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小田原の現状を知る(公共施設)

これからの小田原の街づくりを考える時、まず必要なのはきちんとした現状把握です。これは二宮尊徳翁がかつて江戸時代にどんな課題を克服するにも行った報徳仕法の最初の作業です。
ここでは主に小田原市の公共施設をみながら、これからの小田原を考えます。★今日もちょっと長いですがお付き合いください。

およそ195もある公共施設を今後どう維持するか?

人口減少に起因する税収入の落ち込みと、反面増え続ける扶助費(子育て・教育・福祉・社会保障)により、小田原市の財政が2022年(令和4年 )あたりから赤字となる見込みとなっている今、今後市内におよそ195もある公共施設(学校・スポーツレクリエーション施設・病院・公営住宅・公園など)をどう維持管理・運営していくか?これは今後、市の財政運営を考える上でとても重要な課題です。

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老朽化する小田原の公共施設

下の図をみれば分かるように小田原の公共施設の多くは、昭和40年代から昭和50年代にかけて、学校教育系施設や行政系施設・公営住宅を中心に建てられたものが多く、1996年(平成8年)に竣工した小田原アリーナ等のあと、空白期間とした最近20年間あまり、大型の建造物は、ほぼ建てられていないことが分かります。
これはある意味ここ20年以上前から財政健全化に取り組んできた証ともいえる反面、現在ある公共施設の多くが老朽化していることを意味します。現在市の公共施設は築40年以上が約5割、築30~40年が3割強と8割を占めており、これは神奈川県全体や横浜市と比較すると、小田原の公共施設は老朽化したものが多いのです。

公共施設2

小田原市の今後の方針をご存じですか?

現在、市立病院などについて議論となっていますが、小田原市では平成21年度から今後の公共施設のあり方について長年にわたり検討を重ねてきており、平成28年度の公共建築物マネジメント基本計画を受け、今後の方針を平成31年3月に小田原市公共施設再編基本計画として、121ページにも及ぶ詳細な資料を策定しています。詳細については、じっくりお読みいただきながら議論いただきたいと思いますが、以下簡単に要約を記します。

小田原市公共施設再編基本計画
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/global-image/units/384398/1-20190402170700.pdf

財源不足により、全ての施設は維持できない

下の図のように簡単にいうと、ある一定の条件で今後2046年までの30年間に必要となる将来費用と投資可能額を算出したところ1,070億円もの財源不足となることが分かりました。これにより、この問題について「①総量(延床面積)の縮減」、「②保全コスト(長期保全費用)の削減」、「③管理運営コストの削減」、「④サービス・質の見直し」、「⑤財源の確保」の5つの観点で、総合的な公共施設マネジメントを実施し公共施設の再編することを計画しています。

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再編計画実行してもまだ500億円足りない

そして細かな視点で各施設を検討してみた結果、この計画を実行したとしても、まだ501億円もの不足が生じることが分かっているのです。

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この計画が示されたのは昨年2019年(平成31年)のようですが、駅前・ホールなど新規大型案件もありイニシャルコストとランニングコストがどこまで含まれているか?私たちも正確に把握していないので、あくまで目安としてお考え下さい。また現在の新型コロナウィルスが経済に与える影響によって収支計画が変動することも当然予想されます。

子供たちの世代に先送りしてはいけない

全部は無理 ここからがアイデアの出しどころ

ここで現取り組みを批判する気は全くありません。ただ、まじめに深く考えたいのです。選挙前の重要なテーマとして、まじめな議論なら大いにしてもいいのではないかとも思うのです。
要するに私たち市民も一緒に、今後の小田原おいて「新しく建てる施設・維持改修する施設・合併する施設・取り壊す施設」を早く決めていかなければならないということだと思います。
これまでの「人口」「財政」の記事でも分かるように、どう考えても、すべての施設を新築で建て直すなどということは、誰が市長になってもできないのです。だからこそ、これまでにない新しい発想や取り組みが必要なのです。

みなさんはどの施設をどの程度利用しますか?

