なぜ僕はポイを投げるのか

 ほりと申します。JJF2023が終わったということで一つの区切りとして自分のやってきたポイジャグリング(略称:トスポイ)についていろいろ話していこうと思います。色々書いてたら長くなってしまったので読みたいところだけ読むのをオススメします。


ポイを始めた経緯について

 本編に入るまえに元々クラブジャグラーだった自分がポイを始めた経緯について軽く触れておこうと思います。
 まずは、自分がポイを始めるきっかけとなった2本の動画を紹介します。

 1本目はやまこうねさんの「tailpoi routine 2013/11/23」です。

 大学1年生の時に先輩から勧められて見たのですが、その時のことを鮮明に覚えているほどには当時の僕には印象的でした。ポイってこんなにキレイで面白いことができるのかと、これを見る前と後で180度ポイに関する価値観が変わりました。一番最初にポイに興味を持ち始めたのはここからだったような気がしています。やまこうねさんの他の動画でいうとJJOSとかIJAの動画もめちゃくちゃいいのでぜひ見てください。

 2本目はArminの「A Day at the Museum」です。

 この動画は僕のバイブルです。JJF2014の直前にこの動画が公開され、これを見て一目惚れしてポイを2セット即買いしました。飛んでいるポイの軌道の美しさや、やっている内容の面白さ全てがどストライクでしたね。僕がwall中心なのもこれが所以で、これに憧れて今もポイを投げていると言っても過言じゃないです。
 
 この2本の動画をきっかけに2014年の10月か11月くらいからポイを始めました。(というものの最初から3ポイカスケードしかやってなかったけど)実際はじめて見ると訳分からないくらい難しくて、3ポイカスケード100キャッチとか3ヶ月くらいかかったんじゃないかなと記憶してます。
 学生時代は部内の発表会と対外的にはJPS2015に出させていただいたことがあったものの数ヶ月に1回触る程度で、メインはずっとクラブでした。実際にクラブからポイに完全転向したのは社会人になってから(2017.5~)です。一番大きな理由は腕を怪我してクラブを投げられなくなったことですが、それ以外にもその段階でポイの方が自分には合ってそうだなという直感があったので、それを信じてポイに転向しました。

1 JJFCSについて

① JJF2022

 まずはJJF2022について話していこうと思います。ポイに転向してからの一番大きな目標として、ポイジャグリングでJJFチャンピオンシップ(以下、CS)に出ることを目指して取り組んでいました。JJF2020を1つの目標として定めていたのですが、コロナでオフラインでの開催がなくなり「CSの舞台に立つこと」が一番の目的であった自分にとって、目指すべきものがなくなったことでけっこうモチベとしては落ちていました。
 そんな中でjjf2021の直前に友人である上田に「僕と同じくらいトスポイ上手い人いたら面白いチーム組めてCS出られると思うんだよね」と冗談で言ったところ、「来年俺やるから目指そうよ!」というまさかの返事がきたことからチームとして1年間CSを目指して取り組むことが決まりました。

 上田のJJF2021CSが終わって、チームが本格稼働してからはチームルーチンの構想や技を僕が考え、それに最短で行くために必要なソロ技を上田に練習してもらうという形で練習を始めました。僕と上田が主催をしているDice公演を2022年の4月に行うことがすでに決定していたので、そこで演技することを最初の目標と定め、以下のスケジュールで進めることを決めました。

<構想>
10月~12月 ペア技を中心に練習
1月~2月 Dice用ルーチン作成
3月~4月 Dice用ルーチン練習
4月24日 本番
5月~7月 JJF用にアップデート、ルーチン撮影
<実際>
10月~2月 ペア技の練習のみ
3月 各々の私用のため練習できず
4月 Dice用ルーチン練習(5回か6回しかなかった)
4月24日 本番
5月~6月 Diceルーチンから微調整、ルーチン撮影

