大宮アルディージャの欧州出身選手を振り返る(後編)

後編はJリーグ経験のある選手を挙げていく。クラブによっては国内での経験のある外国籍選手を中心に補強するチームもあることから、環境への適応力を重視しているのだろう。大宮も過半数まではいかないが、欧州以外の選手を含めても多くのJリーグ経験のある選手が在籍し、重要なポジションを担った。


1.ラドンチッチ(FW 2014-途中)


J1リーグ通算8試合0得点
清水からノヴァコヴィッチとのトレードのような形で加入した193cmの長身FW。クラブ初のモンテネグロ出身選手。2007年の甲府時代は残留を争う小瀬での直接対決、終盤の決定機をラドンチッチが外しクラブの明暗を分けたという出来事もあった。
J経験があることから計算が立ち、前線での高さとフィジカルを生かしたプレーを期待されるも、泣かず飛ばずで前線で孤立する姿が目立った。攻撃が機能し完勝したH仙台戦、PK獲得のシーンで蹴りたそうにペナルティスポットを見つめる彼の姿が印象的だったが、蹴ったのはPK職人家長だった。結果シーズン途中に大分に放出。彼の不発が大熊監督の解任とJ2降格に大きく影響してしまった。


2.ネイツ・ペチュニク(FW 2016-2017途中)


J1リーグ通算27試合1得点
千葉で結果を残した元スロベニア代表FWで、ノヴァ・ズラコンビと共にW杯メンバー。レッドスターではムルジャとも共演していたことから期待値は高かった。
当初右SHで起用され189cmの長身を生かした圧倒的な空中戦の強さを発揮するも、守備面や機動力不足で出場機会は減少。CFでの起用もあったが得点量産とはいかず、ムルジャとのホットラインもムルジャの衰えもあり不発。それでも腐らずカップ戦ではコンスタントにゴールを決めていた。点を決めるとアシストした選手を指差し向かっていく姿が今でも思い出される。それにしてもカップ戦での活躍が印象的過ぎて、リーグ戦1得点というのは意外だった。
2017シーズンも目立った活躍はなく、外国人枠を空けるためにまさかのJ3栃木へ電撃移籍。クラブの政治的な事情もあったと噂されるが、代表クラスの選手への末路しては非常に寂しいものだった。尚、栃木へは新幹線で大宮から通っていた。


3.ロビン・シモヴィッチ(FW 2018-2019)


J2リーグ通算53試合14得点
ここからは記憶に新しい選手たち。名古屋でまずまずの結果は残したものの、風間サッカーにフィットせず契約満了となり大宮に加入。クラブ初のスウェーデン人で、名古屋時代の登録名はシモビッチ。
大前・シモヴィッチの2トップは当初J2民を震え上がらせたが、思いの外フィットせず。足下の柔らかさとシュート精度がうりで、長身ながらヘディングが得意ではない彼に初年度はロングボールが集中。当然収まらずルーズボールも拾えずで気がつけばベンチを温めるように。
翌年はフアンマの控えとしてのスタートだったが、出場機会があればようやく足下にボールが集まるようになり、ゴール前だけでなく組み立てにも貢献。守備の拙さを攻撃への関与の増加で補った。2年で契約満了となったが、J2ならば20得点を期待できる馬力があっただけに残念。突っ立っているだけでファウルの笛が吹かれながらも、日本の審判の糞ジャッジに耐え続けたのは立派だった。2020年より以前セリエAにいたリボルノに移籍。


4.ダヴィッド・バブンスキー(MF 2018途中-2019)


J2リーグ通算33試合4得点
これまたクラブ初の北マケドニア代表選手。いつの間にマケドニアは北マケドニアになったのか?横浜FMからの完全移籍。従来のダビド・バブンスキーから何故そこにこだわるという登録名変更。サッカーはディテールが大事である。
バルサのカンテラ仕込みのボールテクニックが持ち味。意表をつくシュートやドリブルなどで攻撃を牽引したが、途中出場だと攻撃のスイッチを入れる切り札となるものの、先発だと効果的ではない気持ち守備が災いして早々とスタミナ切れ。今季から加入するルーマニアのクラブが彼の才能の活きる場所であることを願う。そしてまたいつか弟ドリアンとの共演を見たい。
絶対に本人が知らないプリプリのDiamondsをチャントにあてがったのが謎だった。あと赤ちゃんがとてもかわいい。


5.フアンマ・デルガド(FW 2019)


J2リーグ通算40試合13得点
またまたクラブ初のスペイン人。オフにマテウスが抜けたことにより宙に浮いてしまった大宮アルディージャ名誉通訳マルコさんが彼の加入により残留。長崎時代の登録名ファンマから大幅な変更。DAZNの実況によっては何故かデルガドと呼ぶ方もおり、違和感が半端なかった。
長身と強靭なフィジカルを活かし、攻守にわたって強さを発揮。ピッチ外での紳士ぶりとうって変わって不要な抗議でカードをもらったりと気性は激しかったが、前線での守備もしっかりこなし、カウンターの局面では見た目によらずそこそこのスピードで走りきる。見事キャリアハイの成績でシーズンを終える。
更なる活躍が期待された2020年はまさかのJ2福岡にマルコさんと共に完全移籍。マルコさん退団のほうが寂しかったのは正直な気持ち。彼のことは忘れようと思うが、屋外の屋根なしスタジアムにも関わらずこだまするほどの音量で歌われたチャント(原曲はジプシー・キングスのボラーレ)は絶対に忘れないと思う。


最後にー今後もJリーグ未経験選手は活躍できるか?


未経験の選手については今年以外はどういったコネクションがあるのか知らないが、多国籍軍と呼ぶにふさわしい陣容である。クラブ経験も様々な国でプレーしており、そして皆代表経験のある選手を獲得している。フィットするか否かのリスクを考慮すると、未経験選手のほうはよく当たりを引いていると言えるのかもしれない。
ちなみに、欧州出身選手の平均身長は新加入含む13人で189.6cm。178cmのバブンスキー除いた12人の最低身長はなんと186cmだった。
総合的に見ると、高さのような日本人にない部分を彼ら欧州出身選手で補おうとしていることがよくわかる。中途半端な選手を並べるのではなく、かけるところにはお金をかけることができている。
今季についても、ハスキッチは得点王を獲得してゴールに関して自信を持っているだろうし、クリャイッチは各クラブで成功例の出ている外国人GKのフォロワーとなる資質充分。マクシメンコはチーム1の国際経験を持つ。外国人の補強は比較的上手と言われる大宮の補強が今季も成功となることを願う。

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