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人口問題を考える


『人口と日本経済』吉川洋 著
中公新書 (2016.08.25.)

【はじめに】

人口減少が進み、働き手が減っていく。
財政赤字は、拡大の一途をたどり、地方は消滅の危機にあります。
「人口減少」は確かに重大な問題なのですが「人口の原理」について、考えてみることにします。

【日本の人口】

僕たちは令和時代の日本をどうつくるか

日本の人口は、2008年の一億二千八百万人をピークに人口減少時代に入リました。
過去にも人口減少期は、ありましたが、人口が激減した時代は、ありませんでした。

【日本の人口の変化の特徴】

明治の初めまでは、江戸時代の名残りで、金沢などが人口5位でした。
つまり、江戸時代の藩を中心にした城下町に人口が集中していました。
その後、産業構造が変化し、工業化の進んだ地帯へ人口が移動するようになりました。
つまり、第一次産業から、第二次産業へ人口移動したのです。
この事が、農漁村から人口が減ることになるのです。

【マルサスの人口論の法則】

マルサスは、人口を論ずるにあたり、二つの大原則「自然の法則」から始めた。
法則1
人が生きていくためには食料が必要不可欠である。
法則2
男女の性欲は、今日(こんにち)同様にいつまでも大きく変わることは無い。
交易条件
人口が増えるためには、食料の総供給量が増えなければならない。
食料が増えるためには何が必要か。
生産の担い手が必要になる。

18世紀にマルサスやアダム・スミスが前提としていたのは
人は豊かになれば子どもを沢山つくる。

【マルサスの人口論(要旨)】

マルサスは、人口を研究することで「幾何級数的に増加する人口と算術級数的に増加する食糧の差により人口過剰と貧困が発生するのは必然であり、社会制度の改良では回避できない」とする「マルサスの人口論」を提唱しました。
しかし、「マルサスの人口論」は食糧生産における技術革新(イノベーション)を考慮に入れない理論であったため、その後の実際の世界の人口動態は、彼の予想とは全く別の動きを見せることになります。
1906年に化学反応でアンモニアを生産するハーバー・ボッシュ法が開発されたことにより、化学肥料が安定的に供給されることになり、単位面積当たりの穀物の収穫量が飛躍的に増大し、実際には人口増加を十分に支えることができたのです。

【産業革命と人口】

産業革命により工業がさかんになると、農村から都市へと多くの人が移動するようになります。
都市に人口が集中すると、周囲の農村部では人口が減少します。 
こうして 地方と都市の人口バランスが崩れていったのです。  
このため、法則1の人が生きていくためには食料が必要不可欠であるが、食料生産の担い手が不足する。
この他、産業革命により、労働者と資本家の対立が発生しました。

【人口が増えた要因】

人口爆発の要因には、技術の革新によって作物の生産能力が上がったことや、医療の発達により、死亡率が低下したこと、発展途上国の出生率が高いことが挙げられます。

この人口動態の考えを経営学に適用したのが、「現代経営学」あるいは「マネジメント」 の発明者と呼ばれるP.F.ドラッカー(1909年〜2005年)です。

【P.F.ドラッカーと人口動態】

ドラッカーは、『イノベーションと起業家精神』の中で、「人口、年齢、雇用、教育、所得など人口構造にかかわる変化ほど明白なものはない。見誤りようがない。予測が容易である。リードタイムまで明らかであるとして、企業人、経済学者、政治家は、意思決定を行う際には、まず人口構造を分析すべきだと考えました。
そして、人口構造の変化に備える時間は十分にあり、その変化を捉えることこそがビジネスチャンスであるにもかかわらず、多くの企業人が人口構造の変化をチャンスにするどころか、事実としてさえ受け入れないと指摘します。
逆に、人口構造の変化を現実として受け入れる者、その新しい現実を自ら進んで受け入れる者は、長期にわたってビジネスの果実を手にすることができるとして、次のように語っています。
「人口構造の変化が実りあるイノベーションの機会となるのは、既存の企業や社会的機関の多くが、それを無視するからである。人口構造の変化は起こらないもの、あるいは急速には起こらないものとの仮定にしがみついているからである。」
このように、人口動態に基づいて未来を予測したドラッカーは、「未来学者(フューチャリスト)」と呼ばれることがあります。
しかし、自らは人間によって作られた環境に関心を持つ「社会生態学者」「観察者」「文筆家」を名乗りました。つまり、自分は未来の預言者ではなく現実の観察者であり、過去と現在を見比べて、既に起きつつあることの予兆を捉えて解説しているのだと考えたのです。

【資料引用】

【経済成長とイノベーション】

経済成長を決めるのは、人口ではありません。
人口が減ると云う事は、働きの担い手が減ると云う事。人口減少が続く社会では、設備投資をしなくなる。(縮小再生産)
経済成長をもたらす大きな要因は、広い意味での「技術進歩」つまり「イノベーション」だと思います。
「イノベーション」も、ハードなイノベーションではなく、それ以上の経営ノウハウなどの「ソフトな技術革新」が重要かと思います。

【高度成長のメカニズム】

p.81 図21-8

【インダストリー4.0.】

【日経「核心」】2024.08.12.

「核心」Opinion
日本経済研究センター 小峰隆夫研究顧問
人口減少が悪いと考えるのは間違い。
スマートシュリンク(賢い縮小)
スマートシュリンクとは、人口減少や少子高齢社会の進展に伴う都市や地域の縮退(シュリンク)を賢く行い、住民の生活水準を維持・向上させ、公共サービスを効率化していく考え方です。
コンパクトな都市の構築が必要不可欠となっており、郊外の緑の復活や豊かな自然と静かな環境の整備などにより、ゆったりとした居住空間が生まれる効果が期待できます。
また、インフラ維持費用の削減やQOLの向上にもつながると考えられています。

【日経「核心」】2024.08.12.

「核心」Opinion
人口問題を考える
解説フェロー 原田亮介

【Note】
僕たちは令和時代の日本をどうつくるか

2024.08.00.