 想定していたよりもペア技の習得が難航し、ルーチン練習ができる下地が出来たのが4月に入ってからというありさま。クラブだとあんなに簡単な6個の普通のパッシングでさえ、ポイになると難易度が5倍どころじゃなく難しくかなり絶望しました。なんやかんやの突貫工事でDiceまでに間に合わせることができ、その後は当初の予定通りのスケジュールでJJFの撮影に挑むことになりました。(自分の確認不足で曲が要件満たしていなかった疑惑が発生し、曲変更を余儀なくされたのを除いては・・・)

 6月までに互いに納得のいく出来のものを撮影することができ、完成したものがこちらです。当初から思い描いていたものが出来たと今でも思っています。

 ここまでチームの話のみを書いてきましたが、実はソロでも出していました。個人を出すことに決めたのはDiceが終わった後とかなり後半のことになります。チームの練習と並行して自分のスキル強化のためのルーチンを頭の中に描いてちょこちょこ練習はしていました。(というのは表向きで、実際はDiceにチームが絶対に間に合わないと思ってソロ演技を用意しなくちゃと仮組みしていたものというのが真相です。)
 結果的にはDiceはチームで出ることになり、このルーチンは使うことがなくなりました。実現難易度的にも高めに設定していたため「いつか出来たら・・・」という状態で放置していましたが、Diceが終わった後の練習で試しに通してみたところいきなりいい出来で通せてしまった。これは行けるんじゃね?ということでルーチン練を再開し、せっかくならソロも出そうということで地獄のチーム・ソロ両方CSに出すことが決まりました。頭おかしいですね。

 5月・6月は基本チームを練習・撮影し、上田と練習できない日のみソロの練習みたいなスケジュールで、チームを撮り終えた7月から本格的にソロの撮影を始めました。その動画がこちらです。

 「ポイの演技としてトスポイという要素をどう組み込むか」ということを課題に取り組んだのがこのルーチンです。特に3ポイでは技の火力も担保しつつ、極力基底技の時間を短くして連続性を持たせることを意識して組みました。やってみると各パートがまあ長い。wallはちょっとでもズレると次の技に入るのが難しくなるので曲に間に合わせるのがめちゃくちゃ大変で、ドロップ数よりもその部分が撮影中しんどかったという思い出です。

 結果は2つとも落選という結果になってしまいましたが、個人としては両ルーチンともそれぞれのルーチンで目指していた形にはなったかなということで満足しています。

② JJF2023チーム

 JJF2022を終えて、そこで終えるつもりでしたが、互いにあまりにも悔しすぎてもう1年チームとしての契約延長が決定。
 まずは、昨年の振り返りということで、2022の落選理由を審査員コメントをもとに以下のように分析しました。
①1曲目は「対になるような動きのみで絡みは無し」にして、2曲目にペアを固めるという構想が、対CSチーム部門として考えた時にチーム感の低下につながり明らかな戦略ミス。チーム技の時間も短かった。
シンクロが揃っていないため、完成度が低く見える。

 1つめの課題については、新たに作るルーチンでは「ほぼ全編ペア技、ソロ技だとしても出入りでパッシングする」ことを徹底して作ることにしました。さらに2022のルーチンではトリ技にしていたような技たちを基底技とし、そこから派生技を作ることでペア技の厚みを増すことも目指しました。 
 特に2人での5本wallカスケードやスイングパスのピルエットは数ヶ月かけて安定させることを目指して再始動直後から練習に取り組み始めました。

