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「悩み事があるんだったら、校庭走ってこいよ」

体育の教師は当時中学生の僕に言い放った。
「なんて脳筋な言葉なんだ!!」と、当時は思っていた。

べ、べつにおれ悩みなんかねーし。

…んまあ?
…あるとしたら?
あ、あれのことだけど。
…たださぁ。



好きな女の子への叶わぬ恋心が走っただけで実るのかよ!
そんなわけないだろ?


走ったらイケメンになれるのか!?
走ったら明日からその子と登下校一緒に帰れるのか!?
そんなわけないだろ!?


毎日バスケ部で遅くまで練習していたけど、僕は結局女子バスケ部のあの子のことを部活中でも目で追って、モヤモヤモヤモヤしちゃってる。

アホみたいに走れば走るほど、脳内にはあの子ばかりが浮かぶ。
で、彼女は僕のことなんて見向きもしないじゃないか。


なんて、モテない中学生の僕は思ってた。
先生のことを脳みそ筋肉って馬鹿にして、何もしていなかった。

僕は、その時悩んだら体を動かすってことをすごく馬鹿にしていたのかもしれない。
でも当時僕がやっていなかったのは一歩踏み出す「行動」だ。

自分自身を見ないふりしていたマセガキだったのかもしれない。


今。
漫画家になって、頭の中には進まないネームのことや、自信を失った自分への負の感情がうごめく日がある。

机に向かうが、一向に筆が進まない!


大人になってからの方が悩むんだってこと、子供の自分に教えときたかったなぁ。
うーーん。

…ちょっと走ってくるか。
僕は近所のジムのランニングマシンでアホみたいなスピードで全力疾走することにした。

ふと、体育教師の言葉を思い出してしまったから。

中学の時、学校のまわりを全力で走っても息切れしなかった僕の体力はどこに消えてしまったんだろう。
後輩と一緒に走ると、「先輩速すぎますよ」と言われるくらいのスピードを出していた僕の脚力はどこへ消えたんだろう。
あれ、中学のとき好きだったあの子への気持ちも綺麗に消えちゃってんじゃん。ちぇっ、なんだよ。
消えてもいいやつと消えちゃいけないやつ、分けさせてくれよ。なんでも消えるなよ。

なんて考えてるうちに、
一キロも走れず心臓のポンプが激しく鼓動して、「ギブギブ」と言っている気がしたので、すぐに歩いた。

一度深呼吸をして目を瞑ったら、また脳筋体育教師の言葉が浮かんだ。

「悩み事があるんだったら、校庭走ってこいよ」


……うわーー、走ってんじゃん。
でも、別に悩みは消えてないぞ先生。
むしろ、悩みがありありと浮かんで、いろいろ思い出して、増えたような気さえする。

昔あった消えたくない体力も恋心も、もろとも全部消えてんだなぁ。

そりゃそうだ。できなくて当然。
僕はそんなに大したやつではない。
天才なんかではない。
また少しずつ走って、体力をつけて、
今日一キロ走れなかったなら、
明日また走って、
明後日も走って、
一キロ先、二キロ先に
いけるようになるしかない。

そんなもんなのかもしれない。とは、思った。
できると思っていたけど、できなくなる。
だったら、できないと思ってても、いつかできるかもしれない。(ザ☆脳筋)


……おいおい脳筋体育教師、これが言いたかったのか?

…いーーーや、絶対ちがう。絶対もっと単純だ。笑

でも、どちらにしろ、
14歳じゃ、こんなの全然気づけなかったなあ。

だから、「校庭走ってこい」ってアドバイスで正解だと思うよ先生。



ちなみに、その女の子は高校に上がってから毎朝駅で、上下線の電車ですれ違ってたんだよなぁ。
それが上下線のふたりっていうマンガになったとかならなかったとか。

よっしゃ、マンガ描くぞ!


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