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閉鎖病棟の実態6

ある夜、共用のテレビでミニオンを観ていたときのことです。男性スタッフが「本当に21時でこれ終わるの?」と何度も聞いてきました。
「見てもいいけど消灯になって終わってなくて悲しい思いしても知らないよ」とのことでしたが、私たちも子供ではありません。
きちんとした1人の成人として扱われている感覚は全くなかったです。
ご飯が正確な時間に運ばれてくることもなく、呼びかけがあったわけでもないので空気で察していました。醤油やスプーンが用意されていることも自分で気づいて知ったことです。当時は何もわからず味の薄いおかずでどうやってご飯を食べようか、味噌汁に入れて食べたこともありました。
いつ出られるのか、本当に出られるのかもわからないまま、ただただその毎日が繰り返されていくのです。
私が絶望している間にも英語で携帯を使っている女性が特別室に移ったりしました。特別室には洗面台もあり、鏡もありました。女性はあまり部屋から出て来なくなりました。
男性は髭剃りが許可されているのにも関わらず女性はムダ毛処理など許可されていませんし道具もありません。
なのでだんだん眉毛や体毛が気になるようになってきました。私はダメ元で毛抜きを借りにいくとあっさり貸してくれました。
それで「どうせ監視されているのだから」と共用スペースの洗面台の鏡を使って脇毛を抜きました。
すぐにスタッフが止めにやってきたのを覚えています。
そのとき私が言ったのは、「どうせ監視してるくせに」
部屋に戻って毛を抜く作業で暇を潰すことにしばらく没頭していました。

ストレスは限界で独り言を言い続ける若い男性患者にもイライラしていた頃のことです。
「イライラするなら俺のこと蹴っていいよ。俺さ、当たられるの慣れてるんだ、母さんにもされてきたし」と言い、私の後をついて回るのです。
段々と舌打ちしたり「うるさい!」と叫ぶようになっていました。
不機嫌でも傍に寄ってくるそいつが鬱陶しくて仕方がありませんでした。もちろん蹴ったりもしましたし、「なんで自分から言ったのに避けるんだよ」と言ったこともあります。
あの場では強い者が勝つんだということがわかってきました。
密告されないように監視したり、不利になりそうになったらスタッフに「この人が付き纏ってきてすごく困ってるんです」「ずっと叫び続けてうるさくてなんとかしてください」など私も訴えるようになっていました。
あるときには「いい加減にしないと頭から水ぶっかけるよ」「それでもいいよ、やって…」というやりとりがあり、本当に頭に飲み水をかけたこともあります。しかしそういうことに関してスタッフは何も言ってきませんでした。
どんなにくだらないホストがついても水をかけたことはない私がそこまでするのは自分でもショックでした。2度と元の性格には戻れないとも。

個室内で熱唱しているその患者に「下手くそは歌うな!」と叫んだこともあります。
しかし、なぜか私にも病棟移動の話が舞い込んできました。
持ち物や衣服がどうなったのかはわからないけれど少し開放的な病棟に移り、部屋に鍵はかけられなくなりました。また朝6時から20時までの携帯の使用許可が下りました。
私はその携帯で必死にTwitterにログインし、友達と連絡することを試みました。まずDMでどこに入院させられているかを伝えたのを覚えています。
しかし使用時間を5分でも過ぎたら「5分も過ぎてるよ!」と言いにスタッフは来ました。
自分たちはといえば21時消灯にも関わらず、20時半に全ての電気を消したりしていました。どうしてそういったことが許されるのでしょうか。
とにかくここの職員は自分が楽をすることばかり考えている、と思いました。

他にもあります。詰所には鍵がかかっていて充電してもらうにもノックして対応してもらわなければならないのですが、誰もおらず「ちょっと待って!」とイラついたように言われました。
別のスタッフが来たので再度ノックすると先ほどの男性スタッフから「ちょっと待ってって言ってるしょ!」と怒鳴られました。
別のスタッフが対応しているのを見ても謝罪の言葉もありません。

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