 2つめの課題についてですが、正直これが一番きつかったです。というのも僕と上田との間で、曲の取り方やポイの諸動作に関する考え方が違う。(よくこれでチーム出来るよな)
 どちらかに合わせるとどちらかが崩れるの繰り返し。ルーチン作りはもちろん、技練習においてもこの影響は大きく出ていて、なかなか思うような進捗が出ませんでした。
 そんな中で、進捗確認兼人前経験を積む目的で出場した九州ジャグリング大会。
 上記戦略をもとに新しいルーチンを組んで出た結果、大崩壊。(ですよね。)曲の早さも相まってズルズル失敗を引きずりまくり、結果は2位だったものの「何とか2位に滑り込んだ」が正直な感想。この結果、方針の見直しを強いられることになりました。なお、すでに3月であり、練習時間の限りがあるチームとしてはあまりにも残された時間が少ない。この時のチームの空気感はめちゃくちゃピリついてた気がします。
 見直しの結果、「一番の基底技である2人でのwallパスのbpmに曲を合わせるしかない」というところに着地。これにより合わせるタイミングを明確化し、「相手ではなく曲にそれぞれが合わせればいい」ことになりシンクロ問題も強引に解決させました。
 2人wallパスのbpmが100であり、そのbpmで探していたところ今回の曲に決定。過去に上田が使っていたこともあり、曲になじみが深いことは時間が迫っている中では最良の選択だったと思います。

 そんなこんなで完成したルーチンがこちらです。ペア技の難易度はこれ以上思いつかないレベルで上げました。要所に分かりやすい技を配置しつつ、ポイらしいスイングを絡めた技も組み込めたと思っています。当初想定していた火力技よりもさらに技を足し、ハーフシャワーパスや6マイクスメスパスを追加しました。これらは僕がやりたくてねじ込んだロマン技です。ポイパッシングの王道としてはこれ以上ないかつ、これで落ちたら仕方が無いと言い切れるルーチンに出来たので悔いはないですね。
 唯一あるとしたら、bpmに合わせるという選択をした都合上、抑揚のある曲を見つけられなかったことです。ポイパッシングのテンポはめちゃくちゃ遅いので、それに合わせようとすると自然と曲も遅くなり抑揚のある曲が少なくなります。CSに出るほどインパクトのある演技のためにはあと一押しをしてくれる曲の強さが足りなかったかなぁとは思います。

 最後に、チーム撮影中にあった大きなハプニングを紹介します。
①GWに僕がコロナにかかったこと
 もともと互いにソロを控えていた関係上、GWに撮影仕上げるプランで予定を組んでいたため、GWに全く撮影が出来ず取っていた体育館もパーに。撮影も予定よりも2,3週間多く要してしまいました。
②1ドロ動画の撮影ミス
 ペア撮影初日でどうせ出ないだろうと油断してカメラの容量を削除せずに行ってしまった結果、1ドロ回が残り30秒足らず撮影出来ず。正直予選提出動画と遜色ない出来だったこともあり、メンタル的にあまりにも地獄でした。
 これらの遅れが結果として自分を苦しめることになるとはその時気づいていない。。。

③ JJF2023ソロ

 ソロについては落選直後は昨年同様、チーム主軸でスキルアップのための練習は継続するくらいのつもりでしたが、夏音ルーチンでは使わなかった要素(4ポイ、ノービート、サイド系統etc)を上手く使えばもう少しやれるんじゃないかという気持ちが徐々に募っていきました。なので、「今年でラストにするからその分全力で」と決め、ソロも120%つぎ込んで1年間挑むことに決めました。
 正直1年でCS通過ラインまで行くためには時間が足りないなという気持ちはありつつ、やり切れれば1年でギリギリ間に合うラインを設定して、やれることはすべてやるの気持ちで挑戦を始めました。

<強化ポイントと課題>
①4ポイ開拓
②フラッシュ以上の5ポイ
③3ポイのトリ技及び明確な火力技
④ハイトス以外の3ポイ要素の組み込み方、つなぎ方のバリエーション

 1年で達成するには強化ポイントがあまりにも多いというか時間のかかるものが多い。課題達成に特に時間がかかる順に取り組んでいくことに決め、10月~12月はひたすらに①と②に取り組んでいました。
 特に①の「4ポイ開拓」に関しては、技をつなげることが困難すぎて単発技で使うことしかできていない状態でした。CSを通るということを考えた時に、3ポイで連続性を意識して構成しているのにも関わらず、4ポイで単発となると全体を見たときに4ポイが浮いてしまうのが明らかでした。そのため、繋げられる技は何か、技数を稼ぐための方法はあるかといったことも含め検討していきました。
 その中で、「sideとwallそれぞれで1パート作ること」「普通のスタートはしない」という方針を定め、出来る技・安定可能な技を選別していきました。最終的にはルーチンを通すところまで持って行きましたが、最後まで苦しかったですね・・・

