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生きてるのに死ぬということ

大晦日。朝っぱらから半身浴をして、パックをして、カフェラテを入れて(そら粉のやつよ)、スマホでネットサーフィンして、くぅーーーーー!と休みを満喫していたらある漫画が目に止まった。

漫画家きくちゆうきさんの『100日後に死ぬワニ』だ。

数日前からTwitterで話題になっていて、知っている人も多いかもしれない。どんなものか説明するよりも直接みてほしいので、ちょっとご本人のTwitterから拝借して貼らせていただこうと思う。

これが『100日後に死ぬワニ』のはじまり。

(クリックしたら読めます)

まず、タイトルの“100日目に死ぬ”をみて、どんなシリアスな物語が始まるんだろうと思ったら、4コマ仕立てで、ワニくんがテレビを観ながら楽しそうに笑っているだけ。んん?と思って読み進めると、

1年待ちの布団を通販で注文したり、赤信号に気づかず横断歩道をわたる小さい子にハラハラしたり。ワニくん、全然死にそうじゃない。

なんらかの病気だとか、バチが当たっても同情できないくらいの悪事をはたらくとか、いつ死んでもおかしくない絶望的な環境下で生きているとか、そういうわけでもない。

ここでドキッとする。このワニくん、もしかしてこのままなんてことない日常を過ごして、100日目をむかえちゃうんじゃないか?

今日(12/31)時点で、19日目まで更新されているが、変わらず淡々とワニの生活が描かれ続けている。ワニくんの生活、というかもうこれは「わたしたちの生活」と言っちゃっていいくらいに内容は身近なもので、友人とラーメンを食べたり、なにもしないまま1日が終わってしまったり、好きな漫画の続きを楽しみにしたり、実家の母と電話したり、バイト先の先輩にちょっと恋心を抱いたり、とそんな毎日が続いている。

あまりに悪気のない、ただただ生きるだけのワニくんに、読者も「ワニくん死なないで」「なんで死んじゃうの?」「死なせないで」といった同情する声が多い。

一方で、これは自分たちのことなのかも、という声もある。

「わたしたちも100日後に死ぬワニなのかもしれない」
「もしかしたら今日が100日『目』かも」
「この100日目が更新されるとき、自分はちゃんと生きているのかな」・・・

わたしも同じように考えた。生きている限りみんな死んでしまう、それには病気、事故、事件などの理由や原因があることもあれば、ある日突然ぱたっと、自分が死んだのかも分からないような形(もちろん死因はあるのだけど)で命を終えることもある。健康な自分は、いま無事に年越しそばを食べる気満々だけれど、100%、もうぜったいに来年をむかえられるかと言えばその保証はどこにもない。

個人的な話になるが、約3年前に大好きな祖父が亡くなった(そのときのブログが残ってた、日記としてつけていたもので拙いものですがすみません)。

東京へ
本当に弾丸だった
でもおじいちゃんに会えてよかった

 突然なのにみんな色んなとこから駆けつけて
めったに集まらないわたしたち親族だけど、一瞬で集めちゃうおじいちゃんは本当に愛されてるなあ

 顔を思い浮かべても笑顔のおじいちゃんしか思い出せない
というか、もしかしたら笑顔のおじいちゃん以外わたしは知らないのかも
いつも会いに行くと、みかん持ってけ〜とかスイカ持ってけ〜とか
大切に作った果物をもたせてくれてたなあ
おう、来たか〜ってにこにこしながら迎えてくれてたなあ

 会えないってすごく悲しい
もっといっぱいおじいちゃんの話聞きたかった
会えなくなった途端に、人ってどうしても関わりたくなって
学ばないというかなんというか

 もうおじいちゃんの姿はこの世のどこにもないんだなあ
会えないだけじゃなくて存在しないんだもんな
確かに生きてたのに、居なくなった途端に、元々存在してたのが自分の想像の世界の中だけだったみたいな感覚
そうじゃないと、居たものが居なくなるっておかしいし、認められない

 つくづく思うけど
長生き、なんて言葉はないよね
これだけ生きたら満足、なんてものはない
80生きたって100生きたってお別れがきたら
まだ早い、今じゃないって思う
たぶん200生きてもそう
大切な人っていうのは何歳でもずっと元気に生きててほしいもので
長く長く生きてもまだ足りないよー

 いつお別れが来ても悔いないように、会える人には会う、と言いたいところだけど
どんだけ会ってもどんだけ尽くしても悔いっていうのは残るものだよね

 そうやってなにかのお別れが来るたびに
色々考えさせられながら教わりながらを繰り返していくんだろうな

わたしはあのとき、もっとちゃんと生きようと心から思ったのに、またそのことをすっかり忘れてた。

いや今年だって、嫌な事件を知るたびに「いつ死ぬか分からないんだもんな」って本心で思っていたのに。今日の今日はまたリセットされて、今年お世話になった人とか来年もまた会いたい人とか誰にも感謝も気持ちも伝えずに、大晦日を楽しもうとしていたな。

そうだ、ワニの話だった。

『100日後に死ぬワニ』、実際にどんな形でこれから物語が進んでいくのかは分からない。もしかしたらこれから次々とワニくんの死に向けて伏線がはられていくのかもしれないし、このままずっとこれまで描かれていたような感じで日常が更新され続けて、100日目になんらかの理由でパタリと死んでしまうのかもしれない。

分からないけど目が離せないし、せめて100日目までずっとわたしに「いつ死ぬか分からないよ」という危機感は持たせ続けてほしいと願う。じゃないとまたすぐ忘れてしまうから。


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