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宇沢弘文『社会的共通資本』


【はじめに】

社会的共通資本とは、経済学者の宇沢弘文氏(1928-2014年)が提唱した概念で、すべての人びとが、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力のある社会の安定的な維持を可能にする自然環境と社会的装置のことで、これを社会共通の財産とする考え方です。

『宇沢弘文』佐々木実 著
講談社現代新書 (2022.10.20.)
『社会的共通資本』宇沢弘文 著
岩波新書 (2000.11.20.)

【『社会的共通資本』とは】

自然環境(大気・水・森林・河川・湖沼・海洋・沿岸湿地帯・土壌 など)
社会的インフラストラクチャー(道路・交通機関・上下水道・電力・ガスなど)
制度資本(教育・医療・金融・司法・行政など)
以上の3つの範疇にわけてあります。
序章 p.5より

【制度資本について】
一人一人の市民が、人間的尊厳を保ち、市民的自由を最大限享受できるような社会を安定的に維持するために必要不可欠なもの。
市場的な基準や官僚的な基準により支配や管理されては、ならないもの。
p.6

【資本主義か社会主義か】

二十世紀の世紀末について pp.12〜17.

資本主義か社会主義か、と云う問題意識を超えて、人々が理想とする経済体制は何か?と云う問題提供が、ローマ法王によってなされた。p.17

中央集権的な計画経済は、国家権力の肥大化が著しい。
市場経済の富の分配の不平等化、不公正化の趨勢。pp.18〜19.

【アダム•スミス】
民主的なプロセスを通じて、経済的・政治的条件が展開される中から最適な経済制度が生み出される。pp.20〜22.

【資本主義と市場経済】
資本主義の制度的特徴
全ての財及びサービスの生産と消費が、私的利益の追求を目的として行なわれる。
市場を通じて交換(売買)される。
最終目標は、自らの利潤が最大になるように。
pp.24〜25.

【ケインズ経済学】
一般理論
完全雇用をもたらす自動的なメカニズムは存在しない。非自発的失業が発生するのが一般的。p.32

【世界の資本主義】
1960年代半ば頃から不安定になる
アメリカがベトナム戦争の泥沼に落ち込む
インフレ、失業、国際収支の悪化
先進国と発展途上国の経済格差が益々拡大し、社会主義諸国との緊張も増していった。
1970年代
1973年11月 石油ショック
新保守主義 民間活力が有効に働く制度改革
pp.40〜43.

【社会的資本主義の考え方】
古典派経済学
ケインズ経済学
新古典派経済学
新保守主義

このような歴史の捻転を是正し、より人間的な、より住みやすい社会をつくるためにどうしたらいいか?経済学の原点に返って考える。

第1章 社会的共通資本の考え方より
pp.11〜43.
『社会的共通資本』岩波新書

【読了】『宇沢弘文』

【宇沢弘文 孫たちに出した「難題」】

占部まり 
文藝春秋digital 100周年記念企画「100年の100人」

2023.11.17.
第1章 社会的共通資本の考え方 読了しました。
その他の章(各論)は、今後『社会的共通資本の各論を読む』と題し、書く予定です。