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ホテルの開業準備 その24 ゲストルームの品質維持

ホテルの引渡しが完了し、開業1~2ケ月前のドライラン(正式オープン前の仮営業)のプロセスに入りますと、いよいよ客室の利用に向けた最終準備に入ります。

基本的には、建物引渡しのタイミングで問題点の洗い出しはすべて完了しており、正式オープンに向けて手直しが進んでいるというのが本筋ですが、実際にはそう理想的にもいかず、スタッフやご招待客による試泊などを通じて判明する不具合も結構出てきます。

改めてこれらの傾向をもとに現場入りしたあとの限られた期間で全ての(或いは部分開業時に求められる客室数の)チェックと手直しを行わなければならないので、客室部門は大わらわです。改めて部屋の不具合の状態を記載できるチェックシートなどを用いて、問題点の共有と処理を行っていかないといけません。加え、従前から準備できている(はずの)客室アメニティーや備品類などの配置も微調整を行いつつ、いよいよ本番スタートに向け備えていくこととなります。いくつかこのタイミングで行う主要な作業をみてみましょう。

1)客室の標準セットアップ
 バスルームのアメニティーの位置、ナイトテーブルの上の備品類の配置、冷蔵庫の飲み物、ワードローブの状態などなど、客室内のいくつかのポイントがありますが、それらの配置の再現性が確保されているかをチェックしていく必要があります。お国柄やスタッフのレベルにもよりますが、曲がっておいてあったり、雑な配列になっていたりを無くし、最適な状態を保つためには、やはり写真などのビジュアルでマニュアルを作成し、教育していくのが一番かと思います。どの程度細かく規定するかはホテルの考え方にもよるでしょうが、例えば、メモパッドは机の端から2センチのところに合わせて配置する、といった細かいマニュアルにするのも時と場所によっては必要かもしれません。

2)清掃マニュアル
 客室共通の清掃手順があることは当然ですが、実は同じ部屋タイプでも微妙に形状が異なっていたり、例えば西日の強い部屋のカーテンの締め具合などなど、こまかな対応も必要になってくるのが現状です。客室タイプ毎のカルテなどを作り、清掃や最終チェックに役立てるなどの工夫が求められます。

3)匂い対策
 新規オープンの場合、どうしても当初、部屋に匂いが残ってしまい、開業当初の主たるクレームの要因になることが多いです。空気洗浄機を使ったり、窓をあけ換気を促したりと、とにかく換気をし続けることしかありませんが、ホコリや虫の問題もあるので一長一短です。気休め程度ともいえますが、客室内に柑橘系の果物を置いて匂いを緩和したりするケースもあります。いずれにせよ、毎日、館内にいると麻痺してしまうので、やはり試泊などを繰り返し外部の方の意見を聞きながら、匂い対策をしっかり行ってください。

4)コロナ対策
 昨年からの大きな流れとしてもはや外せないポイントというか最重要課題になってきています。お客様にとってホテルのコロナ対策がきちんと徹底されるかはホテル選びの重要なポイントとなりますので、しっかりしたマニュアルを用意するとともに、その再現性については日頃からチェックが必要です。ソーシャルディスタンスや消毒関連のマニュアルは世の中で随分浸透してきたと思いますが、客室については、たとえば必ずチェックアウトから一定期間をあけて利用するなど、ホテル独自のポリシーの策定と表明はホテルの信頼性にも重要なポイントですので、運営状況に見合った方針を策定し徹底するようにしてください。

上記は何も新規開業ホテル特有の業務ということではありませんが、特に経験の少ない新しいスタッフへの教育面などを考えると、このタイミングでしっかりしたマニュアルを制作して、癖にしていくことがその後のオペレーションの質の維持にきっと役立つでしょう。

今日はこのあたりで。
ホテルマネジメントの達人



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