ホテルの開業準備 その20 引渡し検査
ホテルの内装工事が進み、いよいよ試営業の準備が整い始める段階になりますと、運営の責任を負うホテル管理会社による引渡し検査が実施されることとなります。管理区分を建築施工会社からホテル管理会社へ移管するための重要なプロセスです。
通常、この引渡しから2~3ケ月の準備期間を経て、いよいよホテルが開業することとなります。検査の内容は多岐にわたり、通常は1回ですべての検査にパスすることは少なく、是正工事の後に再検査が行われるケースが多いようです。資本投下し一刻も早くオープンさせたいオーナーと、完全な形での引き継ぎを望むホテル管理会社のせめぎあいが頻繁に起こる場面でもあります。
引渡し検査ですが、建築設備に関する基本的な安全検査はもちろん、ホテルチェーン独自の要求項目の充足、意匠性の点検なども含まれます。極めて大まかですが、以下のような項目に分類することができます。
1.設備点検
・電気設備
・給排水設備
・空調設備
・昇降機設備
・厨房設備
2.オペレーション点検
・各内装の仕上がり確認(美観、安全面、使用面)
・客室の室温調整機能
・バスの水質、シャワー水圧
・バスタブのお湯貯めの所要時間
・レストランやキッチンの照度
・ソファーの座り心地
3.引継ぎ書類の確認
・在庫リスト
・鍵リスト
・建築図面
・各種整備記録
・設備マニュアル
・家具等のカタログ
・各種許可証
・固定資産台帳
これらの確認作業が完了次第、ホテル管理会社による施設の運営管理がスタートすることとなります。つまり、ここからはホテル内で発生する事故や紛失事件等は原則としてホテル管理会社の責任を問われることになるわけです。
とはいえ、このタイミングではまだまだ施工会社や内装業者などが引き続きホテル内に頻繁に出入りする機会も多いでしょう。(本来はそれらが終わってから引渡しを受けるのがベストですが、多くのホテルでは部分的な引渡しを受け、他の施設は引き続き工事が継続しているというケースのほうが現実ともいえます)
これらの入館管理はなかなか頭の痛い問題です。客室の内装追加工事などには確実な立会が必要ですし、ただでさえ忙しくなるタイミングで人手を取られます。レストランにおいても什器備品類は厳重に管理しておかないと、特に発展途上国においては色々なモノが無くなったりする可能性が高いので気が抜けません。
ホテルの引渡しに伴い、ホテルスタッフも館内に引越し、いよいよ現場を活用したサービストレーニングが本格化するタイミングが訪れますが、まずはマネジメント層が気を揉むのは、こういった安全管理の面であったりします。
今日はこのあたりで。
ホテルマネジメントの達人
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