ホテルの開業準備 その6 組織づくり
本日は開業段階における組織づくりについてです。
開業準備室の設立段階でホテルの特徴に応じた組織図と人件費予算を組立て、それに沿った組織づくりが行われていきますが、立ち上げ当初はまだ何かと不確定要素が多く、すんなりと計画どおりに人員計画が進んでいかないケースも多いかと思われます。
理論的には、主要4部門(財務、人事、営業、運営)の組織長を決定し、それぞれに組織長が配下の組織を形成していくわけですが、特に開業準備の初期段階では、組織長にも優先して採用すべきポジションもありますので、そのあたりの実務に即したケースで以下紹介していきます。
1.人事部長
何はともあれ人事部長の採用が何よりまして重要であることは議論の余地のないところでしょう。現地の労働法の理解や採用の向けた人脈がチーム組成に不可欠ですから、現地事情に明るい人事部長の採用が出来るかどうかでその後の進捗に大きく影響してきます。ここは多少余計なコストをかけてでも優秀な人材獲得が望まれるポジションです。
2.ITマネージャー
開業準備室のオフィス立ち上げやシステム設計のため不可欠なポジションです。主要なホテルシステムの選定とネットワーク構築は立ち上げの初期段階で固めておかないとその後のオペレーショントレーニングにも影響してきますから、早めのタイミングで開業準備経験のある優秀なマネージャーの採用が望まれます。開業前に求められる資格要件が高い職務の典型といえます。
3. グラフィックデザイナー
通常は上層部から採用し徐々に下層部へ落としていくのが鉄則ですが、開業準備の初期段階で製作すべき印刷物やホームページのデザインなどデザイナーの役割は大きいので出来るだけ早めの採用が望まれます。このタイミングでは、必ずしもデザイナーに高い技術は求められず、基本的なデザインソフトが使える人材であれば及第点です。ちなみに準備の初期段階において進めていく各種マーケットリサーチの業務は、マーケティング部門の管轄としていくことが多いので、もし基本的なデザインソフトが使えるPRマネージャー候補がいればこのタイミングで採用することは何かと重宝するものと思われます。
4.調達マネージャー
財務部長は立ち上げ時に必要なポジションの一つではありますが、立ち上げ当初はオーナーサイドが資金管理含めて実務的な対応に関わるケースが多いので、実はしばらくの間いなくても何とかなる部分でもあります。逆に調達の責任者については、開業に向けた購入物の整理を進めるうえで必要不可欠で、かつホテル特有の専門知識も多岐に亘るので、財務部長に先立ちむしろ早めの採用が望まれるポジションといえます。
5.リザベーションマネージャー
開業準備段階においてリザベーションマネージャーの果たす役割は大きく、かつ、ブッキングエンジンの決定、オンライントラベルエージェントとの契約、客室在庫管理の初期対応など、早めの対応が必要なことが多々あります。理論的には営業部長による価格政策などの確定後、ではありますが、これらの諸準備のため場合によっては営業部長の採用前にアサインが望まれるポジションです。レベニューマネージャーがその役割を担うホテルもありますので、リザベーションとレベニューの線引きもこのタイミングで行っておくと良いでしょう。
こうやってみますと、準備室の初期段階では、案外、宿泊やレストランなどのオペレーション部門の責任者の出番はあまり多くなく、普段比較的裏方に徹するポジションの役割が重要であることがお分かりいただけるかと思います。オペレーション部門の各種政策については、まずトップである開業準備室長が全般のオペレーションポシリーを策定し、採用活動の中盤戦において選抜されるオペレーション部門の責任者へその詳細設計を引き続いでいけばよいでしょう。
次回はその「オペレーションポシリー」について話を進めたいと思います。
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