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無限の猿言葉-バンドメンバーに手切れ金を支払わされて白髪三千丈な話

私は意外と人に怒らない。これは本当。ただしもちろん限度はある。ここでは「エモいけど過言」レコーディング時の私の苦悩をお話する。気になっていた人もいるかもしれないし、そうでなくともエンタメにはなるかと思われる。

ここに書かれるのは私と(元)バンドメンバーに関する話である。

こちらの(元)バンドメンバー(以後Aとするがこの記号に他意は無い)は私の高校の同級生であり、軽音楽部および卒業後も3年以上バンドを組み共に活動をしていた。高校時代には「こいつ時間にルーズだし責任感ないやつだな〜」と評価していたのだが、バンド活動に従事する人間とは概ねそういったものであるので特別問題児という訳でもない。練習に1時間遅れて来ることなんぞ茶飯事であった。この程度ではそう怒りはしない。

フェイタルな問題が起こったのは、バンドで会場を抑えて自主企画イベントを開催しようと企画していた最中である。当時の状況を軽く説明する。

我々バンドメンバーは、この企画の告知発表とタイミングを図って「エモいけど過言」の音源をサブスク配信しようと計画していた。2023年10月頃からスタジオ練習等を開始し、11/6にレコーディングを実施する予定であった。当時私は東京芸大の受験勉強を並列して行っていた。バンドでの作曲作業は概ね私が受け持っていた。

こんな具合で準備を進めていく中で、Aは度々スタジオ練習を無断欠席したり大幅に遅刻して来たりした。10月も後半になり、私のAへのフラストレーションは大きくなる一方だったが、私には社交性がある。Aと腹をわって(少なくとも私にはそう感じられた)話をする機会を設けた。

そこで初めてAから
「申し訳ない。ギターのフレーズを書こうとしてみたが難しい。星̑に書いてほしい」
というようなことを言われた。
私は寛容な人間だし、目標は音源を完成することなので
「早く言えやカス」 「そうか、こちらも悪かった。次の練習までにギターの譜面を書いて渡す」
と伝え、ギターのフレーズと譜面を作成し、AにLINEで送信した。

次のスタジオ練習の日、Aは無断で欠席した。

ええ〜まじ!?といった感じだ。信じられない。よくある「苦難乗り越え大成系マンガ」の感じで大成功するものだと高を括っていた。かなり困惑した後、めちゃめちゃムカついてきた。これまでの怒りを蓄積して、とうとう沸点に達したという訳ではない(私は寛容なので、話し合った時点で一度怒りをフラットに戻した)。このイベント一発でもうめちゃめちゃにムカついた(同じことを二回言う程度にはムカついた)。

その日の朝から、Aとは一切の連絡が取れなくなってしまった。おそらく私は全SNSにおいてAにブロックされている。これは非常に困った。自主企画の会場やレコーディングを行う施設は抑えてしまっているし、Aが無断欠席した日のスタジオ代等を私は10600円も立て替えてしまっている(18歳にとっての1万円はかなりの大金である)。このままではまずい。

私はAへ脅迫と取られない程度に金銭と対話を求める連絡をしつつ、Aのことはほとんど諦めていた。今からAが復帰したとて、Aを信用して一緒にバンドをやることは難しいだろう。レコーディングまでは1週間をきっている。ひとまず音源をなんとか完成させなければならない。

私はギターを練習した。人選ミスのツケは自分で回収せねばならない。自分の作ったフレーズである上に、丁寧に譜面まで作ってある。私の担当パートは本来ベースのみだが、こうなっては頑張るしかない。数日ギターを練習し、友人にギター等の機材を借り、ギターとベース両方のレコーディングを無事に終えた。(そう。「錯乱」と「エモいけど過言」は実は私がギターを弾いている。)

そしてこれらの苦悩のもと、自主企画の告知発表と「エモいけど過言」の音源発表を予定通り完了することができた。我ながらよく頑張ったし、なにより可哀想である。この時点から、Aはバンドを脱退したものとして扱った(本人とは一切の連絡が取れないので、勝手に追放した形になる)。空いたギターの枠には、友人にサポートギタリストとして入ってもらうことにした。

さて、忙しいレコーディングも終わり「どうやって10600円取り返そうかな〜」と考えていると、驚くべきニュースが私の耳に届いた。

Aと同じ大学に通う友人が、私にこんなようなことを伝えてくれたのだ。
「この間Aが、1万円くらい手切れ金だと思えって趣旨のことを言っていたよ」と。
ふむ。これは頭がバグる。手切れ金ってどっちが支払うものだっけ?

私は約束通りにAと関わっていて、Aが急に全てを放棄して関係を切った。その結果、私が大きな損害を被った。なのに、手切れ金を私からAに支払うの?

たしか手切れ金ってそっちが払うものだったような気がするなあ。なんだこいつ。まじで腹立つ。自主企画が終わって少しくらい揉めても平気になったら、絶対に痛い目見せてやると心に決めた。

と思ったその数週間後、なんかPayPayで1万円が帰ってきた。なんだよ。なんだか怒りを爆発させる前に帰ってきちゃって不完全燃焼な気分だ(嬉しいけど)。

いやまて。ていうか、なんで少し足りないんだ。普通、こういう時はパーッと少し多めに払うか、額面通りきっちり返すものだろう。俺が立て替えていたのは10600円だ。600円の端数を切るな。勝手にキリが良いところで打ち止めやがって。本当にどこまでもムカつく。結果的に私が600円の手切れ金を支払った結果になってしまった。

以上が私が手切れ金を支払わされた話だ。とても胸糞悪いが、色々な勉強になった。本当にどうしようもない人間のサンプルが増えたし、そういう人種に対してのこっちの厚意がいかに報われないかを再認識できた。ギターレコーディングの経験もそう悪くなかった。

ちなみに勉強代という言葉は、被害を被ったサイドが己を納得させる言葉である。被害を与えたサイドの人間や、傍観者が使う言葉では無い。よく覚えておけよA。

かなり長くなってしまった。ここらで終わろうと思う。ここまでお読みいただきありがとう。

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