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インドネシアの絣織り、イカットを見る。

東京都墨田区にある「たばこと塩の博物館」で、
インドネシアの絣織りこと、イカットを見てきました。

墨田区といえば、スカイツリーが大迫力で見られるわけですが……
博物館までは最寄り駅から徒歩10分ほどかかるということで、
スカイツリーどころじゃない。
道に迷わないようナビとにらめっこしながら必死に歩きました。

その甲斐があり無事に到着。

立派な建物に入り、さっそく二階の特別展示室へ。


入った瞬間、空気が変わる。
展示冒頭にある「あいさつ文」を読むと、主催者側が伝えたいことがたくさんあるなかで、今回の展示にぎゅっとつめこんだのだろうなと思った。

会場は思ったよりたくさんの人がいるのに、静かだった。

その静けさが、イカットの存在感をさらに引き立てていた。

私は手織りの布を見るのが好きだけど、作り方には全く詳しくはないので、
絣(かすり)織りと聞いても「?」という感じだった。
けれど作り方の説明や実物を見る限り……
先に糸を染めて、頭のなかの構図に従って織っていくとある。
糸を染める際、あらかじめ縛って色が入らないようにしたり、
グラデーションをつけたりしているのを見ると、それがどんなに難しい織り方なのか、じわじわと分かってきた。

イカットには、いろんな模様がある。
まるで絵を描くように、布には幾何学模様や、狩猟対象となるクジラ、マンタ、そして船や人、鳥(鶏)などが表現されている。
染めた布に描くのだって大変なことだと思うのだが、それを織って表現しているのだから……ものすごい技術だ。

また、織り手によって人や生き物がリアルだったり抽象的な表現だったりするのも見応えがあっておもしろい。

自分のイカットはこんなに緻密でかっこいいんだぜ、とか。
いやいやわたしのは抽象的だけどこれが芸術ぽくていいのよ、とか。
そんなことを自慢したりするのかな……と、勝手に想像が膨らんだ。

布のベースの色は染料の茜の落ち着いた赤茶色や、
黒に近い藍色などで、はじめてみるのにどこか懐かしさを感じる風合いがまたよかったのかもしれない。

ああ、見に来てよかったと心から思った。


せっかく来たので、常設展示も見ることにする。
印象に強く残ったのは、たばこの展示室。
たばこの歴史と文化を紹介しているのだけど……
展示室に入っていきなり目に飛び込んできたのは、マヤ遺跡の壮大なレリーフ。
「え、なぜ?」と数秒固まるも、これが人の歴史上、最初に描いたたばこの起源だということを理解する。

たばこ……というと、もはや悪い印象しかないものだと思う。

私の父も祖父も、たばこが好きでやめられなくて(いや、やめる気などなくて)肺がんで亡くなっている。

けれど、私は父がたばこを吸う姿が好きだった。

海で釣りをしながら、おそらく日常のあれこれを考えながらたばこを吸い、
海と潮風に癒やされて、家に帰る頃には元気になっている父の様子を見るのが子どもながらに嬉しかった。

大切な人に、わざわざ吸ってほしいとも思わないけれど、父が好きだったものを否定する必要もない。

もう少し、自分が大丈夫になったら、父にたばこをお供えしてあげようかなと思った。


最後までお読みくださり、ありがとうございます。

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