沖田修一『さかなのこ』について

　とても面白かったし、なんだか心が温まるし、色々と考えさせられる映画だった。

　まず、男性であるさかなクンの自伝的な映画なのだが、演じるのが女優ののんということで、どんな感じになるのかなと思っていたが、映画の最初に示された通り、「男か女かは関係ない」だった。観終わった今、この映画の主人公がここまで似合うというか、ここまでふさわしい感じで演じられるのはのん以外にありえないのではないかと思う。すごく役柄に合っていた。

　他の登場人物たちもとても魅力的だった。ヤンキーがいっぱい出てくるんだけど、みんないいやつで、主人公（ミー坊）のことを認めて尊重している感じがすごく良い。認めるとか尊重で言うと、井川遥演じるお母さんが素晴らしい。俺も二児の父親だが、このお母さんのように子どもたちのことを尊重できるかと言われたら、多分できない。

　魚のペットショップで働いたり、寿司屋に絵を描いたことがきっかけでイラストレーターの仕事をしたりと、結構さかなクンの半生に基づいてるみたいで、それも興味深かった（観終わった後ウィキペディアで調べた）。

　ついでにウィキペディアで沖田修一監督について調べたら、この人は『横道世之介』も撮ってる人やねんな。あの映画もすごく面白かった。あまり高尚な映画ばかりじゃなく、こういう心が暖かくなる映画をもっと知りたいなと思った。