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書き文字について

人の書き文字を見るのが好きなので、お、これは、と思うと写真を撮ってるわけですが、やはり中年女性の書く文字の素晴らしさはダントツだなと思います。いま、さらっと中年女性と人ごとのように書きましたけど、思えば自分も立派な中年女性であることをすっかり忘れていました。正確に言えば、80代くらいの、そういう年代の人が書く文字は本当にレベルが高い。「私、書くの苦手なのよォ〜」と言いながら、芳名帳にさらさら名前を書いているおばあさんの手元を見るととても美しい字が書かれている。これで下手文字だったら、もう私らの年代とかありえないレベルです。写真は母親のお友達のおばさまに手作りのお菓子を差し上げた時にお礼にいただいたハンドタオルに添えられていた一文。そのハンドタオルもドイツ製のみっちりした良い生地の、名前忘れちゃいましたが、模様を織り込んであるいいやつで、私が作ったガサツなパウンドケーキのお返しにはもったいないくらい。そして、この一筆箋が添えられていた。名前の「子」のところだけが漢字なのとか、「有難う」もいい。ぐっと来たので写真を撮り、その上この手紙も保存用の箱にしまいました。

書き文字が好きといっても美文字だけが好きなのではなく、どうしようもないのも好きです。え、これは知性を疑われるレベル……というようなのも良いし、屈強な男性が書く70年代少女漫画的な丸文字もいい。以前角刈りの応援団の人が書いた文字を見ました。詳細を書くのは控えますが、文尾に「ごめんネ」と書いてあり、星だか音符だかの模様もあったので、そうとうよかったです。単なるギャップ萌えぽいけど、ギャップがない、「いかにもこの人が書きそうだ」というものも好きだし、書き文字全般を愛しています。

以前、友人が私の仕事場の机で何かを書いていて、あとでふっと見ると、机に文字のあとがありました。ボールペンで書いてたはずなのですが、ものすごい筆圧だったようで机に書いてある文字が読めるレベル。個人情報云々という言葉が登場する以前の話ですが、その彼は個人情報の流出にはとても敏感なタイプの人間でした。ですが、もう机に掘られている。いま出そうとしている手紙の相手の名前が。紙に書いてあるものは消すなり、破って捨てるなりできますが、木製の机に掘られちゃったらもうどうにもなりません。かんなかけるとか?大工さんを呼ぶとかハンズに持って行くとかしないとです。

その彼は小学校入りたての小学生が大きい文字をゆっくりゆっくり書くような様子で文字を書いていて、机に彫り込まれた文字もそんな感じでした。「ゆっくり丁寧に書きましょうね」と小学校の時、先生に習ったであろうことを何十年経っても忠実に守っているような。

それ以前もそれ以降も、あんなすさまじい筆圧の人間には遭遇していませんが、世の中には度肝を抜かれるような人がまだまだたくさんいると思うので、木彫りレベルの筆圧人の登場を楽しみにしています。