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ドラマ・シリーズ「正義の異邦人:ミープとアンネの日記(原題:A Small Light)」

とても秀逸なドラマ・シリーズで60分の8話から成る。
題の中の人名、ミープ・ヒースは、アンネ・フランクと7人を隠れ家でかくまった、主な4人の内の中心的な人物である。
幼い頃、オーストリアからオランダ人家族の元に養子にきた女性であり、歴史的にはアンネ・フランクに比べると、ほぼ無名であるが、ナチス・ドイツのホロコーストに真っ向から立ち向かった一人間としては、後世まで語り継がれるべき人である。
このドラマは、史実に基き、演出上の脚色は加えられているものの、事実を歪めるものではまったくなく、むしろ事実はもっとドラマチックであっただろうと考えられる。

その多くは、ミープ・ヒース著(アリスン・レスリー・ゴールド共著)「思い出のアンネ・フランク」をベースにしていると思われるが、ありとあらゆる資料を基に構成されていることがうかがえる。
各章の最後に流される静かなジャズ調の音楽も非常に作品に調和していて素晴らしい。

ぜひ「アンネの日記」を読んだ後で、このドラマ・シリーズを味わってほしい。
シリーズは、フランク家が隠れ家生活へ入る所から、アンネたちが亡くなった数年後、ミープが、保管していたアンネの日記をオットー・フランクに渡すところまで続く。
必然的に、1944年8月4日の10時頃、8人がゲシュタポに急襲され連行されるシーンも、その場に居合わせていたミープの記憶により、事実そのままに描かれている。
見る側としては、非常に心苦しい場面であるが、やはり史実として見て欲しい。そしてその際にも、命をかけてアンネ達を守り、救い出そうとしたミープたちの行動の記録もぜひとも、多くの人に知って欲しいところである。

私が「アンネの日記」と「思い出のアンネ・フランク」を読んだだけでは知りえなかった事実として、オットー・フランクがアンネの日記を読んだ後にミープたちに語った、次のような言葉がある。大変大きな意味を持つ言葉だ。
「・・・まるで知らない子だ。私たちは家族として隠れてたが、あの子は自分も隠してた」。

『A Small Light』は、ジョーン・レイタ―とトニー・フェランによって制作された伝記ドラマミニシリーズです。2023 年 5 月 1 日にナショナルジオグラフィックで初公開されました。ミニシリーズは翌日、Dhisney+とHuluでストリーミングできるようになりましたこの作品は広く批評家から高い評価を得ました。

wikipedia




今日、私たち一人一人は、「戦争」というものに対して、全く無力だと考えてしまう。ウクライナとロシア。イスラエルとパレスチナ。その他多くの世界中で起こっている紛争。

しかし、ナチスによるホロコーストという困難な時代に、一人の女性が、かくも純粋に「差別」と対峙し、抗い、「平等であるべき生命の尊重」を貫き通したことを描いた、このドラマ・シリーズは「人類の偉大な史実」のひとつであると言って、何ら遜色ない。

ちなみに原題「A Small Light」は、ミープ・ヒースが講演会などで若者たちに話した際、最後の言葉としてよく使った、「平凡な秘書や主婦、10代の若者でも、暗い部屋に、小さな灯りをともすことができるのです」の中からとられた言葉である。


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