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オレゴン州マドラス 1984年

トランプ大統領の支持層としてクローズアップされる白人労働層や中産階級について書かれたものを読むたび、私がどうしてもイメージしてしまうのは、高校2年生、16歳のときに1年間交換留学でホームステイした、オレゴン州の田舎町、マドラスの風景と人々です。1984年当時の人口、2250人。

カバー写真の大通り、坂を上りきったあたりを右に入った町はずれにホームステイしていました。(この写真はgoogle mapsから引用しています。)今は人口も6000人まで増えたようで、街並みも当時よりずいぶんにぎやかに見えますね。そういえば、郵便は家まで配達に来ないので、郵便局留めで、取りに行ってました。

東京の都心で育ち、大学までエスカレーター式の私立高に通っていた私にとって、この町で過ごした1年は、ひたすら「未知との遭遇」でした。日米間のカルチャーギャップではなく、都会といなかのカルチャーギャップです。

いちばん近くの映画館は、40マイル(60キロ)先。

同級生が何人も妊娠出産してました。校則に「学校の敷地内でキス禁止」って書いてあったけど、みんなしてた。

町の高校を出たあと、とりあえず大学やcommunity collegeに進学する人はけっこういますが、4年制大学を卒業するのは100人中5人くらい。

同級生の女の子たちが、真剣に将来を語り合っていました。「高校卒業したら、少しは都会で暮らしてみたいけど、こういう小さな町に戻って生きていきたいな」

まだ16歳じゃない、もっと夢とかないの?とびっくりしたり、まあ、こういうところで生まれ育ったらそう思うのが自然なのかもなあ、と納得したり。私が自分の進学希望やその後の夢を少ししゃべっても、ぽかーんとされて、孤独感でいっぱいになったり。

同級生との印象深い会話があります。
"Makiko, do you like the US?" (マキコ、アメリカは好き?)
- Yes, I do. (好きだよ)
"Then, you should become American." (じゃ、アメリカに帰化すればいいじゃん)

何たる自己肯定感、というか無邪気なほどに、外国人へのリスペクトがない。

ここの郡は、大統領選では、1984年以降ずっと共和党支持です。1回だけ、クリントン大統領初当選のときだけ僅差で民主党でした。2016年の大統領選も、ばっちりトランプ支持。

Make America Great Again というトランプのキャンペーンスローガンをきくと、あの時の同級生の無邪気さを思い出すんです。

オハイオやケンタッキーといった、Rust Beltとはまたずいぶん違うんだと思いますけれど、私の「アメリカのいなか」イメージの起点になっています。

(2016年11月16日の Facebook投稿を転載しました。)

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