にミナトへの気持ちを話したいという行動に出て、自ら氷の城壁を大きく溶かしに行ったものの、ミナトの本心を隠して出した言葉を聞いてしまったことで、75話で自然に融ける程度にとどめることに決めた、というのがまず第一段階。この裏でこゆんのキラーワード「ヨータの美姫に対する気持ちは・・ 「性欲」じゃない」をはじめとしてたヨータの美姫への気持ちを説明して、美姫の現在位置を正確に認識してもらうことで、ヨータとの友情、美姫との友情とも非常に大切にしていることも示されています。
76話は阿賀沢先生の真骨頂というところで、主にこゆん、美姫、ミナトの心理的葛藤を言語的にも絵的にも詳細に表現しています。矢印(3)、というタイトルからも各人の気持ちの方向性を明確化していることがわかるかと思い、76話は個人的には全体のうちの好きな話として上位15%以内に入ってきます。

77話から81話まではこの巻における第二段階でして、丁寧過ぎてしんど過ぎですが、大団円に至る過程のなかでは欠かせない葛藤の局面です。
中高生は自分の人生の教科書として、(ガマンして)何度も繰り返し読んでくださいというところです。ツライのいやぁぁ・・というエンタメテイストのオトナの方には、軽く一読で済ませたくなるくらいのところですけど・・・ここをしっかり読むか読まないかで『氷の城壁』全体への絶大なる評価ができるかできないかというシーンです。
男子はミナトだったらどうする?女子はこゆん、あるいは桃香だったらどうしてる?という読み方をしてみてください。おっさんたる私の場合、ミナトの立場だったらミナトと同じ行動をとってしまうなぁ・・・と。
ここについては余裕があれば(その2)として詳細をかければと思います。

82話は第三段階に移ります。この話では美姫の感情が持て余すことなく描かれ、個人的に大好きな絵である「巨大化美姫ちゃん」のシーンも出てきます。美姫の感情について的確すぎて素晴らしい話で、比較的面白モードで描かれていることもあり、77-81話を軽く一読で済ませた方もぜひ復帰してくだいませ。
この話の終わりで、優希がこゆんを持ち上げてミナトに向かって「こゆんもらうね?」と言うときのミナトの無表情ぶりがなんともいえません。
表紙が優希と秋音だったので、83話まで第9巻に含まれるのかと思っていましたが、何が起こるのか、という余韻を残してここで切ってきました。未読の方はこうご期待。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?