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那覇で出会い、札幌にて再会し、博多で飲みに行った話

この頃、本を読むペースが落ちてきたなと。

そんな今だからこそ、

「那覇で出会い、札幌にて再会し、博多で飲みに行った」お兄さんの話を少し回想します。

彼は、

「知性はセクシーに変わるから

と教えてくれました。

ーーー

那覇での出会い

札幌で大学院生活を送っていたある日、私は那覇にいた。
北の大地から、南の島に向かったというわけだ。

那覇には泡盛バーが何軒もあって、泡盛好きな私は、もちろんそこに繰り出した。

私は一人旅が好きだ。
とはいえ、旅先では誰かと話したいという気持ちがあるので、ほぼ毎回飲み屋ではカウンター席に座る。

そこで偶然、隣に座っていたのが、問題のお兄さんだ。
年齢は30代前半。23歳だった私からすれば、かなり大人に見えたものである。

どうやら彼は普段、鹿児島に住んでいて、初めての沖縄旅行を楽しんでいるらしかった。

彼は私と話すにつれて、私が大学院で行っていた、「戦争と観光」の研究について興味を示してくれた。

そして、帰り際、

「絶対、札幌行くから」

と言う彼と、私は連絡先を交換した。

本当に札幌で再会する

当の私はというと、

「まぁ、社交辞令だろう」

と思っていた。
那覇で偶然出会った鹿児島県民がまさか札幌まで、私に会いに来るとは思えない。

その距離3000㎞。
心の距離どころか、物理的にそもそも遠いのだ。

那覇で海が開かれる頃、札幌では散った桜の花びらが道に落ちているなんて可能性もある。

でも、そのまさかは起きた。彼は数か月後、

「札幌に行くから、一緒に飲みに行こう」

と、私に連絡をくれた。

嬉しい反面、正直なところ、「変わった人もいるもんだな」と思ったというのが本音でもある。
私に言われたくもないかもしれないが。

そして、札幌で時間を共にした居酒屋で、私は彼とこんな約束をする。

「もし僕が九州行ったら、飲みに連れていってくださいね」

博多で飲みに行く

彼はその時、「博多ぐらいなら迎えに行くよ」と私に告げた。

馬鹿な私は、彼の発言を真に受け、後に

「博多行くんで、ごはん連れていってもらえませんか?」

と連絡したのである。
それはもうすぐ大学院を卒業しようかという頃だった。

そして、彼は本当に鹿児島から博多まで来てくれた。
仕事終わり、鹿児島から九州新幹線に乗って。

しかも、「沖縄でおもろい奴を見つけたから」と彼の会社の同期も連れてきていたのである。
その女性は私と同じ相撲ファンだった。

彼は同期に

「この子、ちょっと視点が他の人とはズレてるけど、筋は通ってる。これが面白い」

と私を同期に紹介してくれた。
また彼がこうして私を可愛がってくれる理由も、私のズレた感覚にあるという。

具体的には、那覇での会話に遡る。
私は彼に那覇で、

「なぜ戦中は注目されても、戦後は注目されないのか。沖縄戦で県民の1/4が亡くなったという事実に注目すべき一方で、生き残った3/4の戦後の苦しみにも目を向けるべきなんじゃないか」

という話をしたという。そんなとき、彼は

「皆が死者の数ばかりに注目したり、平和を望むみたいな話をしているのに、なぜか戦後の苦しみにも興味を示しているなんて面白い」

と、私の「ズレ」を真面目に面白がってくれたらしい。

知性はセクシーに変わるから

博多での飲み会も終わりを迎えようという頃、彼は私にこういった。

「今のズレた君らしく、誰かや組織の考えに無理矢理従うなんてことはしてほしくないな。たぶんまだ若いから君も君の周りも分からないだろうけど、知性はセクシーに変わるから。君の独特の知性は僕らにとってはとってもセクシー」

と。

知性がセクシーというのは何となくわかる
私も数人だが、知的で色気のある人を挙げようと思えば挙げられる。

しかし、自分がそのような雰囲気を将来醸し出せるのかと言われると、いまいち想像がつかない。

ただ、一つ言えるのは、
彼が私に多少の色気を感じた時、私は常に本を読み、思考を巡らせていたということだ。

今はどうだろう。
研究を本分にしていた大学院時代と比べるのは無理があるとはいえ、それにしても、本からのインプットがとても少なくなっているように思う。

つまり、私の色気が減っているということだ。

知性を失い、セクシーさを欠いた私を、彼はまた「面白い」と言ってくれるだろうか。

本を読むということは、自分のためだけでなく、どこかで

「那覇で出会い、札幌にて再会し、博多で飲みに行った」彼の期待に応えること

でもあるように思えてきた。

ーーー

この方との出会いは、私の旅の思い出の中でも、非常に印象に残っているエピソードの1つです。

この方に出会って、

「難解と揶揄される学術研究も、自分が伝えたいと思えば、楽しんでくれる人がいるんだ」

と思えるようになりました。

今は研究から離れていますが、学術研究の面白さを伝えたいという思いは変わることはありません。
noteはそんな研究の面白さを伝える重要なツールです。

最後にお会いしてから早1年以上が経過しました。
私が名を挙げて、彼の目に、この投稿が目に留まる日がくればいいなと思います。

そんなとき、次はどこで再会するんがいいんでしょうね?

というわけで、本日はこれまで!
お読みいただきましてありがとうございました!

ぜひ、次回もアクセスしてみてください!


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