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すべての馬が健康で最低限度の生活ができるには~「馬の社会的価値を高める」の意味~

 こんにちは。Horse Valueのりょーじです。もう年末ですね。この時期は今年の売上を見直したり、来年の目標を立てたりするので忙しいですが、ビジョンが固まってきて楽しい時期でもあります。そんなテンションなので、今回は改めて僕達の会社のビジョンについてお話していきます。

「馬の社会的価値を高める」

 というビジョンを聞いて何を思い浮かべるでしょうか?ある人(行政のすごい人)に当社のビジョンについて話をしたら

君は馬の権利獲得をしたいんだね

 と言われ、最初はどういうこと?と思ったのですがよくよく考えると「なるほど確かに!めちゃくちゃ分かりやすい例えだ!」と思ってよく説明に使わせていただいています。例えば「女性や外国人に権利を」などという動きと似ている、というわけです。


 実は、バチェロレッテという番組に出ていて最近大人気の美紀ちゃんは僕の幼馴染なのですが、彼女は女性の素晴らしさ・強さをビジネスを通じて(DINETTEという企業経営を通じて)見せてくれていると思っていて、活躍を嬉しく思っています。

 そんなビジネスと僕たちの目指すものは、確かに似ています。

 「馬が社会の中でより良く生きられること」を目指しているという点、「価値あるものが見出されていない」と考えている点は、こういった女性の生き方を切り拓く活動・ビジネスと大きな共通点があると思うのです。


馬の生存権に関する現状


 馬の権利、という話をしたので、馬の権利、特に人間で言う生存権に関わる現状を見てみましょう。あえて「生存権」という言葉を使ったのは、憲法第25条を意識しているからです。

すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する


 馬はどうなんでしょうか?馬は残念ながらそうではありません。ここで細かい数字について正確に言うことはできませんが、それは事実です。

人間の役に立つ馬は、健康な生活を営む権利を有する


 という感じです。何らかの人間にとって役に立つ能力がなければ馬は生きていけません。人間で言うと「社会の役に立たなければ生きていけない」という感じかな、と思います。


 馬が大好きでどんな馬も無限の可能性を持つことを思うと、悲しいですが今はそれが現実です。これについて誰かを責めるつもりは決してありません。

 もし誰かを責めるとしたら、これは僕達の責任です。僕達の活動が進んでいないから、ビジネスが進むのがゆっくりだから、今はそんな状況です。逆説的に言うと、僕達がビジネスを成功させ、自分達で成功だと言える姿まで進んだら、この状況は変わると信じています。


 ここまで「馬の生存権」について、それが保証される社会実現についてお話してきました。とはいえ、僕達がアプローチする方法は「馬は生存する権利がある!」と主張することではありません。それも一定の効果があるかもしれませんが、僕達はそれでは現状を変えていくことはできないと思っています。

 僕達のアプローチは「馬に仕事を、より良い報酬を」という労働に関するアプローチです。ここでも人間の権利に例えてきたことにより、理由を説明しやすいです。

 実は、多くの人は生活の「生存権」について意識することはないかな、と思います。その1つの理由は「ほとんどの人がこの権利を主張して国に行動する必要がない」からです。その理由は、私達人間はある程度自分で働いてお金を稼いで生活することができるからです。

 こんなことはありえないと思いたいですが、もし多くの人が仕事を見つけることができない状況になったら、この生存権はより注目されるでしょうし、日本の・世界の社会保障は崩壊を迎えてしまうはずです。

 そして、これが正直な今の馬業界の現在地です。このように人間社会に当てはめると「仕事を作ろう、仕事を支援しよう」これ以外に多くの馬を救う方法はないはずです。

馬の仕事を増やす∈馬の社会的価値を高める

 では、どのようにすれば馬の仕事は増えるのでしょうか?

