J-POPレビュー#11 名盤シングルCD7選

今回はシングルCDについて。

シングルという文化がおそらく日本の音楽業界特有のもので、外国のようなアルバムからのリカット中心ではなく、新曲を発表する媒体として音楽文化として深く根付いており、耳に触れる機会の多い1曲目(いわゆるA面)に加え、買った人ぐらいしか聴く機会のない2曲目以降(同B面)を聴く楽しみは欠かせない。

名盤と言ってしまうと随分ハードルを上げるが、A面がアーティストの代表曲かつB面が名曲と名高い、この2つの条件が重なるシングルは決して多くはない。B面曲の特集はよく見かけるが、A面曲が別にそうでもなかったり、実は両A面の2曲目というパターンもある。

今回はシングル収録2曲の作品を3作品、3曲の作品を4作品挙げる。B面曲についてはオリジナルアルバム未収録であり、(例外あり)ノンタイアップであることを条件とする。

1.「ZERO」B'z (1992)


オリコン最高位1位。年間11位、ミリオンヒットを記録。なお、この前のシングル「BLOWIN'」もM2の「TIME」が名曲だが、タイアップがついているため選外とした。ライブでも長きにわたり歌い続けているこの曲は"ハードなB'z"を初めて世に出した曲であり、格好いいとは言えないながらもつい口ずさみたくなるラップが特徴的である。

2曲目の「恋心(KOI-GOKORO)」はこちらも振り付けがつくほどのライブど定番曲。両A面でもなく、タイアップもないという事実にびっくりするほど、ベストアルバムにも必ず収録されるためここで言及するのも憚れるが、それだけ神シングルCDであるということを改めて発信したい。

2.「世界が終るまでは…」WANDS (1994)


オリコン最高位1位。年間10位、こちらもミリオンヒットを記録。スラムダンクで起用されていたこともあり、WANDSを知らない人にも今でも歌い継がれる名曲である。Beingのアニソン戦略の代表作でもあるこの曲だが、昔から気になっているのは"終る"の送り仮名である。

2曲目の「Just a Lonely Boy」はベストアルバムにも追って収録された。前作の「Jumpin' Jack Boy」と若干似ているタイトルも気になるが、こちらはライブ終盤に歌われるような、掛け合いがよく合いそうな1曲である。カラオケに行けばアウトロの上杉昇のフェイクや最後のフレーズのエコーは必ず歌いたくなること間違いなし。

3.「Winter,again」GLAY (1999)


オリコン最高位1位。年間2位、またまたミリオンヒットを記録した、言わずと知れたGLAYの大ヒット曲。JRのキャンペーンCMというヒットが約束されたタイアップだが、ここまで最大のヒットであったglobeの「DEPERTURES」にも遜色ない名曲が出来上がった。Bメロから入るCMでの曲の挿入の仕方も本当に効果的である。

2曲目の「young oh! oh!」は新旧織り交ぜて演奏されるGLAYのライブでも比較的演奏され盛り上がる定番曲。同時期のアルバム「HEAVY GAUGE」に入っていても違和感なく、アルバム未収録は意外。

3曲目の「HELLO MY LIFE」は「生きがい」などと並ぶような爽やかな一曲。M1と違い春の曲であり、唐突に季節の違う曲が同じシングルに収録されるのもまた面白い。

4.「スノースマイル」BUMP OF CHICKEN (2002)


オリコン最高位3位。今では専ら配信シングルばかりだが、この当時はトイズファクトリー所属アーティストらしく、かなりマイペースにCDをリリースしていた。こちらも初期の名曲と呼ぶのに相応しい、最後の大サビのスケール感含め聴かせてくれる冬ソング。

2曲目の「ホリデイ」は応援歌らしい入りから、ただただ緩い歌詞で終わる、まぁBUMPらしい1曲。このシングルの2曲に共通するのは、歌い出しのフレーズのインパクトである。M1の"冬が寒くって本当に良かった"、M2の"失敗しない後悔しない 人生がいいな"。あまり冒頭にこういったフレーズが使われることはないと思うが、共に1フレーズで殺しに来る名曲である。

5.「アンドロメダ」aiko (2003)


オリコン最高位3位。aikoについては3曲収録が基本である。aikoの歌詞の言い回しの独特さは恋する女子ではなくてもとても感銘を受けるところで、この曲は"何億光年向こうの星"と"肩についた小さなホコリ"を並列に並べる言葉のチョイス、2番サビ頭のタメや"あたしの髪の揺れる距離の息づかいや"のところの流れるような歌詞の嵌め込み方が好き。

2曲目の「どろぼう」はアニメのタイアップがついていたことを17年後の今知ったが、関東エリアはネット遅れらしく、(おそらく)認知度の高いタイアップではないので採用。どろぼう感の皆無なポップな1曲。

3曲目の「最後の夏休み」はイントロのゲームみたいなピコピコ音や、アウトロの素朴な音色のリコーダーが新鮮な1曲。ライブではお目にかかることはなさそうである。

6.「Sign」Mr.Children (2004)


オリコン最高位1位。年間2位、レコード大賞を受賞した近年の(と言っても16年前だが…)ミスチルの代表曲。曲を聴くだけで妻夫木聡と柴咲コウが浮かび上がってくる、タイアップとの相性も抜群。「マシンガンをぶっ放せ」も同じようにM2、M3が名曲であるが、通常のシングルとは形態が異なるので今回は取り上げなかった。

2曲目の「妄想満月」は何とも怪しげな歌詞とどこかゆるく気だるい感じのメロディーが特徴。寺岡呼人が作曲として参加しているのが珍しい。

3曲目の「こんな風にひどく蒸し暑い日」はミスチル流のファンクロック。ライブでお目にかかれた暁には、サビで手拍子したくなること必至。

7.「シャングリラ」チャットモンチー (2006)


オリコン最高位6位。シンプルながら個性際立つ彼女たちの楽曲の真骨頂といえるこの曲は異論なしの代表曲。シングルは基本的に3曲入りのため、後程カップリングコレクションも発売。アルバムツアー(顔to顔ツアー)にも参戦したが、本作の2曲以外にも「湯気」「推進力」「RPG」など挙げればきりがないほどの名曲揃い。実験的な曲が多いが、どれも良い方に作用している。

2曲目の「小さなキラキラ」は序盤の静かな入りと、バンドの音が入った中盤以降で違った良さが楽しめる。ちなみに曲調はキラキラしていない。

3曲目の「迷迷ひつじ」は可愛らしいクリスマスソング。3人のチャットモンチーだからこそできるコーラスワークと、バンドの音色がこの曲に詰まっている。


以上7作品を挙げた。3曲収録されているシングルCDがそもそも多くなく、あってもCDレンタル開始日を引き延ばすため(アルバム扱いになり、レンタル開始日が発売日の17日後?になる)ライブ音源やリミックスを収録するケースが多い。
現代ではアルバム発売に至るまでにシングルCDではなく配信リリースのみであるケースも多く、B面曲のような曲は陽の目を見なくなってしまっており、またはリリースされても複数A面やタイアップ付きの場合も多く、今回の記事においても最近のシングルCDは候補にも挙がっていない。

今後もこれらのような作品が出てくる望みは薄いが、引き続き過去の作品を掘り起こし、シングルCDの良さを再発見していきたい。

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