そこでまず考えてほしいのは、小田原にある主に195の公共施設のうち、普段どの程度公共施設を利用しますか?これは施設の用途や場所・大きさなどによって大きく左右されるものですが、学校や病院などのほかには「あんな施設もあったな」と思うような施設も含まれていますので、ぜひこの際見てください。
「あればあったほうがいい」「自分が使う施設は残してほしい」そう考えるのは誰でも同じかと思いますが、将来への負担が大きくならないように「この際なくそう・減らそう・やめるべき」といったことを考えることも重要なのだと思います。

小田原市施設白書
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/global-image/units/167304/1-20200410190452.pdf

再編基本計画の具体的方針

冒頭でもお伝えした通り、平成31年(令和元年)3月に示された、小田原市公共施設再編基本計画のP61~79には

小田原市公共施設再編基本計画
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/global-image/units/384398/1-20190402170700.pdf


2019~2026年までの間に、継続・改善・複合化・統合・移管・廃止までの方針が各施設ごとに具体的に示されています。

ここに2026年までの具体例を上げますが、まずは
施設そのものの機能について
【廃止】酒匂市民集会施設(2020)星崎記念館(2020)栢山住宅(2020)
【移管:民間会社へ管理運営を任す】なし
【広域化:近隣自治体と相互利用】なし
【統合:1つの施設に集約】下府中市民集会施設(2026)国府津出張所(2020)西大友出張所(2020)仲沢住宅(未定)
【複合化:異なる種類の機能を1つの施設に】特別支援教育相談室あおぞら(2020)おだぴよ子育て支援センター(2020)青少年相談センター(2020)
【改善:運営方法を見直し】川東タウンセンターマロニエ・川東タウンセンターマロニエ・橘タウンセンターこゆるぎ(2022)、いこいの森(不明)歯科二次診療所(未定)保健センター(未定)小田原こどもの森公園わんぱくらんど(未定)上府中公園(未定)公設水産地方卸売市場:水産市場(未定)
■建物自体について*カッコ内は実施時期・未定は記載なし
【建替え】学校給食センター(未定)市立病院(未定)看護師寮(白梅寮)(未定)医師住宅(未定)岡本出張所(2020)谷津住宅(未定)福井島住宅(未定)公設水産地方卸売市場(未定)
【改修】川東タウンセンターマロニエ・城北タウンセンターいずみ・橘タウンセンターこゆるぎ・かもめ図書館(2020)・文学館(白秋童謡館、尾崎一雄邸含む)・清閑亭・尊徳記念館・松永記念館・本館(けやき)・国府津学習館・小田原市集会所・小田原アリーナ・城山陸上競技場・小田原テニスガーデン・城山庭球場・小峰庭球場・城内弓道場・小田原球場・上府中スポーツ広場・酒匂川スポーツ広場・鴨宮運動広場・高田運動広場・酒匂川左岸サイクリング場・小田原城天守閣・常盤木門・小田原城歴史見聞館・なりわい交流館・梅の里センター・曽我みのり館(梅の里センター分館)・HaRuNe小田原・橘学校給食共同調理場・豊川学校給食共同調理場・国府津学校給食共同調理場・市内全幼稚園・社会福祉センター・子育て支援センター・生きがいふれあいセンターいそしぎ・障がい児通園施設つくしんぼ教室・保健センター・片浦診療所・市役所本庁舎・消防本部庁舎・消防分署・小田原城址公園・石垣山一夜城・小田原フラワーガーデン・わんぱくランド・扇町クリーンセンター・清掃工場・リサイクルセンター・サンサンヒルズ小田原・久野霊園・栄町駐車場・高田浄水場管理棟・水道局庁舎 など
*年号ないものはすべて(-)として未定のようです *施設数多く全部記載しておりません。
【その他】競輪場
となっており、施設名と方針こそ示されているものの、時期や内容においては「計画的な維持管理を行い、当面は現状のまま維持する」とか「経年劣化による要改修箇所に随時対応」といった表記のみでしか示されておらず、明確になっていないことがわかります。

学校教育施設は大丈夫?

