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あやとり家族56〜ロマンティックな始まり〜

幸せ期


初めて行ったパーティー、みんな楽しそうに自分を表現し
音楽に合わせて踊っている
私は何をしてよいのかわからず、踊ることなんてしたこともないから
恥ずかしいのと、特に踊りたくないのと

ただただ、お酒を飲みながら人間観察
「どお?」
一人でどうして良いかわからない私に気づいたのか、ぎゃあが声をかけてきた
「うん、何していいかわからない。なんか手伝うことない?」
「じゃあ、これもって灰皿かたしてよ」
「わかった」

私はバケツを持ってフロア中にある灰皿をきれいにして回った
なんと、この単純作業が楽しかった
踊っている人、騒いでいる人にぶつからないように動くというのも”技”がいる
自分でもセンスがあると思った

この作業が終わると、次は空いたカップを片づける
これもまた技がいる
空のはそのまま回収、問題は半分ほど入っている飲み物だ
触って”冷たければ飲み途中、緩ければもう飲んでいない”が基本だが
中にはアルコールとして摂取したい人もいる、ほらもう酔っているから
なんでもいい
そういう中途半端なコップを覚えておき2−3週フロアを回り
残っていれば回収

たかが何時間で、自分で工夫してこの二つの作業を交互に繰り返した

「XX、すごいな。また来週もおいでよ。スタッフとしてどう?現物支給で」
離婚後、お金もなくどう楽しんで良いかわからない私にとっては
とても良い誘いだった
ただでお酒が飲めて、ゲーム感覚で作業ができる
「行く」と返事をして次の週も同じことをした。


毎週のように行くようになって、あの帽子の男性と話す機会も増えていった
平日に飲みに行って偶然会うこともしばしばあった
相手は、人見知りで自分から声をかけてくることはなかったが
私の話をよく聞いてくれる人だった
当時の私の話といえば、元夫の文句のみ
最悪だ。何もしてこなかった私にはこれくらいしか話す内容がないのと
とにかく元夫にイライラして収まりがきかなかった


ある日、同じ場所で結婚式をすることになった
いつもとは違うきちんとした格好をしなければならなかった
とはいえセミフォーマルくらいの格好だ
私は、軽くお化粧をして手伝いに行った


その後のことだった。
結婚式が終わり片付けを終えた後、打ち上げをした
再婚相手となる人見知りの彼がやたらと話しかけてくる
彼の名をジンとしよう
「急にどうしたの、いつもと違うじゃん」
「そんなことないよ」
でも明らかに違う

数日後、ジンから連絡があってデートの誘いを受けた
冗談かと思って「なんで敬語なの?」と返事をした
恥ずかしさの方が大きかったから


ある日ジンは同居人と喧嘩をして家を出ていると連絡があった
泊まるところがないことを知った私は「うちにおいで」
と伝え彼を泊まらせた

過去に車中泊をしていた私は冬の寒さも知っていたし
車の中で過ごすことの大変さもわかっていたから

こういう安易なことをしてしまうのも発達障害の特徴かもしれない
男性を自分の家に泊まらせる
好意を持たれていることも知っていたが
私の中では”かわいそうだから”という理由しかなくて
普通だったら、犯されるかもしれないとか考えるのだろうけど
そういったことを思いつくこともない
ただただ”かわいそうだから”で自分の中では府におちる


彼が家にやってきて、本当に助かると感謝され
一緒の布団で寝た。一枚しかないからしょうがないこと
これも私にとっては普通のこと
何事もなく朝を迎えた

帰り際彼に
「僕と付き合ってください」と面と向かって言われた
なんか嬉しくなってしまって、返事をキスで返した
ロマンティックな始まりだった


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