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イキミミ56



日曜日にとなり町の上尾市を訪れたのであった。
埼玉県民以外では耳馴染みのない地名だと思うけれども、名門スタジオ「サウンドクルー」の所在地と書けば、あるスジの界隈ではピンとくる向きもいるかもしれない。外観は少し年季の入った、どうという事もなさそうなスタジオである。しかしここでレコーディングやマスタリングを行ったバンドを挙げると、知っているだけでもハイスタンダード、くるり、endzweck、for lifeなどなど
枚挙にいとまが無い。先だってもunburnableがマスタリングを敢行したようである。

まあ今回ワタクシが訪れた場所とはとりあえず関係ない。サウンドクルーとは反対側、駅東口から徒歩5分。氷川神社の向かいのとあるビルである。2階から上は駐車場になっていて好都合だ。
ワタクシの住む蓮田市から電車で上尾に向かうとすると、蓮田駅から大宮にまず出て、そこから高崎線に乗り換えなければならない。少し回り道をする感じである。車であれば空いていれば20分程度で着く距離だ。
車を停めて、暗い階段を降りる。
1階のフロアは、中心にビルの表から裏側まで通路が通っていて、まるでトンネルかアーチのようになっている。その両側に何軒かのテナントが入っているといったつくりだ。

テナントの大半は居酒屋やバーで、昼下がりの時間帯はシャッターが降ろされ、うす暗い回廊となっている。
その中の1軒に、最近音楽スタジオができたのである。このスタジオ、なんと完全に無人で運営されているのだ。

エントランスのドアは常時施錠されていて、予約した時に知らされた暗証番号を入力して入る。


入るとカウンターにラーメン屋の券売機のような機械があって、ここで利用賃を払う寸法だ。カウンターにはピック、ドラムスティック、電池など、いわゆるスタジオにおける「アメニティグッズ」がひと通り揃っていて、これも券売機で購入できる。

まあそんなわけで、耳鳴りを患ってから1年以上振りにビビりながらスタジオに入ってみた次第なんだけれども、様変わりしたそのスタジオの佇まい、スタイルの方にまずビビってしまったという、今回はそういったお話なのであった。



なんとも便利な世の中になったもんだ、といった感じだが、今後こういったスタイルが増えていくとしたら、スタジオのスタッフはいったいどこへ行ってしまうのか。

そんなことを思う休日。

ワタクシは別にバンドに所属しているわけでもないし、完全なるひとり遊びという認識で、バンドキャンプにあげている理由も特に聞いてもらいたいという気持ちからでもなくて、ただ年季の入ったパソコンがいつ昇天するか分からないので、ネット上に保存しておきたいというまでである。

まあ聞いてらんないでしょ。

でもまあ、耳鳴りを患いながらもこういった遊びもできているよ、という事。

思い返すと、耳鳴りが聞こえだしてからの数週間というものは、不治の病にかかったと宣告されたときみたいな混乱状態に陥った。──怒り、否定、あきらめ、悪態、鼻かぜ、猥雑な手ぶり、不安、突然のむちゃ食い。

破損して欠けたものが完全な姿を取り戻す事はないのだけれども、しかし欠けているなりの楽しみ方もあるよと。

もちろん以前のように裸耳ではシンバルの鋭角的な刺すような音はちょっとキツいけれども、ご安心めされ、ガンシューティング用のイヤーマフ(!)を装備すればなんという事もない。

TCIについては、とりあえずアマゾンで1800円で60コ買ってしまった電池を使い切るまでは使うつもり。

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