 ②の「フラッシュ以上の5ポイ」に関してはずっと課題にしていたところで、7キャッチ少なくとも6は投げるという意識で人前でやる機会があれば必ずフラッシュ以上を試したいという気持ちで進めていました。期間の前半戦は思うように進められていたのですが、後述するmoyoだったりいざルーチン練習が始まると投げ込み量が減ってしまったこともあり、5月~7月期間が特にフラッシュ以上になると安定しなくなってしまいました。完全に言い訳ですが、練習時間の限られている社会人かつ腕の故障を抱えている身ではナンバーズ強化は毎日継続みたいな練習が取れずしんどいなと思い知らされますね。。。

 ③の「3ポイのトリ技及び明確な火力技」に関してですが、それまで僕はトリ技を3upピルエットに頼ってきていました。ですが、2022の審査員コメントからも「単なる3upピルエットでは物足りなさを感じる」という指摘があり、CSを目指すならばそれ以上の回答を用意する必要がありました。実際、3upピルエットなら確実に決まるだろうという信頼の下、甘えで配置してしまっていた部分があり、さすがに見透かされちゃうなと思っていた箇所でした。
 それに変わる候補の要素として、求めたものが「単発で派手な見た目のピルエット技」「流れに組み込んでも浮かない」「最大サイトスワップは6以下」という点でした。
 7以上出す技もいくつか候補にはあったのですが、高さの面で不安があったため(おそらく入るが本番天井にチキってミスるリスクが高いため)却下。1upスイング系はトリ技としての見た目に劣る。
 という流れで行き着いたのが6411のバックパスでした。ピルエット要素を含むかつ、スイング要素も入れられるということでこの技を安定させにいくことにしました。
 同時にこの技のみでは勝負するのにちょっと足りないとも思っていたので、ピルエット関係の技を畳みかけたラストに配置するシークエンスを組もうと考えていました。1upスイング系の技を強化したり繋げて入れるようにすることでさらに誰が見ても分かりやすい火力に繋げようと考えていました。

 ④の「ハイトス以外の3ポイ要素の組み込み方、つなぎ方のバリエーション」については「sideの使い方」に重きを置いて検討していました。正直sideはこれまであまり開拓しておらず、どうすればいいか悩んでいたのですが、「そういえばマイクスメスやってないなぁ」と思い出して練習を再開したところいい感じに使えそうだと気づき、ルーチンを作るときのsideの軸に据えることにしました。
 あともう1つ軸に考えていたのがnobeatの使い方です。nobeatは得意分野とは言えないものの広く浅く履修していたので、nobeatで真っ向から勝負するのではなく、技と技の移行のためにnobeatを使い、nobeatでする技は誰が見ても分かりやすい技だけを選択することを考えていました。sideからupper nobeatへの移行やforwardからハーフシャワーに移行しoverturn windmillまで繋ぐ流れは特に上手く作れたと思っています。

