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自分が「最高に、良い人!」と思えるような人に巡り合うことは、人生において、「砂漠で落としたダイヤモンドの指輪を探すより難しい」

自分が「最高に、良い人!」と思えるような人に巡り合うことは、人生において、「砂漠で落としたダイヤモンドの指輪を探すより難しい」。

私がそんな人だと思っている人に、昨日スーパーの中で6年ぶりくらいで再会した。

外観は風采の上がらない人である。もう初老の男性で、結婚もしておらず、一人暮らし。亡くなった親が遺した海辺の家に独りで住んでいる。
かつて私が飼っていたいた対州馬の放牧地である山の中で、金属類を譲り受けてきては、それを磨いて買取業者に売って生計を立てておられた。

しかし、抜群にいい人なのである。教員時代を含め、社会に出てから出会った人の中で一番いい人と言っても過言ではない。

その頃、私も独りで仕事をしていたので、嫌な思いをさせられたり、苦労をすることも多かった。
その人と初めて出会ったのは、知り合いに刈り取ってきた枝葉を捨てさせてもらった、例の山の中である。
このような場合、嫌な顔をされたり、無視されたりすることが多いのだが、その人は、最初から笑顔で迎えてくれた。

真夏の作業時にはよく、「つんたかとば(冷たいのを)、飲まんね!」と冷えたコーヒー缶をもってきてくれた。
野良猫を可愛がり、私の馬にも会いに来てくれた。

何より、その人のいいところは、「ただ腰が低かったり、愛想がよいだけではなかった」ということ。
善悪についての慧眼を持ち、けっして悪や堕落に流されるということは無い人だった。

やってきた野良猫を可愛がり、地主に一方的に追い出された時も、その猫と一緒に今の実家に移った。


昨日のスーパーでのこと。
通路で一瞬すれ違った時、マスクをしているが、その人だとわかった。
すれ違った後、話しかけようとするが、彼はもうレジに向かってしまった。
しょうがないので、私はレジの向こうの、端から彼がやってくるのを待つことにした。

彼は、レジのおばさんと何やら笑顔でやり取りをし、そのあと他のレジの人たちにも笑顔で会釈しながら歩いてきた。
信じられないものを見た気がした。

やっぱり彼は、その後もずっとそのような、いい人であったことがうれしくもあり、正直驚いた。
レジなんて、生活の中でもっともイライラさせられる場所だ。
私なんて、いっそのこと「セルフレジになればいいのに!」と思ってしまうこともあるくらいだ。

その後、彼と話した。
お互いの再会を懐かしんだ。

しかし、その間、片方の目が見えなくなるような大病を患ったという。
可愛がっていた猫も2年くらい前に亡くなったのだが、今は違う猫がやってくるようになったことも話してくれた。

またの再会を期待して、彼と別れた。
しかし、何故だか、もう二度と彼と会うことは無いような気がする。
そして、この日の出会いも偶然ではなく、彼のスーパーでの態度を見ることは、必然であったように思う。

この日のことは、きっと死ぬまで忘れないであろう。
そのことを、書き留めておきたかった。



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