見出し画像

自分に似た小説家をさがす

ぼくにどれだけ小説を書く能力があるか本気になって試したことがないから、お手本にしたい作家とか自分と思考回路や感情表現が似ている作家がどれほど重要かは分からない。村上春樹はある人の説によると、「赤頭巾ちゃん気をつけて」の庄司薫のことを後を継ぎたいくらいに重要視しているらしい。小林秀雄は「新・考えるヒント」を書いた池田晶子女史から、なりきりの標的にされ、合体したいほどのラブコールをされたらしい。

ぼくの場合これほど身を入れて吸収したいと思わせる作家や批評家に出くわしたことがない。少し前まで、黒井千次かなと思っていたがどこか違う感じがした。もう少し探す必要がある。そこで本棚を眺めて色々買いためてある本を取り出してみていたところ、福永武彦に目が止まった。過去に「死の島」を読んで何となく女性への接し方が似ているような感想を持ったが、まだ未読の「風土」の解説文を読んで読みたい衝動を感じた。ゴーギャンの評論も書いているし美術への趣向もあって「同類」感がありそうに思える。中村真一郎や加藤周一は少しインテリっぽくてぼくにとっては「上」の人だ。そういえばこれまでインテリで自分より遥か上の作家ばかり読んできた気がする。これまでは上昇志向だったのかもしれない。甚だ高慢で恐縮なのだが、福永武彦は上にいなくて自分の横にいる感じがする。その感じを信じてみよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?