 歴史上、馬は人間のためにたくさんの仕事をしてきました。移動手段・農業など…。馬糞は堆肥となりました。そんな時代は変わり、今や機械が馬の代わりを担います。車・バイク・耕作機…。彼らは仕事を失ったのです。


 仕事を失えば、社会から必要とされなくなり自然と数が減っていくものですが、馬は新たな道を見つけました。それが競馬です。今、日本で生まれている馬のほとんどが競馬で走るために生まれています。

 このお仕事は残念ながら若い内しかできません。アスリートと同じです。超一流、一流くらいになれば裕福な生活ができますが、鳴かず飛ばずのアスリートはなかなかその後の仕事が苦しいです。

 そんな馬たちが次にできるお仕事はあるんでしょうか?いわゆるセカンドキャリアと言われるものです。セカンドキャリアの中で多くを占めるのが「乗馬」です。馬に乗って楽しむ趣味のお供をしてくれるのが、この乗用馬の仕事です。ここでは、走るのは早くなかったけど、気性が優しく、大人しい馬が好まれます。

 乗用馬という仕事に就くことができれば馬は長く生きることができます。


 とはいえ、これはある程度狭き門です。日本の乗馬人口は5万人〜7万人程度と言われています。そんな中で必要とされている馬は、1万5千頭(そのうち競走馬出身は1万頭)とされています。これはどのくらい少ないのでしょうか?

 馬は年間7千頭生まれます。すべての馬が平均寿命を生きるわけではありませんが、平均寿命は20歳です。ほとんどの馬が生存権を保証されるとしたら、単純計算で14万頭が日本中にいる状態になります。こうなったとしたら全馬口の10分の1程度しか乗馬になることはできません。

https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/attach/pdf/sonota-29.pdf


 乗用馬とかぶっているエリアではありますが、障害馬術(馬と一緒に障害物を飛び越える競技)や馬場馬術、総合馬術のような馬術競技の馬になる、という手もあります。最近はRRCという引退競走馬のみの障害馬術の競技会があり、馬術業界の中には引退競走馬を再トレーニングして仕事にしよう、という動きが増えています。

 このような馬たちは先ほどお話ししたような「大人しく、扱いやすい馬」である必要はなく、競走馬時代の気質のままアスリート的に活躍することができることが特徴的です。一般のお客様が趣味として乗る馬には気性が荒すぎるが力がある馬には馬術馬としてのチャンスがあるのです。

 イメージとしては野球選手を引退してゴルファーになる、みたいなイメージでしょうか。サラリーマンになるより野球選手時代と同じような気質が活かせるかもしれませんよね。いや、ゴルファーになれる人は少ないやろ!ってツッコミがありそうですが、馬も一緒だからあえて書きました。

 馬術馬として活躍できる馬は乗用馬よりさらに狭き門です。最近は増えているとはいえ、乗用馬の1万頭の10分の1以下です。全体でみると100分の1以下ということになりますね。


 残念ながら、これ以外の方法で乗用馬ほどの仕事を生み出せるものはありません。これが、先ほどの所で書いた馬の生存権の現在地の大きな要因になっています。

 Horse Valueとして取り組んできたことは、全てここをどういう風に変えていくのか、と繋がっています。観光乗馬もその一つです。自然の中で楽しめる乗馬は現在の乗馬の枠を広げるものです。また、馬との交流から学びを作るウマナビ、HMSというプログラムはまさに馬の仕事を創ることに繋がります(このプログラムの内容、馬との交流でどんな学びがあるのかは僕のnoteを読んでください!)。

 さらに、僕たちが重視していることは「ビジネスとして成立する仕組みを作る」ことです。僕たちが馬の魅力、能力を引き出しお客様にかけがえのない体験をしていただく。そこに大きな価値を感じてもらい、実際にたくさんのお金を対価としていただく。新しい形でそんな馬と共に「儲かる」ことが実現出来たらどうなるでしょうか?それを真似る人、挑戦する人が増えます。そうなると僕たちだけで生み出す馬の仕事以上のものが生み出されるはずなのです。

 乗用馬以外の仕事を創り、それに価値をつけ、お客様にその価値を伝え、実際に仕事として成立させる。それを見たたくさんの人がこの事業に取り組むことでより多くの仕事を生み出すことができるのです。

 これが僕らのやってきたことです。馬の仕事を創り、お客様に価値を伝える。馬の社会的価値を高めるとはこういうことなのです。


僕たちの現在地と新しい挑戦

 そんなことに取り組んできた2022年、僕たちHorse Valueは大きな前進をしました。当社のウマナビ、HMSというプログラムはテスト段階を経てものすごく順調にお客様(経営者の方、コンサルタントの方、行政の方など錚々たるメンツ)に価値を感じていただき、販売を開始することができました。