<ルーチン制作>
 これらの課題に取り組みながら、年明けくらいからルーチン制作をはじめました。初期案は最終的なものとはかなり異なり、2022の夏音のような曲と雰囲気で構成していました。初期案を上田に見てもらうと「これだとCSは通らない、もっと火力を全面に押し出す形にした方がいい」と言われ組み直すことに。(なお、上記のペアルーチン組み直しと同時期。)
 この組み直しの時に覚悟を決めたのが、「トスジャグリングのポイとして真っ向勝負する」ことです。(この辺のことは次章で詳しく触れます。)
 どんなトスジャグリングが来ても火力で殴り合えるようなルーチンづくりを目指して、とりあえず手持ちの曲の中で一番強い曲だった「Pride」で2曲目を仮置きし、より適しているものがあれば変更するつもりで再構成を始めました。そんな中で1曲目に当てはまる曲を探していたところ「Narco」に出会い、聞いた直後から脳内ループが止まらなくなったので1曲目はこの曲でいこうと即決。Narcoもだいぶ強めの曲でこの後ろに行ける曲のは、Prideくらいしかないということでこの2曲構成になりました。
 1曲目ではループ技等を駆使してテンポ良く繋げていくことを意識して構成し、2曲目にはハイアップ全開で迫力ある構成になるように技を振り分けて行きました。
 ルーチンの構想が決まり、いざ取り組み始めたところで上田から「moyostageあるけど予選出すだけ出さない?」と言われ、(そんな余裕ねぇよ・・・)とは本心思いつつも、人前感覚を失っている課題もあったので、「じゃあ今日撮ってみてノードロ出たら出すよ」と言って撮影したところ、なんと30分でノードロが出ちゃった。その映像がこちらです。
(ついでにこの翌日コロナ発症したレベルで体調悪い状態でした。なぜ撮れたかは謎。)

 予選の結果、予選1位で通過。(なんでやねん)
予選出している身で何言っているんだっていう話だが、出なきゃいけなくなったのでmoyoに向けての練習開始。別の曲を探してルーチンを作るなんて余裕はなかったため、JJF用ルーチンのshortバージョンを作って臨むことに。3ポイの練習は実質的にこの5,6月で詰めた感じでした。このshortバージョンでさえ、最初はまともに通せなかったものの徐々に通るようになり、JJF用で試してもmoyo技たちは安定して通せていたのでこれならギリギリ間に合うかな・・・と思い始めた時期です。
 moyo本番はボロボロだったもののなんとか2位を取れ、初めての実績らしい実績も手に入り、ルーチンの課題も見つかりディアボロの人たちとのつながりもできたので行って良かったなと心から思ってます。(moyoでお世話になった方々本当にありがとうございました)

 moyoが終わってからはひたすらJJF用ルーチンの撮影。予選に出した映像がこちらです。

 やることはやったけど、間に合いませんでした。審査員コメントを見てもやはり多かったのは完成度部分の指摘でした。感覚的には「あと半月あれば撮りきれたな」という感じです。ちょうどチームの誤算で触れた遅れた期間と同じですね。
 まあでもギリギリを攻めなければいけなかったので、間に合わなかったことも含めて後悔はないです。むしろよくここまで出来たなと思っているくらいです。審査員コメントの中には「JJFらしい演技」というコメントもあり、やってきた方針は間違ってなかったなと感じられたので良かったなと思ってます。このルーチンは自信をもって僕の集大成と言えるルーチンに仕上がったと思っているので、近いうちにどこかで供養出来ればと思っています。その際はぜひお楽しみに。

(追記)
(どうしてチームと個人両方で命削ってまで目指したかというと、今年Bowがゲストとして来ることが早々に分かっていたからというのもあります。だからこそ日本人ポイジャグラーとして何としてもCSに出たかった。ポイジャグリングを日本でももっと広めるためにも今年しかなかった。「どうしてもBowと一緒の舞台に立ちたい」この一心だけで何とか気力を保っていたのかもしれません。届かなかったけどその結晶だけでも感じてもらえていたら嬉しいな。)

