宿泊施設が売上を伸ばすために意識すべきことと、その基本戦略
今回の記事は、ゲストハウスを始めたばかりのオーナーさんや、新米マネージャー、宿泊事業を始めたばかりの経営者向けに書いています。
ある程度の宿泊施設の運営歴がある人にとっては、当たり前のことが多くなるかと思いますが、とはいえ、知っているのとできているのは別物ですので、うまくできていないという施設も多いのではないでしょうか。
売上は 客単価 × 客数 × リピート率で決まる
まずは基本的なことから始めたいと思います。
普通のビジネスなどでは客単価×客数×リピート率が売上を構成する要素であり、3つのうちのいずれか、またはすべてを上げるのが売上を伸ばすための基本となります。
宿泊業の場合は、リピート率のところが宿泊数になりますので、当然のことながら客単価と稼働率(客数と宿泊数)をバランスよく、最大限まで高めるのが宿泊事業において目指すべきゴールとなります。
ちなみに稼働率の話になった時、宿泊業界ではADR (Average Room Rate)という言葉がよく使われます。これは平均客室単価の意味なのですが、ホテルと違い、ドミトリーと個室、グループルームが混在するホステルやゲストハウスでは少し意味合いが変わってしまうため、私はあえて客単価というワードを使うようにしています。
客単価と稼働率のバランスを考える
よほどブランディングに成功していない限り、一般的には価格を下げると稼働率は高めやすいですし、価格を上げれば稼働率は低くなる傾向にあります。
しかし価格を下げて少し稼働率が上がった時にどれくらいの利益があがったのか、かわりに失ったものはないかという点には注意したいところです。
例えば、理論上3,000円で30人の客が入るところを、40人入って欲しいからと2,500円まで値下げしたとします。
この場合
3,000円×30人=90,000円
2,500円×40人=10,0000円
お客様は10人増え、売上は10,000円伸びたことになります。
それではさらに値下げして2,000円にしたとして、50人のお客様が入ったとしたらどうでしょうか。
2,000円×50人=10,0000円
となり
2,500円×40人=10,0000円
と売上は変わりありません。
1円でも売上が伸びたら満足してしまいそうになりますが、この時に見えないコストが発生していることを見逃してはいけません。
例えば、10人、20人とお客様が増えたことにより、チェックインとチェックアウトなどのお客様対応や、リネンや清掃ベッドメイキングに対する負荷は増え、規模感によっては共有スペースが混雑することによりお客様の利便性や快適性が損なわれている可能性もあります。
また、金額をさげれば下げるほど、金額だけで選んで来たお客様が増え、客質が悪くなるリスクもあります。
このように見えないコストまで意識して考えると、無意味な値下げがマイナスでしかないことがわかるのではないでしょうか。
戦略的に考えることが苦手で、現場感覚が乏しい経営者が陥りがちな部分なので気をつけてほしいところです。
意味のない値下げをしない
どんなビジネスにも言えることですが、値下げは易しく、値上げは難しいです。売上を伸ばしたいからと安易に値下げをするのは、もっともやってはいけないこと。
頭を使わない単純な価格競争に足を踏み入れてはジリ貧になるだけです。
価格を下げる場合は想像力を豊かに、戦略性を持って取り組む必要があるのです。
リードタイムを意識して先々の予約を取る
リードタイムとは発注から納品までに必要な時間のことであり、宿泊業に関していうと、予約が入ってからチェックインする日までの日数になります。
リードタイムは日程(季節・曜日)や地域(気候・イベント)によって異なるため、自分の運営している宿泊施設の特性をしっかり把握したうえで、戦略的に取り組むことが重要となります。
例えば、GWの予約はどれくらい前に一番埋まりやすいのか?
もっとも埋まりやすいタイミングで、適正な値段でベッドが問題なく売りに出されているかはとても大事で、チェックイン日までにいかに効率よくベッドを埋めていくゲームだと考えてみるといいかもしれません。
もちろん高く売れるタイミングまで粘って利益を最大化するという戦略もあるでしょうが、売り逃す可能性もあり、ギャンブル的な発想でもあるため、個人的にはあまり推奨していません。
戦略的かつ効果的な値下げをする
稼働率を上げるために、価格は重要なファクターですので、値下げ自体が全てがダメなわけではありません。
値下げをするのであれば、それなりの理由があるべきなのです。リードタイムを意識し、戦略的に行う値下げとして早割があります。
早割プラン (キャンセル返金不可)を作成する
例えば、早く予約をしてくれた人には一定の割引率を効かせるのはもっとも一般的なプロモーション手法です。チェックイン日より30日前、60日前、90日前などに予約を入れてくれた場合には、それぞれ一定の割引率を適用します。
チェックイン日に満室に近い稼働にするため、早い段階から未来の予約を確保するのが理想なのです。
この時に注意したいのが、早割はキャンセル返金不可のプランにすることです。3ヶ月前に予約を取って、キャンセルフィーの発生しないギリギリのタイミングでキャンセルされては意味がありません。
キャンセル返金不可では思ったより入らない場合は、キャンセル可否の2つのプランを作り、それぞれの割引率を変えます。
連泊割
ベッド単体で稼働を考えた時、10人が1日ずつ計10日間泊まるのと、1人が10日間泊まるのでは稼働率は一緒です。
10人×1日 = 1人×10日間
稼働率は一緒
この場合、稼働率は一緒ですが、前述したように見えないコストとして、9回分の清掃ベッドメイキング、チェックイン、チェックアウト業務の手間がかかります。
宿泊施設としては連泊してもらったほうが業務の負荷が減るだけでなく、お客様との距離感も縮めやすく、満足度を高めることもできるのです。
連泊数は地域特性と季節によって大きく異なるので自分の運営している宿泊施設のエリアにおいて何泊してもらえればいいのかを考えて設定するといいでしょう。例えば平均が2.6泊であれば3泊以上で○%割引、5泊以上な○%といった具合です。
なお、連泊割の場合もキャンセル返金不可にしていますが、すでに泊まっているお客様の日数調整などは現場で柔軟に対応するようにしています。
さいごに
宿泊施設の地域や規模感、競合などによっても取るべき戦略は大きく異なると思いますし、他にも細かい戦略は沢山あるのですが、今回はどこの宿泊施設でも通用する基本的な部分だけ触れてみました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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ばしょう(@hostelmanager_b)でした。
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