 もちろんプログラムはいつまでも進化していくことをお約束しますが、このプログラムの形がある程度整ったこと、僕たち自身がこのプログラムで起こる素晴らしい体験を目にしていることが大きな前進です。

 つまり、馬達のお仕事が完成した、ということです。2023年はこの進化をさらに進めていきつつ、より沢山の人にそれを伝えるということをしていきます。多くのお客様に価値をお伝えして販売し、馬たちの生活を成立させ、裕福にしていく、という段階に来たのです(これを読んでプログラムに興味を持ってくださった方は是非以下のリンクから案内をご覧ください)。

 さて、この馬から学ぶプログラムの前進は素晴らしいのですが、当社全体の中でこの事業を進めるだけではダメだぞ、という気持ちもあります。それは、このプログラムが規模をこのまま増やすスケール(横展開)に適していないという特徴を持っているからです。

 このプログラムは深い体験を生み出すとても価値のあるものである一方で、1頭の馬、1人(もしくは2人)の進行役で同時には6人〜8人の体験を生み出すことに限られるのです。また深い体験を生み出すには十分な時間(8時間程度)が必要です。

 また、プログラムの進行役は馬に対する理解、観察力、参加者との対話力が求められます。つまり属人的な(進行役によって価値が変わってしまう)特徴があるのです。進行役になるには長い時間の馬と関わった経験と、知識と適切なトレーニングが必要です。

 少人数が多くの時間をかけなければいけない点、進行役の力量によってプログラムの価値が変わる(そしてその進行役の育成が難しい)点が意味するのは、需要が10倍、20倍になっていったとしてもそれに応える環境を整えることは難しいことなんです。1頭の馬と1人(2人)の進行役で高い付加価値を生むことができる一方で、これが「たくさんの馬の仕事になる」ことは難しいという現実があるのです。

 「馬って素晴らしい価値を持った生き物なんだ、馬と人との交流は素敵だ、学びが深い」と思ってもらえることは馬と人との関わりの質を高め、広げることには繋がりますが、たくさんの人に馬と関わってもらう、という量の面では中々貢献できません。


 「馬の社会的価値を高める」に馬の仕事を増やす、が含まれるとはっきり書きましたが、それは仕事の種類を増やすというだけではなく、仕事の数も増やすということを意味します。ここに僕達の新しい挑戦があります。

 たくさんの人が馬と関わる、馬の仕事の枠を増やす。そんな側面が必要だと考えた時に僕達は自分たちがやってきた「乗馬」に戻ってきました。ここにまだまだ工夫の余地があるのではないか?もっと乗馬が多くの馬の仕事になるようにできるのではないか?と立ち返ったのです。

 実際「乗馬人口はまだまだ伸びる!」と思います。日本の乗馬人口が5万人程度だと書きました。乗馬が盛んなドイツやイギリスではどうでしょうか?なんと100万人です。また、毎年行われている調査を見ると「乗馬」は「やってみたいスポーツ」で日本でも常に上位に入っています。

 2023年、僕達が挑むのはここです。乗馬人口の倍増、さらにその先へ。もちろん短期間ではできませんがそこに挑んでいきます。今のままだとここは茨の道だと分かっています。その証拠に現状の乗馬業界には、これ以上乗馬人口を増やす必要のあるプレーヤーはいません。新規顧客の発掘は大変です。今のお客様を保っていくことのほうが楽です。

 でもその先に発展はありません。これは業界としてだけではなくビジネスとしても、です。もっともっと多くの人が馬に乗りたがっている、馬に出会いたがっているのに。今の僕達は挑戦を恐れ扉を狭くするしかなくなっているんです。

 だから僕達は挑戦します。でも無謀だとは思いません。十分に勝機はあります。馬の魅力、乗馬の魅力はハンパないんで。誰もがこの魅力にハマったら抜け出せなくなるんで。そして僕達にはその魅力をより多くの人が払うことのできる価格で提供する準備があります。

 この具体策は2023年、少しずつ発表しつつ、夏以降に形にしていけると思います。今はこの文章一つから感じ取って楽しみにしていてください。

 「誰もが気軽に馬に乗れる新時代に」

 続報をお楽しみに!


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