(追記2)
 CS本選を見て思ったこと。
 ノードロの完璧なものを出せば可能性はあったとは思いつつも、結局足りてなかった気がする。(チームは出れても3位確定だったから、選ばない選択は分かる、何というか枠が足りなかったという感想。)
 何が一番足りてなかっただろうと思った時に一番思ったのは「自分の技」と言えるものが足りなかったかなと思う。ここでいう「自分の技」とはその人オリジナルの技という訳ではなく「この人と言えばこれだよね」っていう技。新規性なんてCSを目指す人は全員が持っている中で、その中でも光る技や系統を全員が持っていた。
 僕だってこのルーチンに入っているほとんどは自分で開発した技(一部はArmin、Bowが作った技)しかないから自分の技と言えばそうかもしれないけど、その中で「これが自分の技だ」「この人と言えば」という主張できている技はCSに出ていた人に比べれば少なかった。その時点で自分の技にしきれていなかった。
 比べてCSに出ていた人たちは、突き抜けすぎて王道ですら「自分の技」としている人や(4ディアとか)、誰も見たことのない技をやっている人もいる。そしてちゃんと「自分の技」をしている時には歓声が来る見せ方や、それだけで終わらない良い意味の期待の裏切り。そういうところ全てを含めてその技・系統を自分のものにしていたと思う。
 こういうところが過去のCS出場者含め「上手いだけで終わらない凄み」(=よく表現される「人間ではない」)なんだと思うし、(CS目指す目指さないに関係なく)今後のジャグリング人生で突き詰めていくところなのかなと。

2 ポイジャグリングについて

① ポイジャグリング(特にwall)について

 さて、JJFについての話が終わったところで「ポイジャグリング」というジャンル、その中でも主に自分の専門のwall面について話していこうと思います。

ポイジャグリングはその名の通り、元来スイングで使う用途だったポイを投げて扱うジャンルなのですが、ポイがボールと紐で構成されている軟体の道具ということもあり、そもそも制御すること自体とても難しいです。さらにクラブ等と違って常に回すもしくはストールすることを求められ、回転面の制限もあり何をしようにも制約が強いジャンルになります。

wall面の長所とすると、
「ゆったりとした見た目が他の道具にはない派手さ・不思議さがある。」
「スイングやロールを組み合わせた技と相性がいい」
「wall面の投げがクラブに比べてやりやすい」
「投げ方の種類が豊富」
等があげられます。

が、逆をいうと他はすべて短所です。
「滞空時間が長く間延びしやすい、そのせいで技密度が出ない
「常に回すかストールを求められるため、少しのブレで崩れやすい
「取る位置がシビア、紐をつかんでしまうと見た目がダサい」
「面や軌道のブレがすぐに伝わってしまう」
「片手に複数本持つとすぐにポイ同士が絡まる」
「高さが出すぎてしまうので上と下で事象の乖離が起きやすい」
「上手くなると軌道が安定することで実際の難易度より簡単に見えやすい
・・・
この辺はほんの一例にすぎませんが、大会を目指したことある人ならもうお気づきでしょう。wallは大会というシステムにアンマッチな修羅の道です。そもそも基底技が遅すぎて技数が多く入れられないのに技密度も出せないから得点を稼ぎづらく、なおかつ難易度以上に簡単に見えやすい。正直、大会における道具パワーはめちゃくちゃ弱いと思います。
 その中でも一番の辛い点は「3ビート等で使われる回転面(same)とwall面のトスの回転面が異なる(opposite)」ことです。
このため、wall面のトスをしながらスイングをしたいと思ったら、その前後で回転面を変更するための予備動作を必ず挟まないといけないため、スイングとwall面のトスは相性が良くないです。
 ルーチンを作る場合はいかにこれらの欠点をごまかしつつ、長所を生かすかということが求められます。技を1つ入れるためにその前後で回転面を調整するための予備動作を考えつつ、間延びしないようにギリギリまで技密度を詰める、かつ安定感を求める。本当に「なにいってんだこいつ」状態です。

 それでもなぜwall面にこだわるかというと、クラブでは絶対に出せない柔らかさだったり、独特な軌道による不思議さや迫力がやっていて病みつきになるんですよね。間違いなく他の道具では出せない魅力を持っている道具だと思っています。
 通常のトスジャグリングはside面が基本なので、wall面に特化して何かできる道具って他にない(リングやクラブのアウターもあくまで要素)っていうだけでも貴重ですよね。同じ理由で自分の見えているものと観客に見えている景色の相違が少ないのもいいですよね。
 また、ちょっと意味分からないことを言うのですが、「スイングとwall面のトスは相性悪い」けど「ポイ自体はスイング技がやりやすく相性もいい」です。つまり、技の形にさえ到達できればスイング技はどの道具よりもポイが一番やりやすいと思っています。この考えはとても大きくて、僕がポイをやっている1つの理由になっていると思います。

