3.外側だけしか知らないまま

同じマンションに住んでいますので年末に亡くなったことを聞いて驚きました。

お亡くなりになる一週間ほど前でしょうか。ゴミを出すのにエレベーターで一緒になりました。「寒くて雪が降りそうですねぇ」なんて軽く言葉も交わしたと思います。ええ、とか、ねぇ、とか困ったような顔で短く答えられただけでしたが。いつも穏和で感じのいい方でした。

我が家は夫と私、中学1年生の娘、小学3年生の息子の4人家族です。あそこのお宅はご夫婦で静かにお住まいでしたし、お留守のことが多かったので特に親しくしていたわけではありません。会えば挨拶を交わす程度で。特に旦那さんは声を聞いたことがないくらい静かな雰囲気でしたね。

何があったんでしょうか。警察も来ていましたよね？ああ、家で亡くなると必ず来るものなんですか。物騒な時代で、何があってもおかしくない世の中です。それでもまさかうちのマンションで事件が遭ったなんて…。え？事件ではないんですか？そう、、、まだわからないんですね。でも人が一人亡くなっているわけでしょう？事件でなかったら、これ、一体なんなんでしょう？もし、あの部屋を売りに出すとしても、人が亡くなっているとしたら価格帯にも影響がありそうですよね。

お子さんがいらっしゃらないですし、初老と言うには似つかわしくない熟年のご夫婦ですもの。旦那さんも定年まであと僅かで、有名企業にお勤めで退職金もたくさんもらえるはずでしょう？ゴルフバックを車に積んで、休日早くに出かける姿もよくお見掛けしましたよ。

定年後の暮らしは、優雅に過ごせるはずだったのでは？
うちはまだそんな日が来るまでに15年ほどありますが、二人の子どもが大学卒業するまで貯蓄も難しい。もし子育てから解放されたら？どうでしょう。貯蓄があれば、どこかに旅に出たいかなー。あの旦那さんはもしかすると、永遠に戻らない旅に出られたのかもしれませんね。(45歳主婦・同じマンションの住人)