就業規則で会社は守れる?

事業を進めていくなかで、色々な問題が発生すると思います。中でも事業と人材を丸ごと引き抜かれたなんてことは無いでしょうか。近しい事案に直面したことがあり調べた内容をメモします。

○就業規則の「競業禁止条項」
退職者の職業選択の自由に対する制約が強すぎるため、無効の判例が多いらしいです。では会社は守れないのでしょうか?

■「顧客との取引禁止」と「顧客リストの持ち出し禁止」
・「顧客との取引禁止」・・・退職者が担当していた顧客については、競合する取引自体を禁止する。
【主旨】過去の担当顧客への営業のみを禁止する。
【ポイント①「禁止期間」を設ける】
  ⇒期間は退職後2年以内とすることが1つの目安。
【ポイント②「担当顧客」に限定する】
  ⇒在職中に担当した顧客に限定する。
   ★担当外の顧客は「顧客リストの持ち出し禁止」で対応する。
【ポイント③「顧客との取引」自体を禁止する】
  ⇒「顧客に対する営業活動」だけではなく、「顧客との取引」自体を禁止する。営業活動だけではなく、取引自体を禁止することが必要です。

・「顧客リストの持ち出し禁止」・・・退職者が担当していなかった顧客については、顧客の連絡先等の持ち出しを禁止する。
【主旨】過去の担当顧客への営業のみを禁止する。
【ポイント①範囲を具体的に限定する】
  ⇒禁止する情報の範囲を具体的に限定する。
   例)たとえば、「顧客の住所、氏名、連絡先に関する情報、顧客と会社との取引内容、取引価格に関する情報」の持ち出しを禁止する。
【ポイント②私的なデバイスへの保存を禁止する】
  ⇒私用の携帯電話や私的なデバイスへの保存を禁止する。
携帯電話やデバイスは会社のものを用意したうえで、私用の携帯電話や私的なデバイスを業務に使用することは禁止しておく。

【補足】期間を限定しなくても問題ない。
顧客情報の持ち出しを禁止することは、会社として当然のことであり、退職者の転職に対する制約ではない。


■「就業規則」と「誓約書」のどちらで対応するのがよいか?
「就業規則」と「誓約書」の両方で対応することがベストです。
【理由】
・従業員代表からの意見聴取手続きなど、就業規則の作成の手続きに不備があると裁判所で効力を否定されることがある。
・就業規則の条項の内容を従業員が細かく理解していないことが多い。

■「誓約書」を取得するタイミング
①入社のタイミング
②昇進のタイミング(知り得る情報の範囲が変わるため)
③退職のタイミング


■まとめ
ここまでやれば、十分と安心してはいけません。日頃の管理や教育は続けていく必要があります。結局のところ職業選択の自由により転職そのものを止める事は難しいでしょう。取引先にこのような就業規則がある中、それを破るような人で信用できないですよ。と心情に訴えるくらいのことしかできないようです。
こう書いてしまうと読んで損したと思われる方も少なからずいらっしゃるかと思います。もっとも会社の資本を使えば何とかなるケースもあるかも知れませんが、かけた費用と時間にたいして得られるものは、いかほどでしょうか。
社員にとってここに所属したいと思うような会社であり続けることが、会社を守る上で一番重要なことのようです。