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イキミミ49

午後のロードショーが好きだ。

これを見るのは、大抵は風邪などをひいて平日の昼日中に寝床に横になりながらボンヤリと眺めている、といったような状況が多い。

微熱とアスピリンに輪をかけて昼食後のボーッとした頭で、マッタリとしたアクションを眺める。何だか白昼夢を見ているような奇妙なトリップ感があって、時間軸の外にいるような麻薬的な魅力がある。

数年前、アメリカの作家ローレンス・ブロックのアル中探偵マットスカダーシリーズの初期の名作、「八百万の死にざま」を映画化した作品をそこで見たことがある。
内容はまるで別物だし、たぶんB級の烙印を押されているのかもしれないが、幾つかのシーンは妙に印象に残ってしまっている。



以来自分の中ではマットスカダーはジェフブリッジスで再生されるようになってしまった。リーアムニーソンより絶対ジェフブリッジス。Tシャツにジーンズのカジュアルなスカダー。

そんなマットスカダーシリーズの最新作が2年前に発売されていたようだ。

タイトルは「石を放つとき」

自分の中ではごく初期の「慈悲深い死」がスカダーシリーズのピークで、それ以降の作品は正直あまりピンとこなくて、とりあえず一読して終わり、という感じになってしまっていた。だから新刊のチェックもまったくしていなかった次第。

この本、文庫化されていない初期の短編がいくつか合わせて収録されている。
それをまとめて読めたのは実に至福の時間だった。恥ずかしながら初見の話ばかりで、読み終えてしまうのがもったいないって感覚。

そんな感じだから目下最新作の表題作はあまり期待してなかったんだけれども、聞き込みのシーンの書き込みが多くてすごくよかった。老いてなお健在って感じで。

自分にとってスカダーシリーズの魅力は、聞き込みのシーンとバーもしくはAA(禁酒会)の集会のシーンだ。

著者の描くマンハッタンという街の魅力と言ってもいい。

それに尽きる。

行ったことないけど。

かようの如く、耳鳴りを患ってから本ばかり読んで過ごしている。
奇しくもコロナ禍で世の中が動いてなかったからあまり感じなかったけれども、少しずつ世界が回復していく中で自分だけ取り残されているようにも感じる。
まるで時間が棚上げされて質に入れられてしまったようだ。
いずれそれを取り戻せる時が来るのだろうか?
それとも思い出したくもない時間だと思ったりするのだろうか?

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