また、子育ての観点からすれば、市内の幼稚園は2026年までの期間に改修対象(当面は計画的な維持管理により維持)になっているものの、市内小中学校は全て現状維持2027年以降になってから「今後の学校施設のあり方の検討結果を踏まえ、適正規模への見直し(建替え時の減築)や長寿命化改修を行う」と記されています。近年の猛暑に対応して臨機応変にエアコンの設置(財源は繰越金5億4997万円と市債16億4930万円・年間維持費別)はされましたが、元々予定していた事業ではありませんでした。
学校建物でいえば、昨年の段階で既に築62年が経過した白山中学校を筆頭に、築50年以上経過した白鷗・城南・鴨宮・泉・橘中学校、新玉・芦子・早川・富水・町田・桜井小学校など、本当にこのまま先送りで良いのか心配になります。先日の移住の話題でいえば、他に素敵な学校があれば当然親はそちらに通わせたくなりますしね。

学校の問題も簡単ではないのは承知です。

少子高齢化が進むこれからを考えれば、今と同じ規模で建て直しや改修することは最善ではないことは誰でも発想できます。それは例えば小学1年生の生徒数(令和元年)でみれば、片浦15人・曽我19人・前羽21人・早川26人・新玉28人・下曽我28人など、市内25校あるうちの6校が1学年30人以下の現状なのです。(上位2校は豊川107人・三の丸104人)

小田原市立小中学校生徒数
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/field/education/ele-school/p07133.html

そこで小田原市ではこれからの再編への取り組みには、市民の理解・協力が不可欠として、今回の計画策定と並行して鴨宮地区と千代地区にモデル地区として市民も参加したワークショップを実施し、ここでいかに学校、保育園、支所、市民集会施設などの多様な公共施設をあわせて再編していくべきか地域には今後どのような施設が必要か?を議論しました。 *詳しくは基本計画をご覧ください。

文句ばかりは駄目です。

私たち市民は、いつも市が何がしか決定すると一部ではありますが「聞いてない」「なんだそれは!」「おかしい」などの意見が生まれ、必ず行政と住民との間で不協和が生じます。ろくに説明もない時は論外ですし、単にWEBにUPしたでも不十分かと思いますが、無関心な市民が大多数のなかでいえるのは、普段見ようともしない、聞こうともしない、そんな我々もダメなんだという事を反省しなければいけないのだと思います。

できるだけ丁寧に。でも速やかに。

この公共施設再編に向けた内容は、時間があれば今後述べたいと思いますが、2022年から財政収支が赤字になり、累積赤字が年々増加することが予想され、今コロナウィルスによって経済も大打撃を受け、余計に厳しい財政状況が見込まれるこの先、今後もできる限り丁寧な説明と進め方は必要だとしても、何年もかけて議論を続けながら結果的に結論がでないまま先送りとなってしまわぬように、小田原評定だなどど揶揄されないように、この時代に生きる私たちの世代が真剣に議論し、結論をだし、実行すべきではないでしょうか?
少なくとも次の任期を担っていただく市長には、誰であろうと最終決断と実行が求められると思いますし、私たち市民も一緒に議論に参加しながら、最終的にはその政策に合意し、受け入れなければならないのだと思います。

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小田原が生んだ偉人、二宮尊徳翁は全ての人々が幸せに暮らすことができる報徳思想に則り、きちんとした調査立案に基づいた事業計画(報徳仕法)を実行して、道徳と経済の両立を図り、生涯600に及ぶ村々の再興を成し遂げました。
令和の時代は、人口が自然に増えていた、かつての時代と異なり少子高齢化が進む時代の変革期。街の収入は減り続ける中でも、子育てや福祉などはもっと充実させていかなければなりません。それには具体的に小田原の課題を抽出(CHECK・ACTION)し、具体的な政策を立案(PLAN)し、迅速に実行推進(DO)しながら、地域課題解決のためのPDCAを繰り返すことが必要なのではないでしょうか?

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*この投稿全体は報徳流地方創生塾 小田原特別編 実行委員会(報徳二宮神社・(株)FM小田原)が行っております。
*これらの投稿は当初予定しておりましたセミナーがコロナウィルス感染拡大防止の為中止となったことから、WEBを活用して小田原の多くの市民の皆さまを対象に配信しております。
*また、私たちは元々ライターではありませんし、現在コロナの影響も甚大に受ける中で記事を作成投稿しています。本来あるべき丁寧な校正作業もままならないまま投稿しておりますことお許しください。万一事実と異なる内容あれば速やかに訂正・お詫び申し上げます。







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