②ポイジャグリングについての個人的解釈

 個人的にポイジャグリングの解釈が2通りあって、それが
①「トスジャグリングの文脈からくる、ポイを使ってスイング技を主体とするジャグリング」と
②「ポイの文脈から来る、スイング軌道にトスを組み合わせた技を主体とするジャグリング」です。

 そもそもどちらもは「スイングとトスジャグリングを組み合わせたい」という考え方から生まれていると思っています。その考えにおける「トスジャグリング側からアプローチしたものがクラブスイング」としてもともと存在していました。その中で、スイング側からつまりポイを使ってスイングとトスジャグリングを組み合わせようとアプローチしたのがポイジャグリングの始まりだと思ってます。
 ポイジャグリングの祖であるArmin系譜のwall主体のポイジャグリングはどちらかというと①「ポイを使ったスイング技を主体としたジャグリング」という傾向が強く、その後ChrisKellyやBowによって派生していたnobeat系統は②「スイング軌道にトスを組み合わせた技を主体とするジャグリング」が近いと思っています。
 もう少し極端に踏み込んでいうと、wall面は「トスジャグリング側からアプローチしたけれども、道具はスイング側のポイを選択したジャンル」とも言えるのかもしれません。
 なお、近年はジャンルの発展により、①と②の境が薄くなってきてはいます。まあ今後の潮流はさすがに②がメインになるのは間違いないでしょう。(少なくともBow全盛期のうちは)

(追記)
wall・sideをやっていた身としてnobeatというジャンルでchriskellyが出てきた時ってArmin派の自分にとってとても衝撃的だったんですよね。全然投げ方違うじゃん!実際やってみるとクラブとかのレイジーに似た感じだけどなんか違う。多分nobeatはレイジーから生まれたのではなく、スイング軌道で投げるための投げ方を考えた結果生まれたものなんじゃないかと思っています。クラブでもnobeat的な投げはもともとあったもののそのジャンルがポイでここまで発展したのはこういう経緯で生まれたからポイの文脈として成長しやすい土壌があったからなのかなと思います。
nobeat投げでこんなに色々とできるんだぞと広めたchriskellyはポイジャグリング史の中でめちゃくちゃ大きい存在だし、僕は尊敬しています。(某ショップとか最近の様子は…だけど)
あとは当然Bowも。正直chriskellyの投げってあんまりキレイじゃなくて正直nobeatが登場した当初の頃はマネする必要はないかなと思っていました(あくまで僕個人の感想です)。ですがBowが出てきた時、全部の技をクリーンにやるのが衝撃的すぎました。この系統キレイにするの実現可能なの!?と本当に信じられなかったです。Bowを見てからはポイジャグリングをやっている身として通らなければいけない道だなと思ってnobeatもやるようになりました。

③ポイを投げる理由 

 「ポイでトスをする理由は?」「なんでクラブじゃダメなの?」というような質問をこれまでによく受けていて、実際その答えを感覚的には持ってはいたものの、明確な答えが出ず、ずっと探し求めていました。ようやく自分なりの回答が言語化できるようになってきたので回答します。

 「スイング+トスジャグリング」を目指す上でポイが最適解だから

 正直ポイを投げることに対する技術や知識がジャンルとして成り立ち、投げにくいという欠点を克服した今、クラブとポイそれぞれの得意不得意はあるにせよスイング技のジャンルにおいては将来的にポイがクラブに負けることはないと思います。今でもBowがそれを体現しているとも言えるでしょう。
 僕はもともとクラブ時代からクラブスイングが好きで実際にやっていましたが、クラブの物体的固さとスイングを調和させることができず思うように動かせませんでした。ポイに転向してからはスイングの流れを意識して正しく動かさないとまともに投げられないポイの性質だったり、自分自身のもともとの相性の良さからポイの方が自由に動かせると感じるようになりました。圧倒的にクラブよりもポイの方がスイング技もやりやすいし、「スイング+ジャグリング」を目指すにあたっては間違いなくポイが自分にとって最適解でした。極端に言ってしまえば、「スイング技をやりたいからスイング道具であるポイを使っている」、これが理由です。
 ただし当然始めたばかりの頃はスイング技なんて出来ず、出来る技といってもクラブでも出来るサイトスワップとかボディスロー技がほとんどでした。当然です。
 
