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ホテルの開業準備 その30 開業当日

長い準備期間を経て、いよいよ開業当日を迎えます。当日にテープカットなどのセレモニーを行ってから最初のゲストを迎え入れるホテルもあれば、実際には正式な開業の数日前から特別ゲストを招いているケースもあるので一概に言えませんが、いずれにしましても最初に迎えるゲストは特別なものです。

 事前にお越しになるゲストの属性や時間帯がわかっているケースはそれほど苦労しませんが、あくまで当日の流れに任せて(チェックインの時間帯に合わせて)ランダムに最初のゲストを迎える場合は、なかなか神経を使います。できれば、記念すべき最初のゲストですから記念写真の一枚でも一緒に撮らせていただき、粗品でもお渡しししたりしたいものですが、お客様によっては時間がなかったり、遠慮されたりする方もいらっしゃいます。いずれにせよ無理のない範囲で行いましょう。(この最初のお客様を向かい入れる、という儀式は何も新規開業のときだけでなく、例えばブランド変更のタイミングとか、改装エリアのオープンにあたっても応用できますね)

ここからは文字通り24時間ノンストップの運営が継続します。特に、開業間際においては、まだ施設面やシステム関連の不具合、サービスの連携の問題などなど、大小さまざまな問題が起こってくることでしょう。完璧に準備し、何事もなく過ぎていくというのはむしろ稀ですから、ここから発生する諸問題はむしろ良いケーススタディーと割り切り、ひとつずつ再発しないようこれまで構築してきたシステムを見直し、改善を加えていってください。開業したてのホテルは生まれたての赤ちゃんみたいなものです。3ケ月、半年、そして1年するころには徐々に色々なことを学び成長し、そして徐々に独り立ちしていく過程を歩んでいくわけです。

さて、過去30回にわたりホテルの開業準備にまつわる基本業務のいくつかを紹介してきました。開業準備というと、とても特殊な業務の連続のようにも思えますが、一方で、突き詰めると日常のオペレーションで遭遇する作業とそれほど大きく違わないことにも気付かされます。

たとえば、ホテルのリノベーション事例などは、開業準備の仕事と変わらぬ作業工程が求められますし、何も新規開業準備に携わる人間だけの特殊業務では無いことはお分かりいただけるでしょう。よって、究極的にいえば、開業準備の仕事など恐るるに足らず、日常のオペレーションの経験豊富な方たちであればきっと上手くできるものとも言えるわけです。

繰り返しになりますが、開業するとそこからは終わりのないオペレーションと改善の連続の毎日です。そんな中でも日々、商品性の向上に努め、オペレーションの再現性を高めていく弛まない努力を続けていける者だけが、高い売上と利益を確保し、一部を従業員へ還元し、そして組織の活力を失わせない将来への投資へ振り向けていく、そんな好循環を生み出す組織へと発展していけるわけです。

本シリーズは一旦これで完結です。長らくお付き合いいただきました読者の皆様、ありがとうございました。また別の投稿でお楽しみいただければと思います。

ホテルマネジメントの達人


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