つまみぐい 20221115
「やりたきゃやりゃあいいんじゃねえの」
スマホゲームをしていたら、地元で大学生をしている幼馴染兼彼氏とのLINEが画面に現れたものだから、ついぶん投げてしまった。
「相談するんじゃなかった!!」
私が現在暮らしているところと地元とは、新幹線を使っても4時間かかる距離である。高校時代は、4時間なんて楽勝、すぐに帰ってこられると思っていた。でも、新幹線はいつだってお金がないと嘆いている大学生には少々お高く、しょっちゅう会うことはできないということにやっと気づいた一年目の夏である。
部屋の隅には、引越しの段ボール(めんどくさくて片づけていない)と、実家から送られてきた仕送りの段ボールと、3年を共にしたのに大学生になってから一度も明けていない楽器のケースがある。
楽器を吹くか、吹かないか。 どのサークルに入ろうか、外の団体に入るのはありだろうか。そんなことを考えていたら、新歓の時期を逃してしまった。考えてもどれが最善なのかよくわからないと、ダメもとで一番長く近くで演奏していた幼馴染兼彼氏に泣きついたけど、案の定まともな返事は返ってこなかった。
高校までは、「吹奏楽部」と書かれた部屋に行けばすべてどうにかなったのだ。どうして、吹奏楽団だの管弦楽団だの室内楽サークルだの無駄に充実しているんだ。どうして地域の楽団もこんなにたくさんあるんだ。
「わかるはずないだろ!!!」
部屋で頭を抱えてもうどれぐらいになるだろうか。
授業に行けば友達ができるよ、と姉がニコニコしていたのは、彼女が社交的な性格だったからだし、普通に生きればどうにかなるわよ、と言っていた母親は、なんだかんだたくましかったし。
初っ端でしくじってしまった私は、今日も新しい団体に足を踏み入れることができずに部屋でうずくまるのだった。
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