何者でもない、郊外育ちの揺籃期を想う。
ミスドの2階席、
店内チャンネルで流れるのはビートルズのカバー特集。
フーーンと背景に押しやるつもりが、やたらと今にチューニングばっちり。
Ob-La-Di, Ob-La-Da
Across The Universe
Lucy In The Sky With Diamonds…
爪先から頭のてっぺんまでサーっと血が騒いだ。
隣席からのアドリブは下校途中の女子高生たちの何げない会話、
ちいさな子どもとおかあさんたちの他愛ない会話、
階下の接遇の様子もチラホラ。
大きなニュースにはならないような時間、
余所者にも開かれたオアシスはミスド一択、
主に地元の人たちのための駅前。
バス待ちロータリーに降りたら、
やはり学校帰りの男子高校生(グループまたはソロで)、
バギーにたくさんの荷物を積んだ若いおかあさんと
サラッサラのおかっぱ髪の男の子
(このあと出航する瀬戸内平家物語ルートになんてぴったりなの)、
よく磨かれた革靴のフットワーク軽そうな足を組みかえるナイスミドル
(出張かなー)、
などなど。
都会と田舎のあいだ、
人工と自然のあいだ。
こういう場所に、
だれかにとってはだいじなひとりひとりで、
大勢にとっては何者でもないひとりひとりの、
とくにまだ社会に出ていない子らの、
これからに向けた揺籃期を感じるのはわたしの郊外っ子らしさかとおもう。
いつだって物足りなかったのはなんだったのかなぁ。
片想いのせいだったのか、ホルモンのバランスのせいだったのか。
「なんかさー」と、
まだ本意からは離れているような声で、
ブツクサ話してるJKたちの会話を未だ身近に感じながら、
あの頃にタイムリープする。
そうだよ、本意にはそうやって、ちょっとずつ近づいてゆくんだろうね。
バス待ちの、サラ髪の男の子と彼のお母さん、そして革靴ナイスミドルもフェリーのシャトルバスに乗ってきて、神戸で下船するまでいっしょだった。
旅人は、少しまわりから浮いて目に留まるのかも。
アウェイな駅前で見た景色、浮かんだこと。
4ハウスとはどういう場所か、考察のひとつとして。
何者なのかは近くにいかないとわからないかもしれない。
まだ何者でもないかもしれない。
けれども、振る舞うための場は与えられている。
星の一葉 ⁂ 光代
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