よるしばい

noteを書くようになって、何かを書こうと思った際に色々と思い出すことが増えた。
あれの事を書こうかなと思ったら、その事について思い出し、そしてそれに付随する事を思い出し、そのまま全く違う思い出に想いを馳せている事がままある。
もちろん完全に忘れてしまっている事も多くあるだろうが、思い出さないだけで残っている記憶みたいなものが多くあるんだと気付く。その中でも忘れてしまった方がいい事もあるのだけど。

そんな、忘れてないけど思い出さない記憶みたいなもので、人間の半分以上は形成されているんじゃないかと思う。

そんな事を思ったのは恐らく、現在稽古中の劇団水中ランナーの「つぎはぎ」と本番間近の3人がよるしばい「３‘sバーのブルームーン」の影響である。「つぎはぎ」は過去水中ランナーで上演した作品で、Nana Produceさんでも過去に上演させてもらった事もあり、思い出も多いからである。その「つぎはぎ」についてはまた書かせて頂くとして、今回は３人がよるしばいについて。

３人がよるしばいは藤井悠平と松本稽古と自分からなる３人のユニットである。３人と言っておきながらスタッフさんはほぼ毎回同じ方にお願いしていて、正直スタッフさんがいなければ成り立っていない。
3本の矢でも3本だけでは簡単に折れてしまう状態ではある。

発端は藤井と松本と舞台で共演した事に始まる。

その舞台は同年代の役者の旗揚げ公演で有難い事に自分も参加させてもらった。同年代が多く、芝居創りも、小道具やセットの制作もみんなでワイワイ言いながら作った記憶がある。
その同年代の演出家を最終稽古で、稽古場から飛び出していかせるほど怒らせたのも既に懐かしい。あれは恐らく、恐らくだけど半分ぐらい自分のせいだった気がする。

その舞台も無事に終え、時間も長く経過した時。
松本稽古から自分と藤井悠平が呼び出された。
場所は覚えてないが、何かやけにお洒落なカフェだった気がする。
お洒落過ぎて、自分と藤井はもちろん、呼び出した松本も戸惑っていたはずである。当時、安さを売りにしている居酒屋にしか目が無かった人間が、コーヒー1杯でビールが2杯飲めるぐらいのカフェに行って、注文に困った。
そして結局テンションが上がって、安居酒屋の3杯分ぐらいのお金でビール1杯を注文した気がする。

そこで松本が３人芝居を創りたいと、スーツやオフィスカジュアルに身を纏った方々に囲まれながら、古着を頑張って着ていた自分と藤井に持ち掛けた。

松本は企画書まで作ってきてくれて、ロングランで楽しい事がしたいと持ち掛けてくれた。
何か新しい事をしたいなぁと思っていたので、すぐに乗り気になった。
ただ去年ぐらい、その企画書を見返したら、面白いぐらいの熱量で書きなぐられていて、内容はあまり無くて笑った記憶がある。ただほんとに熱量だけだった。

その熱量のまま、松本は渋谷にあるバーと話をして劇場を決め、本が出来上がる前に宣伝写真を撮り、本番の日程が決まった。物凄い熱量である。
取り残されまいと楽しく巻き込まれていった。台本も案を貰いつつ、ポトポトと書いた。
と言っても事あるごとに、藤井とともにマイペースをかまし、松本をヤキモキさせた。
こんな人がプロデューサーや牽引していく人なんだなぁと思った。

そんな中で様々な人が協力してくれて、約６年前に上演が始まった。

飛び飛びながらコロナの影響が出るまで30回以上の公演を重ね、有難い事に満席の回も多くあった。様々な事情で、他の職業が忙しくなったりで役者の道を辞めて行ったり、疎遠になってしまう人も多くいる職業の中でこうして続けれる事は幸運以外の何物でもないのかもしれない。
単純に運も良かったと思う。

そして、また上演に向けて動いている。
去年コロナの影響で中止になってしまったので約2年半ぶりの上演。
仕事帰りにフラッと寄ってもらって、お酒を飲みながら演劇を見てもらう。
このコロナの状況の中ではとてもシビアなコンセプトを掲げながらも、またやろうかと言って、3人とスタッフさんが集まる。

稽古中、松本の振り付けに藤井とヒーヒー言いながら、セリフの多さに我ながら文句を言いながらも、6年間色んな事があったなぁ、それでもまた同じ作品をやるんだなぁと、きっと思い出さないだけで忘れてない記憶も沢山あるだろなぁと一瞬思ったら、セリフを忘れた。

作品にも記憶が希釈していく事を恐れる人物が出てくる。そして、自分を形成してくれた存在も。
そんな事を思っていると、また思い出が枝分かれしていく。
正しいか分からないけど、残っている記憶が。

3人がよるしばい
「3'sバーのブルームーン」
5月2日に絵空箱さんで上演します。
詳細を記載させて頂きます。
6年間の積み重ね・・・があるか分かりませんが、今出来る最大限を目指しまして。
ご興味ある方、何卒よろしくお願い致します！

3人がよるしばい
「3'sバーのブルームーン」
脚本　堀之内良太
出演　藤井悠平・松本稽古・堀之内良太
スケジュール
5月2日（月）
15時〜／18時30分〜
場所
絵空箱（江戸川橋駅）
チケット代
3,500円
（1ドリンク込み・テイクアウト可）
チケットご予約はこちらから。

3'sバーのブルームーン 予約フォーム

6年前ぐらいに何も決まっていない状態で撮影だけした、宣伝ビジュアルを添えまして。