クラブですら難しいトスとスイングを組み合わせるという行為をそもそも投げるという行為自体が難しいポイで最初からできるわけがありません。色々な投げ方を試していく過程でスイングを入れることのできるパターンを見つけていき、色々なスイング技をすることができるようになっていきました。これに関しては後学者も同様だし、①と②どちらのポイジャグリングにおいても同様です。スイング技への入り方が開拓されている後学者の方が当然スイング技への道は近いですが、そこに挑戦するまで解像度を上げるための時間は誰でも必要です。なのでどうか、ポイジャグリングをやりたいという人が身近にいる場合は、最初から周りが「スイング技をやれ」とか「ポイらしい技をやれ」ということを求めるのではなく、ポイジャグリングへの解像度が上がるまで温かく見守ってもらえればと思います。

 あとは後付けの理由になりますが、「色んなことが出来て開拓余地が広い」っていう特徴もポイをしている理由になっていると感じています。純正スイングもできるし、トスジャグリングも出来るし、ロールやアイソレもある、ウィップやスイッチバックといった特有の動きもあれば、投げ方の種類も豊富。こんなに出来ることが豊富な種目はなかなか無いと思います。そのどれかを極めてもいいし、組み合わせを模索してもいい。開拓余地もまだまだ無限にあるので開拓好きの人にはたまらないと思います。

 (あと1つ勘違いされたくないことがあって、僕がこのジャンルを始めたのは「ポイの競技的なジャグリング化(難易度を求める)の系譜」ではなく、ただ純粋にこのジャンルの魅力に惹かれてクラブから転向しました。それだけこのジャンルに魅力がある・魅力を感じる人がいることだけは伝わってほしいなと切に思います。)

3 今後について

 JJF2023落選後、Twitterにて「CSへの挑戦を終える」旨の発言をしましたが、その真意について触れておきます。
 一番の理由は「体の限界」です。ポイに転向した理由である腕の怪我のほか、腰も痛めており体を気にせずにジャグリングをするのは不可能な状態です。怪我防止のために練習時には必ずテーピングをしたり、ケアも欠かさずすることでやっと続けられているような状態です。
 実際撮影期間真っ只中の7月にも腰痛を発症し、一番撮影したい時に休まざるを得ないということもありました。
 CSを目指す場合、僕のようなギリギリ通過できるかできないかの立場では1年間ちゃんと計画を練って走り続けてようやく届くかどうかの世界だと思っており、正直出れることならCSに出たい気持ちは変わりありませんが、今の状態で1年間走るのはもう厳しいです。何より怪我したら終わりという常に追い込まれた状態するジャグリングは想像よりもしんどいです。なので一旦ここでCSには区切りを付けて先に進みたいなというのがあの発言の真意です。
 もともと自分は生粋の競技ジャグラーというわけではなく、出たい「舞台」があればそこを目指す(それが大会なのであれば大会を目指す)というスタンスだったので、今後も出たいなと思う舞台があれば出ることもあるかとは思います。
 今の気持ちとしてはまずはゆっくり休んだ上で、やんわり出たいと思っているものが何個かあるので、それに向けてのんびりとやっていこうかなと思います。(まあどうしても出たい舞台がCSしか考えられなければ目指す可能性は0ではないけどね)

 長々書いてきましたが、今の気持ちとするとこんな感じです。色々なことを書きましたが、ポイジャグリングは本当に楽しいし、未来のあるジャンルだと思っています。
 今後もジャグリングは続けるので何かで関わることがありましたらその時はよろしくお願いします。

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