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独白の台本

東京都のアートにエールを!に劇団水中ランナーで応募した。

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五月に上演予定だった劇団水中ランナー第十一回公演「花を灯す」をモチーフに自分が過去に書いた台本を当てはめて撮った。
映像作成は初で、色々な経験をさせてもらった。
劇団水中ランナーのメンバーが五人会ったのもかなり久々。
コロナウイルスへの想いは溢れんばかりあるが、今は我慢。
映像の中の写真は白濱さん。歌えて写真も素敵。すげーな。

さて、今回の台本。
過去に自分がとあるオーディションで、自由演技なるものがあって、独白をしてみようと思って書いたもの。それを花を灯すの四兄弟に当てはめた。
衝撃を受けた舞台があって、それの冒頭が独白から始まったので、憧れもあって自分なりに書いてみて、実行した。それがパソコンに残っていて今回の流れになった訳である。まぁ、オーディションでこれを覚えてただ独白するだけってのも当時は何か凄かったな。
そんな台本がこちら。

 ある男の独白

 野焼きをしようと思うんです。ええ、野焼きを。犬も連れて。あれですよ、畑一面を燃やすんです。濃くて、決して真っ白じゃない、濁った煙が上がるんです。畑って放置しておくと森林化が進むらしいんです。それを防いだり、害虫を焼き殺したり、あと灰が肥料になるらしいんです。まぁ、春になる準備です。だから、思うんです。犬を連れて野焼きをしようと。ええ、はい。終わったって言うんでしょうね。いつの間にか終わっていました。みんなはいつの間にか始まって、いつの間にか終わっていたみたいです。あっと言う間ですからね、暖かさなんてものは。あっと言う間なんですよ。すぐ、手が悴んで、耳たぶが痛くなって、頭の芯までツンってなるのは。まぁ、我慢するしかないんです。こんなの。一人じゃ出来ませんから。
 冬の終わりが近づくと、ばーちゃんの家から帰る車の窓から、見える景色の中に煙が何箇所も上がるんです。父親は助手席でタバコを吸いながら、窓を全開にします。そりゃあそうです。父はあの煙の匂いが好きでしたから。実家の匂いがするって。母親はそれを嫌がるんです。たまに喧嘩になりました。そうすると弟が泣くんです。ビービー泣くんです。そりゃあ、泣きますよ、末っ子ですから。早く帰りたいって。僕だって帰りたいですよ。安心できる場所に。姉は弟をあやしながら、窓を半分にするんです。これでみんな幸せ半分、我慢半分って。強がりなんですかね、空気を読んでるんですかね。分かりません。僕は長女になったことがないので。そんな姉と弟を見て両親は反省して喧嘩を辞めるんです。僕は泣くこともせず、両親の間を取り持つこともせず、ただただ黙って、拗ねてるんです。ずっと黙ってるんです。そんな自分が嫌でした。でも、泣いたり、無理して笑ったりしてたら、もっと嫌になってたと思うんです。よく分からないですよね。分からないんですよ、僕も。あと、ばーちゃんの家の近くには犬もいたんです。大きめの凶暴な犬で、僕達がその家の前を通ると、激しく吠えるんです。何かを主張するように。そして、全速力でこっちに駆けて来るんです。そりゃあ怖いですよ。少し大きくて凶暴そうなんですから。でも、長めの鎖に繋がれていて、僕達とは反対側の道路の所で止まるんです。長めの鎖に繋がれてますから。でも、ある日こっちに全速力で駆けてくる途中で鎖が切れたんです。そしたら、その犬はいつも止まるはずの所で止まらないことに、いつもより前進できることにびっくりして、キョトンって顔をしたんです。それから、吠えるのを辞め、くるりと回って自分の犬小屋に帰っていったんです。何となく犬の気持ちが分かるような気がして、そんな自分にも嫌悪感がありました。犬は全く悪くないんですけどね。そんな光景が大好きだったから始めたんですけどね。色んなとこ駆けずり回って、頑張れって、恥かいて、頑張れって、やりたいことなんだから頑張れって。日本人っておかしいんですよね?頑張れって。頑張れば何とかなるって。そんなはずないんですけどね。どうしようもないことで溢れているんですけどね。有名な人が言ってたんですよ。必ず出来ると信じろ、仲間を信用しろ、限界を超えろ、遅すぎることなんか無い、分かってますよ。信じてやってました……単に、俺馬鹿でした。でも、今よりずっとマシな馬鹿でした。だって今俺、計算しますから。最低です。妥協に溢れる馬鹿なんです。純粋な馬鹿と考える馬鹿。純粋な馬鹿にもう一回なりたいんです。まだ。だから野焼きをしようと思います。頑張れって言って、言われるように。全く同じじゃ無くても、昔みたいな馬鹿になれるように、野焼きをしようと思います、犬も連れて。

うん。なかなかちょっと恥ずかしい。これを話しているのを見せられた面接官はどう思ったのだろう・・・
やり切った感でオーディション会場を後にしたのは覚えている。

過去にこのノートにも書いた野焼きと犬の話がモチーフになっている。

これを書いた時、家業を継ぐということに凄く憧れみたいなものを感じていたのかもしれない。
父親は宮崎で自営業を営んでいて、家族を養うために経営者として奮闘してくれた。正直、いい面ばかりでは無かったのかもしれないが、自分にとっては助けてもらった面もかなり大きい。
当然、自分もある年齢までは自分が継ぐんだろなと思っていた。
父親もきっとそう思ってたと思う。好きにすればいいとは言ってくれてたけど。
でも、自分がこの世界に入って、東京が本拠地みたいになり、当時はアルバイトで少しばかりお金を稼ぐようになっていて、お正月等で帰った際、親父が自分に「良太、商売は楽しいか?」とお酒が入った時にポツリと聞かれたことがある。
そのポツリがずっと残っていた時期があった。

そんな事がずっと残っていて、これを書いたのかもしれないなと最近思った。

そんな父も今は、頑張れよ。好きなことすればいいっちゃがと笑って言う。
おかんもそうよって言って笑う。

過去の書きなぐった台本が呼び起こした記憶。



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