ZARDのデビュー30周年に寄せて

2021年2月10日、ZARDがデビューから30年を迎えた。

とはいえ、周知の通り坂井泉水はもうこの世にはいない。既に彼女の死去から今年で14年。もうじき没後の年月がZARDとしての活動期間を上回ってしまう。

ビーイングブームの時代は多くのピーイングアーティストのひとりに過ぎなかったZARDは、90年代の終わりに向け次々に消えていくレーベルメイトを尻目に、年々セールスを落としながらも根強いファンに支えられ、トップアーティストのままこの世を去った。

当記事ではデビュー30周年という節目に合わせて、その功績と名曲の数々を簡単に振り返りたい。


1.J-POP界においてZARDが残したものは?


CDバブル期に多くのヒットを産み出したZARDのミリオンヒット曲は意外に少なく、「負けないで」「揺れる想い」「マイフレンド」の3曲で、レーベルメイトのWANDSよりも少ない。固定ファンも多く、ミリオンに迫る売上を数曲記録しているが、概ね80万枚程度のアベレージである。しかしながらアルバム型のアーティストという呼び方が相応しいのか、ベストやコンピレーション含む9作のミリオンヒット(うち1作トリプルミリオン、3作ダブルミリオン)を記録している。

90年代前半に旋風を巻き起こしたビーイング内でも、男性アーティストといったらB'z、女性アーティストといったらZARDというような、事務所の看板アーティストであり、「果てしない夢を」「翼を広げて」等の作品でもボーカルやコーラスを務めた。

1997年頃からはセールスは下火に入り、1999年のベストアルバムの大ヒットによりトップセールスアーティストとなるが、シングルのヒット作となると「永遠」が最後だろう。当時流行語となった作品タイトルの"失楽園"と共に、タイアップ曲であった同曲はよく一緒にテレビで流されていた。

活動休止を経た頃にはそもそもの事務所の力が落ちていたころから、往年のようなヒットが約束されたCMソングやドラマ主題歌といった大型タイアップが見込めず(休止前後のタイアップを比較すると結構大きな差がある)、事務所の凋落と歩調を更にセールスを落とすものの、熱狂的なファンに支えられZARDの名前はヒットチャートに残り続けた。そして…

当時このニュースは驚きでしかなく、テレビに出ないが故に「亡くなったのは本当に本人なのだろうか?」「ZARDという存在は元々あってないようなもので、概念として在り続けるのではないか?」などと、あり得ないようなことを考え連ねたものだ。

何でも失ってからその有り難みがわかるもので、坂井泉水の訃報の後は生前の軌跡を辿るベストアルバムがヒットを記録した。そして商業的観点を抜きにしても、10年以上経った今でもまだなお話題に上がるのは、CDのセールス枚数を見れば決して不思議ではない。同じようなアーティストがどれだけいるだろうか?国民的ヒット曲「負けないで」だけではない、ZARDのアーティストパワーである。

2.ZARDのシングル曲7選


折角アーティスト自身についてに触れたので、曲についても触れていきたい。全曲で括るほどは聴き込んでいないため、シングル曲からこれだと言える7曲を挙げる。

1.「こんなにそばに居るのに」(1994)
オリコン最高位1位。過去記事でも取り扱った三貴CMソング。メロディやタイトル、歌詞の内容からゆったりした曲っぽく感じるが、意外にも曲先行で疾走感のある曲調である。アルバムバージョンの大サビへ入る部分の大袈裟な展開が90年代前半の楽曲らしく、個人的にはとても好み。

2.「愛が見えない」(1995)
オリコン最高位2位。シーブリーズのCMソング。Bメロのラップみたいなフレーズの独特のリズム感が何とも言えない。小さい頃に聴いたこの曲の、"夢を捨てるのが大人なら 大人になんかなりたくない"という歌詞が今でも印象に残っている。キー高めで最終盤はちょっと苦しそう。

3.「マイフレンド」(1996)
オリコン最高位1位。CDジャケットは何故かタイトルが英語表記になっている。スラムダンクで使われていたこともあって、ZARDの曲の中でも未だに耳にする機会は多め。今でも色褪せないキャッチーすぎるサビ、多くの曲を手掛けた織田哲郎のメロディーメーカーぶりといったら。

4.「心を開いて」(1996)
オリコン最高位1位。代表曲「揺れる想い」以来3年ぶりのポカリスエットCMソング。何とも爽やかかつ、ゆったり奥行きのある曲に仕上がっている。ZARDといえば坂井泉水の詞だが、キラーフレーズがある曲は多いものの、この曲は歌詞のストーリーで聴かせてくれる。

5.「永遠」(1997)
オリコン最高位1位。位置付けとしては、恐らくZARD最後のヒット曲。セールス以上にタイアップの失楽園ブームにより耳にすることが多かった。個人的には見ていなかったドラマより、CanonのCMの歌詞違いバージョン(「永遠~君と僕との間に~」)の曲の方が印象に残っている。

6.「運命のルーレット廻して」(1998)
オリコン最高位1位。全盛期だったらもっと売れてたんだろうなと思う。ZARDで名探偵コナンの曲と言えばこの曲で、オープニングの映像も共に頭に焼き付いている。アレンジの違うバージョンが何種類か存在するケースがよくあるが、この曲は特に多い。最早コアファンでないと追えない。

7.「星のかがやきよ」(2005)
オリコン最高位2位。なんと6年ぶりのオリコントップ3入りとなった、生前最後のスマッシュヒット。こちらもコナンのオープニング。歌詞・メロディ共にとても前向きな曲である。全体的に重心の重たい歌い方が特徴的で、ほかの曲もそうだがこの曲はより顕著。テクニックなのか何なのか癖になる。

3.最後に


存命の如何に関わらず、当然にアニバーサリーイヤー即ち商業的な動きが活発になる年である。X JAPANのhideも同じようなことがあったが、望まれぬ未完成作品のリリースやコンピレーションアルバムの乱発。そしてレーベルメイトによる名曲の再利用、更にプロデューサーの肝いりで彼女の曲を後世に伝えるバンドなるものまで誕生した。

これこそが坂井泉水の影響力なのだろうが、本当にコアなファンは何を思うのだろうか。世にZARDが、坂井泉水が必要とされ続ける限りはこの流れは止まることはないだろうが果たして…

とにもかくにも、決して望まれた形ではないが、この偉大なアーティストはデビュー30周年の日を迎えた。近年はYouTubeや様々なアーカイブ媒体で、昔の楽曲が若者たちにリーチする機会が増えた。オリジナルを尊重しつつも、40年、50年経っても風化することなくこれらの楽曲たちが生き続けることを願ってやまない。

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