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天職だとしても私は誰にも言えなかった

私が自身の天職だと思ったことは悲しいことに親に言い辛いキャバ嬢というものだった。

大学を出てぷらぷら働いていた私は、流れ流れ着いてキャバ嬢になった。
色々な考えや価値観がある中、夜の仕事とは決して大きな声で両親には言えなかった。
しかし、現役を退いて一般職についてから思いうのだが、あれがきっと天職というものだと思う。

昨今、とある有名人が銀座のクラブで粗相をしたことが大きく世の中に出てしまったが、私はありがたいことに、新人キャバ嬢の時代からそういう事件に遭遇しなかった。
私のお客様というのは、私を大事にしてくださる方が多く、そういう方々しかいなかったので、私もお客様とはいい関係が築けていたと思う。

天職というものは、自分の「できること」、「稼げること」、「苦痛ではないこと」がうまくマッチしているもののことを指しているのでは個人的には思っている。
私にとってキャバ嬢はまさにこれであった。
自分にとってできることの範囲内に、稼げる、苦痛ではないがうまく入っていたのである。
私にとっては、キャバ嬢がちょっと面倒だなと思うことが全く面倒ではなかった。
毎日のラインや電話のやりとり、お客様とのご飯、お客様からのプレゼントや浴びるほどのお酒など、私的には楽しかった。
もともと、人と話すことが大好きだったし、人とお出かけすることも苦ではなく、最初は苦手だったお酒も最終的には大好きになった。
そして、天職だなと思った一番の理由は、自分が勉強家であるという一面を見つけられたことだ。

キャバ嬢新人時代。
何もわからなくて最初は可愛がられたが、3ヶ月もするとそうも言ってられなくなった。
私は嫌いなはずの勉強を率先して行っていた。
収集に直接関係があるという面も大きかったが、お客様とお話をするとき、小学生以来の知的好奇心が呼び起こされた。
新聞もたくさん読んだし、お食事だけだった同伴がいつの間にか博物館、美術館とどんどん行動範囲が広がっていった。
そうするとちょっとしたことに気がつくようになり、どんどん新しいことを学びたくなったのである。
私はキャバ嬢というか、夜の世界はどちらかだと思っている。
堕落するか、向上するか。
中間層が全くいない世界。
夜の世界は堕落しやすく、また、誘惑も多い上に危険だ。
そんな中で、売り上げもキープしたまま、危ない部分もそんなになく、好き勝手できていたことは天職だと思う。

こんなに天職だと思っているのに、私は胸を張って天職だと言い辛い。
働いていること自体、両親は知らなかったと思う。
少し、寂しいと思う。
しかし、私は許されることならキャバ嬢が天職だったと言いたい。
私の人生で一番楽しく仕事ができ、一番稼げて、一番成長できた仕事は、キャバ嬢だったのだから。


#天職だと感じた瞬間

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