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黒井千次「群棲」読書会

先日、石川県の読書会協議会主催の合同読書会が県立図書館レクチャールームで開かれた。3つの読書会に別れてその一つの「助言者」に初めてなった。(助言者にカッコがついているのはぼくに助言の資格がないと思っているから)「助言者」の他に司会者と記録者がいる。県の生涯学習課の支援も受けているので読書会協議会メンバー以外に一般市民の参加を前提にしている。

黒井千次「群棲」の中の「オモチャの部屋」を課題書に取り上げた。ぼくが選んだので「助言」にも力が入った。黒井千次の文章は素直ではなく、読者をあえて混乱させるような書き方をする。登場人物の混乱した心理が描く世界を地の文にそのまま使うので、そこで事実と読み違えてしまうのだ。その読み違えを頑なに認めようとしない読者がいた。なんとその人が当日の司会者だった。その合同読書会はぶっつけ本番で司会者と十分な打ち合わせができなかった。当然主催者側というか進行側で揉める場面を見せてしまうことになった。そのお婆ちゃんにもこれまで読書会のリーダー的存在でプライドがあっただろうことは十分承知はしていた。しかし司会者は脇役に回って欲しかったし、ぼくは黒井千次を数冊読んでいるし作家へのリスペクトも大きいことから、1回しか読んでいないお婆ちゃんを説き伏せようとした。つい声に力が入った。それに基本的に彼女は他者に同意を求めて自分はあなたと同意見だという姿勢がぼくとは対照的だった。ぼくは違いを認めてお互いに尊重する姿勢に、大袈裟に言えば文学の価値を置いている。彼女は小説を読んで解答を求めるし、ぼくは小説に正解なんてないのだと言う。彼女は喋りは流暢なので耳触りがよく、ぼくは朴訥で聞きづらい。だから当日の読書会参加者にどれだけ理解して貰えたか心もとない。

、、、最終的に予定の時間内には終わらせることができた。構わず熱く語ったことが通じたみたいだった。そこまで読み込んでいる人がいると思って貰えたみたいだった。一人の参加者の感想に、もっと真面目に読んでくればよかったみたいなことを言ってくれたからだ。

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