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エッセイ的な記事

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2021年9月の記事一覧

我が理想のシャングリラは美しいか

街の写真を撮るのが好きである。 カメラ好きの人には怒られるかも知れないが、 当方、一応一眼を所持しているものの、機材への拘りは殆ど無い。 只、スマホでは味気無いので、気分を乗せるために一眼を抱えているだけのことである。 街を撮るのは、近くて安く済むという経済的理由もあるのだが、 一番はやはり街という場所が好きなのだと思う。 特に、街の陰に隠れがちな汚い部分が好きである。 それは汚れた路地裏であったり それは乱雑に入り組んだ配線であったり それは場違いに置かれた自販機であっ

蝉の断末魔

九月上旬の午後七時を過ぎた頃だった。 移り行く街の景色は容赦なく、今年の夏も残り僅かと喚く。 秋の虫が鳴いている。 どこからともなく金木犀が薫っている。 もうすぐ夏が終わってしまうという特に謂れのない焦りが胸中を支配する。 徒に流れる時間の速さに焦燥し、 自身の進歩の無さに憔悴する。 でも、まだ夏は終わっていない。 未だ厳しい残暑を盾に、私は醜く夏に執着する。 コンビニで弁当を買って、 大学に戻るところだった。 信号が青に変わり、横断歩道を渡る。 横断歩道の半

漢字に内包される情景の奥行というか、ダイナミクスというか。

書き言葉について。 文字を書くとき、言葉は出来る限り漢字で書くようにしている。 日常生活に於いては常用漢字以外はひらがな表記(ここはひらがなの方が意味が通じやすいと判断したためひらがなのまま)が推奨されている。 特に新聞においては新聞常用漢字表によって使用できる漢字が決められており、其処に含まれない漢字はルビを振る、またはひらがなに直すという処置が必要となる。しかし括弧書きで読み仮名を振るのは文字数が嵩む為、掲載面積が限られた新聞という媒体においては不利に働くことが多いた