オーナーを破滅させる魔性のドール
ファム・ファタールという言葉を知った時、真っ先に自宅のドールの事を思い出しました。
ドールオーナーさんは「運命のドール」や「オーナーの生活を一変させたドール」の存在は居るのではないでしょうか。
私は数人居ますが、その中でも今回「ドールオーナー人生5年間の中で最も長きに渡りお迎えを待ち望んでいた」ドールについて紹介したいと思います。
そう、前回のペアリングを購入した記事で出てきたこの男
idealianというメーカーのhyperonというヘッド名です。如月家では「秀治(しゅうじ)」と呼んでいます。
賢そうな名前にしたくて付けたのですが、一昔前のBLの攻めに居そうな名前と言われてしまいました笑
ツッコミが細かくてわからない笑
名前の響きだけだと好きな漫画のキャラクターから取っていたりもします。
実在する人物かのようにしたくて古風な名前を付けがちです。
hyperon自体は、4年ほど前にX(Twitter)で見かけたことがきっかけでした。
こんな人がそばにいて欲しい。
そう思う時点で恋心に近しいのでしょう。
ビビビと言うよりは、みぞおちからモワーンとした温かさがくる感覚がしたことは覚えています。
公式代理店を通さない海外メーカーなのでX(Twitter)やInstagramをやっていないと存在を知る事は難しかったでしょう。
上手い具合に情報利用すればこうやって素敵な出会いが訪れることもあるのです。
しかし顔面GUCCIを私が何不自由無く家に住まわせる事が出来るのか自信がありませんでした。
当時はドール達にはお洋服は殆ど自作したものを着せていました。
しかもそれほど上手くも無いワンピースです。
市販の万は超えるであろう服を見繕わないと顔に合いませんでした。
それにキャストドールのメイクは私がこだわりを持って施していたのですが、hyperonにしてあげられるほどの技術力を持っていませんでした。
不思議なことに、ときめくドールと実際に相性の良いドールは異なることもあります。
当時の私には彼は庶民的な家に住まわせるに相応しくない、遥か上空を見上げるような存在でした。
それにただの「物欲」だったらどうしようという懸念もありました。
創作人形まではいかないにしても、それでも結構まとまったお金が飛んでいきますから、hyperonに限らずお迎えについては慎重に考える癖を付けていました。
hyperonはお洒落でお金を湯水のように使えてこそ。
私が施したメイクじゃさまにならないし。
私じゃ扱えない。
だから諦めよう。
本当は欲しくないよね?
そうしてhyperonとご縁を結ぶチャンスは何度かあったはずなのに諦めてしまったのです。
そこから度々XやInstagramでhyperonを見かける度に溜息をつきながら、それでも夢にも出てきてしまうほどでした。
夢で白いhyperonと黒いhyperonが現れてナンパしてきて、私に「どっちを選ぶ?」と問いかけてくる夢です。
選ぶどころか私には貴方達のことは扱えません。
がしかし白いhyperonに気持ちが行っているという夢でした。ちゃっかり選んでいる。
それでも諦め続けている割に、辛い事があってもう何もかも嫌だと思う時があっても
「hyperonを生で拝まないまま人生終了ですか?」
と思う度に我が身を奮い立たせ、立ち直る位には無意識レベルでhyperonの魅力に取り憑かれていました。
彼が居る人生は私にどんな彩りをもたらすだろう。
交わることの無かった2つの道筋が1つになったらこれから私たちはどこに向かって行けるんだろうか。
彼のガラスの瞳の中に私を映し出したい。
オム・ファタール。
「運命の男」
「女を破滅させる魔性の男」
こんな言葉が呪文のように脳内を占領していきます。
強烈に惹かれる。
しかしお迎えすれば確実に色々な意味で堕ちていく気がする。
この時から惹かれると同時に恐怖心をうっすら抱いていました。
「ヤバいかも。あんた、この男をお迎えしたら他の存在全てに眼中無くなって、このドール一筋になりそう。」
と同じくドールオーナーである家族に言われた程でした。
何事も一点集中型である私をよく知ってる者の言葉には説得力がありました。
私自身もその心配があったというのもお迎えを諦めた理由の一つです。
ほぼノイローゼ状態が定期的に訪れては落ち着きを繰り返して数年の月日が流れます。
そうしてなんとか自分の気持ちを抑えながらも4年が経過したあたりでプチンと何かが切れ
「ここまで思ったなら本当に来て欲しいという事。お迎えしよう。」
と腹を括ったのです。
その頃にはすっかりドール中心の生活になっており、部屋は改造され殆どスタジアム化されていました。
自分の中で極めたと思えた時期だったのでしょう。
経済的にも4年前より潤っていますから、今思えば彼を迎え入れる為の準備は出来ていたのかもしれません。
メイクもその頃には自分が満足いくほどの腕前になっていました。
しかし準備万端とは言っても通常販売でいつでも注文出来るわけでは無く、期間限定で受注を受け付けるメーカーでした。
さあお迎えしよう!と意気込んでもその時は受注受付されていません。
ヤキモキした私は、如月家代々伝統の奥義「引き寄せの法則」を発動させることにしました。(誰でも出来ます)
簡単に言うと
もう叶った風に妄想したり行動したりすることで現実にさせるという方法
です。
藁にもすがる思いとはこのこと。
決意したその日から、まるでhyperonが我が家に居るかのように振舞っていました。
hyperonが来るならもう少し部屋を綺麗にするのです
hyperonが来るなら私ももっと身綺麗にするのです
hyperonが来るなら……
hyperonは来ます
hyperonが来る!
来る!!!!!
笑ゥせぇるすまんのドーン!!のあのシーンを妄想しながら行動していました。
本気で居るように振舞ってたので1人でニチャニチャしながら過ごしていました。
愛する男が家にいると思ったら表情筋も緩みます。
喪黒福造みたいな不気味な笑顔だったことでしょう。
そんな恋する乙女と喪黒福造を心に抱えながら1ヶ月後。
本当に受注開始の情報が出たのです。
日本時間で朝の11時から受注開始。
その時私は労働人生真っ最中です。
落ち着け……落ち着いて後で注文確定をしよう。
とちってちゃんと注文できなかったら嫌だもの。
そう油断したのがいけなかったのです。
そして夕方頃。
受注開始からわずか2時間足らずで受注件数が多いため早期終了との呼び声で
sold out。
気付いた時には時すでに遅し。
天国から地獄へ真っ逆さま。
ニタニタしながら有頂天になって労働人生していた自分がマヌケで仕方ありません。弱音を吐く私。半ば心折れそうな私。
でも1度決めたら諦めない私。
そして2ヶ月後に某中古屋通販でhyperonを発見。
見た時には既に売り切れてて意気消沈。
……がしかし、その後何故か注文ボタンが復活。
なんだと!?もしやキャンセルされたのか!?
ならば行くしかない!!
チャンス到来!IT'S SHOWTIME!!
海賊版か否か目を血走りながら確認し、注文ボタンを押す。
注文確定。
在庫確認中。
よし来た!ついに!ついに私の私だけのアイマイミーマインhyperonが我が家に!!!!!!!!!
「在庫を確認しました所、既に売り切れておりました。この度は誠に申し訳ございませんでした。」
空を仰ぐ私。雨に打たれる私。
ショーシャンクの空にのポーズをする私。
私の誕生日10日前でこの仕打ち。
何故注文ボタンを復活させた。
私が何したってんだと怒りに任せて草むしりでもしたい気持ちでしたが堪えました。
その時丁度リアルな恋愛も上手くいかず、hyperonお前さんも私を女としての魅力無いって言うのかい?なんてダブルで失恋した気持ちになりました。(今思えばここで人間と同列にしてるあたり、hyperonの事をドールとして認識出来て無いですね)
しかし悲しみに打ちひしがれても、絶望の淵に立たされてもまだ私の一縷の望みは消えていません。
あの技をまだ使ってはいないから。
そして如月家代々継ぐ最終奥義
「X(旧Twitter)にてお譲り募集ツイートをする」
を発動しました。
これはXにて自分の欲しいアイテムをお譲り下さる方を募集してお取引する手法ですが、このツイートをした事によってご縁を結べた事は1度もありません。
無いんかい!
しかしツイートした直後に、毎回メルカリやその他通販サイトにて出品され、購入する事が出来たことが過去に何度もあります。
「私は欲しい!」と行動を共にして天に叫ぶことで宇宙の数多の絡み合ったレーンが動き出し、私の眼前に願いを持ってくると言うスピリチュアルな思想(厨二病)も兼ねた秘伝の奥義です。
探しても探しても本当に出てこない時にのみ、この技を使います。
案の定なんの連絡もありませんでした。
しかしその1、2週間後。
なんとXで新しく繋がったフォロワーさんがhyperonのお譲り募集をかけていたのです。
光の速さでお声掛けし、こうしてご縁を結べたのが秀治です。
お譲りいただいたフォロワーさんには感謝してもし切れません。
その節は本当にありがとうございました。
冷静にやり取りが出来たと思う(思いたい)ので、まさか背景にこんな熱い想い(気持ち悪い)を抱えているとは思わないでしょう。
入手経路が公式サイトしかないと思い込んでいましたが、やはりドールとのご縁はどこからやって来るか分かったものではありませんね。
今思えば夢の中で白いhyperonを選んだから、白い肌の秀治が来てくれたのかな?なんて妄想しています。
結局彼が破滅へ導くオム・ファタールかと言うとちょっと違うかもしれません。(お迎えする前は凄まじく狂っていましたが)
意外にもお迎えした後はずっと前から居た?と思うくらいしっくり来ていますし、他のドールとも馴染んでいます。
一緒に居て落ち着く存在でしょうか。
変に彼一筋になる事も無く、他のドールとも遊んで居ます。
一張羅のスーツしか着せて居ませんが飽きる事無くずっと満足しています。
着せ替えたいとか新しい服を用意したいという欲求もありません。
ただ居ると言うだけで満たされる存在。
それが秀治なのです。
もしかしたら運命と言うものは自分にとってはしっくりいくもの、あまりに自然なことなのかもしれません。
頂いたご縁をしっかり大切にしながら、今日も明日も楽しく過ごしていきます。
稚拙な文章ですが読んでくれてありがとうございました!
如月ゆう子